塔の上の恋人を助ける6
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、
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一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
オニ狩り剣士陽光は螺旋階段を上がり、6階の部屋に入ろうとした。
しかし、これまでの戦いで体中の筋肉に疲労が蓄積していた。
気がつくと、自分の手足を思うままに動かすことができなくなっていた。
よろよろと階段に近づいた。
そして手すりをつかもうとしたが、つかむことはできなかった。
「どうしようか‥‥ 少しここで休もうか‥‥ 少し休めば回復するのだろうか?? 」
背の高い彼が、その場に座り込んだ。
今までのことを考えた。
(最下層の第5王子とは戦わなかったが、その後4人の強い王子と戦った。そして、全てぎりぎりの勝負をして紙一重で勝った。自分でもよくやった。一番うれしいのは、それぞれの王子とわかり合えたこと)
陽光は消耗しきっていて、今にも意識を失いそうだった。
第5階での陽光の様子は、最上階の部屋にいる月夜見は感知していた。
「陽光様。そんなに消耗されたのですね。もうお休みください。第2王子氷雨、第1王子継炎は大変強いのです。万全のあなたであれば勝てるでしょうが、消耗して50%の力しか出せない今の状態では勝てません」
月夜見がそう言ったのと同時に、陽光はその場で意識を失ってしまった。
その後、陽光と第3王子風神が気を失っている5階の部屋に1つの影が現われた。
その影は、螺旋階段を6階に上がっていった。
6階は非常に寒かった。
「やっと来たか。私は第2王子氷雨と申します。この世界の中で最強の剣士と名高い陽光様と剣を交えることができ光栄です。でも、あなたの剣が届くかどうかはわかりませんが――凍り付け!! 」
氷雨の一言は、氷点下の気体の固まりとなり、陽光に襲いかかった。
陽光は氷点下の固まりが届く少し前に、最速の剣を振るった。
その剣圧は氷点下の気体の固まりをバラバラに切断し飛散させた。
「‥‥おう、対したものだ。わすか一撃で、しかし、これが雨になったらどうかな」
「無慈悲に降り注ぎ、敵を凍り付け!! 」
すると、氷雨の目の前にたくさんの氷点下の気体の固まりが現われた。
そして、それらの固まりは瞬間的に陽光の頭上の空間に転移した。
その後、雨のように陽光に向かって降り注いだ。
陽光はその場で守備の構えを瞬時にとり、氷点下の雨を剣を振り払った。
ただ、雨の数は無限大だった。
陽光は光りのような速さで剣を振るっていたが、やがて間に合わなくなった。
さらに、彼の剣が折れた。
突然。氷点下の雨が止まった。
「‥‥‥‥もう、良い。私は弟と戦っても仕方がない‥‥‥‥乱龍、止めよ!! 」
陽光の姿が第4王子乱竜の姿に変った。
「どうでしたか、兄上。ほんのわずかな時間であっても、兄上の剣をさばくことができましたよ」
「なんの茶番だ。ほんとうの陽光は今、どこにいるのだ」
「この下の階で月下を倒した後、消耗し過ぎて意識を失い倒れています」
「そうか!! それなら私が今降りていき、命を奪おう」
「兄上、そうはさせませんよ。陽光様は既に5人の王子と戦い勝っています。しかし、それぞれの王子の命は奪いませんでした。もちらん、私もそうです。そして私を励ましてくれました」
「ほう。どのようにだ」
「他の剣士の技を完璧に再現できるのは能力があるからだと。そして最強の剣士になれると」
「陽光はバカか。敵に塩を送るというのか、最高のアドバイスをするなんて。お前の力に関しては私も陽光と同じ意見だ。しかし‥‥ 」
そう言うと、第2王子氷雨は歩き出し、下の階に降りようとした。
「兄上。行かせませんよ!! 」
乱竜は再び陽光の姿に変ったが、すぐにそれは解け乱竜の姿に戻ってしまった。
「乱竜よ。もう止めるのだ。お前もかなり消耗している―― 」
その時だった。
乱竜の後ろから部屋に入ってくる影があった。
「黒の楯」
6階の部屋から螺旋階段にむかう途中に黒い壁が出現した。
「これは!! 深黒!! 」
「兄上。しばしお待ちください。いやしくも死人の国の王子として、今の状態の陽光さんに襲いかかるのはいかがなものかと思います」
「お前は確か、月夜見と同じ母親の兄だったな。だから、陽光の味方をするのか」
「はい半分はそうです。可愛い妹のためですから当然です。しかし、残りの半分は違います。私はあの方の考え方に深く敬服したのです。オニ族と人間に違いはありません」
「そうか。王子としての責務を放棄して、父上に逆らうということだな」
「氷雨兄上。よくお考えください。今まで変らなかったことが、正しいことではないのです。正しいことに変えなければならない時もやってきます」
「‥‥‥‥なにしろ、そこをどけ。黒の楯をしまえ。お前の力は死人の国では私と遜色なく強い。いつまでも勝敗がつかないではないか」
「兄上の『冷気』。そして私の『暗黒』。この際、死人の国の力でどちらが強いのか決めてしまいましょう」
「あくまでそう言うか。その内側にいる乱竜とともにすぐに凍結させてみせる。真剣に本気で行くぞ」
「喜んで―― 私も本気で黒の楯を作り続けます」
「我、氷の妖精王の娘と死人の国の炎王との間に生まれた豹雨。この世界の熱を支配する者。熱よ全て完璧に去れ、『絶対零度』!! 」
氷雨の前に、絶対零度の氷気が無数に出現した。
彼が黒の楯を指指すと、無数の氷気は楯に向い突き刺さった。
楯の内側では。
「う!!!! 」
深黒はかなりのダメージを受けた。
「さすがに、父上や継炎兄上が一目置く方だな。この世界の熱を全て支配し、はるか遠くに退けてしまった。残念だが、黒の楯はあまり長く続かない。乱竜、陽光さんを起こしに行ってくれないか」
「深黒様。私の寝起きは良いのですよ!!!! 」
深黒と乱竜のすぐ後ろに人影があった。
最強のオニ狩り剣士、陽光だった。
「深黒様。こうすれば勝てるでしょう」
彼はそう言うと、黒斬を抜いた。
「黒斬。光をすべて切り捨てろ。黒い楯は皆無を現わし、最強の守りとなる」
その後、黒い楯に黒斬の柄をつけた。
すると、黒斬は黒い楯の中に吸い込まれた。
「よし」
背の高い若者は、後ろを振り向き2人にオニ族に笑顔を見せた。
独特の巻き毛の下に柔和で優しい表情をしていた。
とても明るく楽観的で、愉快な性格がすぐにわかった。
さらに人間なのに、オニ族を恐怖と憎しみの目では見なかった。
「友達どおしで、困難な仕事をやりとげることができました」
2人のオニ族は、この人間の若者がもっと好きになった――
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に他の日でも更新させていただきます。
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