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最高神がギフトを与えた

第1章完結しました。

運命の女神のいたずらで、恋愛悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 人間の世界、王都ヤマト、王宮内には厳かな雰囲気に包まれた神殿があった。


 神殿に向かう参道を、剣士陽光と女王アマテラスが歩いていた。


 既に陽光は、死人の国の王である炎王の依頼を、人間のアマテラス女王に伝えていた。


「そうか、運命の女神は炎王にも同じ事を告げたのですか」


「はい。私と月夜見様が24時間以内に命を落さないとこの世界を消滅させるそうです」


「なぜに、あなた達2人にこだわるのでしょう? 意味がわからないわ」


「もしかしたら、この世界を造った神・人間とオニ族を分けた神として、両種族の垣根を超えて仲良くなったことが気にくわないのかもしれませんね」


「確かに、あの女神はそのようなことを言っていました。あと『悲劇にならない』と‥‥ どういう意味なのか全然わかりません。でも、私は1回話しただけで、あの女神が大嫌いになりました」


「はははは 女王様らしいですね」


「あの女神は大変怒り、私の命をその場で奪おうとしました。でも、何かがそれを許さなかったようです。もしかしたら、それが最高神様かもしれませんね」


 やがて、祭司を取り扱う神殿が目の前に見えてきた。


 その前で卑弥呼が2人を出迎え、深々と頭を下げた。


「女王様。運命の女神がひどいことを言ってきたそうですね」


「絶対に認められない『ひどいこと』です。最高神様に訴えなければ、なりません。できますか? 」


「はい。口伝で代々の卑弥呼に伝えられている『神映し』という秘術があります。最高神様に呼び掛けます」




神殿の中に入り、女王と陽光は祭壇の前に通された。


 2人はそこに座り、その前に卑弥呼が座った。


「卑弥呼様、先に御依頼のとおり、高天原から持って参りました」


 陽光は背にかついでいた袋から、木の枝を取り出した。


「陽光さん。ありがとうございます。『(さかき)』ですね。よもつひら坂が降り天空とつながっている高天原には特別な木がはえています」


 卑弥呼はすぐに榊を燃やし始め、榊を燃やし始めた。


 そして、古くから口伝で伝わる特別な祝詞(のりと)をあげた。


「ふるべ、ゆらゆらと―― 最高神よ。ここに控える女王アマテラス、最高の剣士陽光の前に姿を現わし、2人の誓願を聞かれん」


 すると、不思議なことが起こった。


 燃えている榊から立ちのぼっている煙の中に、四角に光り輝くものが出現しモニターのようになった。


「ああ、心より感謝申し上げます。最高神様!! 」


 そこに現れたのは、なんと、陽光に大変似ている若い男性の姿だった。


「我は最高神。人間の女王、それに最高の剣士よ。おまえ達が言いたいことはよくわかる。運命の女神のことだな」


 女王アマテラスが応えた。


「はい。運命の女神様は、これにひかえます陽光。それにオニ族の王女月夜見が24時間以内に命を落さなければ、この世界を消滅させると言われます。しかし、いかに神の御意思であろうと誠に理不尽です」

 

 それを聞いた最高神の顔はみるみるうちに、大変険しくなった。


「おまえ達の言いたいことはよくわかる。が―― 私でもどうしようもならないことがある。それぞれの異世界を管轄する神が決めた異世界の運命を変えることはできないのだ」


 陽光が言った。


「運命の女神様の考えがいかに理不尽でもですか? 」


「そうなのだ。天空の神の世界の不文律だ―― 」


「わかりました。私が月夜見様に相談しましょう」


「陽光よ。お前は私とよく似ておる。透き通った心、未来を確実に見通す。気高い心、それは神に近い。

この異世界のために死ぬつもりだな。オニ族の王女がお前に同意することもわかっているのだな」


「はい」


「よし。最高の剣士陽光とオニ族の王女月夜見に我がギフトを与える。たとえ、この異世界で命を落しても、3回の転生のうちにお互いのことを想い出すことができるチャンスを与えることとする」


「それは」


「真実を伝えよう。人間もオニ族も必ず転生するのだ。さまざまに転生する。人間が死ぬとオニ族に転生し、オニ族の死は永遠の死で魂が消滅すると言うのは全くの嘘だ」


「なんで、そうなってしまったのですか」


「う――ん この異世界を造った運命の神の気まぐれだ。よし、この世界に2人がいなくなった後。その嘘のルールは止めさせることにしよう。2人のおかげでこの異世界は変るのだ」


「ありがとうございます」




 よもつひら坂の頂上の近い高い場所に向い、人間の若者が登っていた


 その背の高い若者は、独特の巻き毛の下に柔和で優しい表情をしていた。


 とても明るく楽観的で、愉快な性格がすぐにわかった。


 よもつひら坂にある門が開き、オニ族の若い娘が出て、坂を下り始めた。


 その若い娘は、銀髪で赤い目をした娘は絶世の美女だった。


 やがて、2人は暖かい顔で優しく微笑み合っていた。


 調度良い岩があり、そこに2人は腰かけた。


「月夜見様。最高神様が転生後、3回のチャンスを約束してくださいました。私はあなたのことを必ず想い出します。だから大丈夫です」


「陽光さんにそう言われると、その通りになると自信がわいてきます。ただただ、ほんの少しだけですけど、不安があります。ですから―― 」


 彼女は緑色の翡翠(ひすい)で造られた2つの指輪を出し、1つを自分の薬指にはめた。


 そして、もう1つを陽光に渡した。


 陽光は小さくうなずいて、翡翠の指輪を自分の薬指にはめた。


「お茶を持ってきています。どうですか」


「いえ。今は止めときます。転生後の世界で一緒に飲んでください」


 よもつひら坂の頂上近く、そこから広い世界が見えた。

 

 夜の暗闇に包まれていたが、無限の星々や満月の光りが照らしていた。


 ‥‥‥‥


 やがて夜明けになった。


 よもつひら坂の岩の上には誰もいなかった。


 陽光と月夜見の姿は消えていた。




 人間界と死人の国には、大騒ぎが起きていた。


「人間最高のオニ狩り剣士とオニ族の王女が命を絶った」

「報われない愛に絶望したのだろう」

「2人はこの世界を守るため命を捧げたのだ」


 運命の女神は天井界の光る球体の中でその様子を見ていた。


 女神は自分の思いどおりに事態が進み、大変喜んでいた。


「まあまあまあまあ 悲劇ね。人間とオニ族の関係は変るでしょう。変るのであれば、これ以上嘘をつく必要はないわね」


 運命の女神は力を発動した。


 その結果、互いを宿敵と思っていた人間とオニ族、全ての心が変った。


 互いの憎しみは消えた。


 それとともに、よもつひら坂は消えた。


 人間の世界と死人の世界は直接つながらなくなった。


 人間は死んでしまった人のことを尊敬し大切に想い、毎年、特別な日を設けるようになった。

お読みいただき心から感謝致します。

第2章からの展開、終局に御期待ください。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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