塔の上の恋人を助ける3
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、
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一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
高い塔、最上階の部屋。
月夜見が閉じ込められていたのは、広い、石の空間が続く殺風景な部屋だった。
ただ唯一、小さな窓があり、そこから眺めるよもつひら坂が彼女の心を慰めた。
閉じ込められてすぐに、彼女は特別な感覚を感じた。
「なに? この感覚は? 」
月夜見は急いで窓に走り近づいた。
すると‥‥
「陽光様!! 」
よもつひら坂を登ってくる陽光が見えた。
目に見えた背の高い若者は、独特の巻き毛の下に柔和で優しい表情をしていた。
ただ、いつもと違うのは何か決意を秘めた厳しさがあった。
彼女はこの最上階の部屋に閉じ込めるまで歩いた、高い塔の構造を覚えていた。
(確か、この部屋を除き7階と7つの部屋があったわ。7というと王子の数と同じね。これから、陽光様は私の弟達と戦わなければならないのね‥‥ )
月夜見は7人の王子達のことを心の中で確認した。
(強い王子ばかりね、たぶん第5王子の深黒とも戦うのかしら)
窓から見ていると、陽光はすぐに塔に近づき中に入ったので姿が見えなくなった。
(あれ?? )
もともと彼女は、オニ族の中でも特別な力を持っていた。
額の両側からは角は出ていなかった。
そしてその力は、満月の日には最高になった。
しかし、それ以外には全く力は発動しなかった。
ところが、
今、彼女の力ははっきりと捕らえていた。
陽光のオーラ、7人の王子、それぞれのオーラを認識した。
(1階にいるのは深黒‥‥ )
彼女の心は暗くなった。
母親が同じで、仲が良い深黒が最初に陽光と戦い、
命を落してしまうことを考えると悲劇的な気持ちになった。
しかし、深黒のオーラは部屋の真ん中で動かなくなった。
(あれ? まだ生きているのに動かない。戦わないのね)
すぐに、陽光のオーラは深黒を無視するように2階に上がった。
(よかった!! 戦わなかったのね!! )
2階に陽光のオーラが上がると、その階にいた花龍のオーラと入り乱れて動いた。
やがて、2つのオーラは動きを止め、陽光のオーラは3階に上がった。
花龍のオーラは全く動かなくなった。
(命のエネルギーは止まっていない。たぶん陽光様が勝ったのだけど、致命傷は与えなかったのね‥‥
弟の命を助けていただいてありがとうございます。花龍は優しい子で、戦いは好きではないのです)
第4王子乱竜の剣筋はメチャクチャで、すべてが全く予想がつかない剣筋で威力も大変なものだった。
陽光は守りに撤した。
「陽光様。守ってばかりですね、私は今まで戦った、全ての剣士の剣を再現することができるのですよ。
ただ、今はレベル2ですよ!! レベル1で戦えばあなたを倒せますね」
そう言うと、乱竜は後ろに飛び陽光と距離をとった。
「鏡の剣」
乱竜の姿が強い光に包まれると、そこには法具「かげろう切り」をもった槍使いが立っていた。
「今度は負けませんよ―― 」
そこに確かにいたのは、第10王子真龍だった。
そして、槍の連続突きが始まったからだった。
何百回の突きが、ほぼ一瞬と思えるような瞬間に繰り出された。
ところが、陽光はなんの苦も無く、宝剣黒斬を振るうことは全くしなかった。
全ての突きを、余裕を持ってかわしていた。
「なんで、そんなに余裕が?? 真龍の槍には苦戦したという記録が残っていたのに?? 」
槍の突きが止まった。
真龍の姿が乱龍の姿に戻っていた。
陽光が言った。
「私は1回戦った尊敬すべき戦士の技は正確に記憶するのです。それで無意識に何回も何回もその戦いを心の中で繰り返し、自分の完全な知識にするよう心がけています」
「そうなんですか―― それが、史上最強と言われるゆえんなのですね。それでは奥の手を出すしかありません。さすがに、私もこの手は使いたくなかったのですが」
乱竜がそう言うと、その姿が強い光に包まれていた。
高い塔の最上階で2人の戦いのオーラを確認していた月夜見が言った。
「乱竜、それはだめだわ。止めなさい!! 」
乱竜は別の剣士の姿に変った。
陽光はその姿を見ると、はっとしたようなそぶりを見せた。
そして顔中が苦悩に包まれた。
心の中で大変苦しんでいるようで、暗い顔になった。
それは一瞬。
やがて陽光は戦う顔になった。
今度は陽光は黒斬を構え、別の姿に変っている乱竜に一瞬にして近づいた。
黒斬が一閃された。
「瞬歩―― あなたに最初、教えていただいた技です。父上」
ただ、剣筋は致命傷からはずれていた。
乱竜はその場に倒れた。
「陽光様。ほんとうに申し訳ありませんでした。お許しください。かって、同じようなことをあなたの父上にしていただきました。父上も剣筋を致命傷からはずし、私の命を奪いませんでした」
「父上もそうしたのですか!! 」
(今、誰かが私を助けてくれた)
少し前の瞬間だった。
国斬を振った相手の乱竜の姿が、陽光の父の姿から戻っていた。
乱竜の姿を戻したのは、最上階にいた月夜見だった。
「よかった。偽りとはいえ、父上を切った記憶をあなたの心に刻まないですみました」
「他人の剣の技を再現できるのは、乱竜さんに能力があるからです。それらの良い所を自分なりにアレンジすれば、あなたは最強の剣士になれますよ」
「ありがとうございます。命を救っていただいた上に、そのように言っていただけるとは‥‥ うれしい」
乱竜は意識を失った。
陽光は自分の服を破り、乱竜の体から血が出ている場所を結んで止血した。
陽光は螺旋階段を登り、次の階の部屋に入った。
ところが1歩足を踏み入れた途端、強い殺気の剣を感じた。
彼は黒斬を抜き、その剣を跳ね返した。
跳ね返された次の王子を見て、陽光は驚き叫んだ
「月夜見様!!!! 」
顔が月夜見とそっくりだった。
銀髪の長い髪、美貌の顔の中で2つの目がルビーのように赤く輝いていた。
ただ、ひたいの両側から2つの角が出ているとこだけが違っていた。
陽光が月夜見の名前を叫んだのを見ると、そのは怒り狂った顔になった。
「その名前を出すな!! どうせ、私より美しいのだろう!! 」
「いえいえ、違います。月夜見様と同じように美しいですよ」
「この2つの角が、みにくいだろう。美しさが損なわれているだろう」
「そんなことは全くありませんよ。個性として美しさの一つになっていますよ」
「2つの角はみにくいだろう」
「みにくくありません。全く」
反対に、陽光が逆ギレしたような強い声だった。
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
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