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塔の上の恋人を助ける

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、

ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 死人の国の王宮で行われていた話し合いを、運命の女神が光の球体に映し見ていた。


「う――ん ここが重要な場面ね。悲劇の展開が難しいわ。‥‥そうそう、助けてあげましょう」


 運命の女神は光の球体を指差し、自分から神の力を伝導させた。



 月夜見(つくよみ)は追い詰められていた。


 父親の炎王が激怒している上に、兄弟の王子達も同様に怒りの目を向けていた。


 大変仲が良い第5王子深黒(しんこく)だけが、心配そうに彼女を見ていた。


 ところがその時、激怒していた炎王の前の空間に鍵が現われた。


「なんだこれは。鍵か、急に現われるなんてどういう意味だ」


 その時、王宮の中に神々しい声が聞こえてきた。


「その裏切り者の女を閉じ込める高い塔を造ってあげるから、そこに恋人を呼び寄せるのよ。よもつひら坂を登りきった場所、女は最上階、その下には王子の数と同じ7つの階を設けるわ」


「そうか、最上階まで行き月夜見を助けるためには、7人の王子に勝たなければならないという状況を作ればよいのだな!! 」


「さすが聡明(そうめい)な王ですね。私はこの世界を統べる女神です。あなたを(たた)えます」


 神の声が聞こえたことで、王宮の謁見の間はざわざわとした。


 炎王は決意を込めた声で宣言した。


「衛兵よ。よもつひら坂の上に高い塔が作られているはずだから、最上階に月夜見を閉じ込めろ!! 」


 その後、王子達に向かって強く指示した。


「お前達、陽光に命を奪われた3人の弟達の(かたき)を必ず討つのだ!!!! 」




 死人の世界の門が開き、目の前にはよもつひら坂がはるか下までつながっていた。


 激しい風が吹きすさぶ中、2人の衛兵に追い立てられ、月夜見が歩き始めた。

 彼女の美しい長い銀髪が後ろに広がった。


 王女だというのに、衛兵は乱暴だった。


 そばに高い塔が造られていた。


 塔の中に入ると、急な螺旋(らせn)階段が始まった。


 長い長い間、階段を登りきり、最上階に達した。


 鍵が入れられ、分厚い扉が開けられた。


 そして、月夜見はその中に追い立てられ、扉を閉められた。


 その部屋には小さな窓しかなかった。


 月夜見がそこから見ると、はるか下界、人間界の高天原が見えた。


「陽光様‥‥ 」


 遠い場所にいる彼と話す手段はなかった。


 彼の姿を映し話すことができる書巻は取り上げていた。

 

 だけど、彼は自分のために必ず助けに来てくれると確信していた。


 彼女は愛する彼がいつもそうであるように、楽観的で、どんなに苦しい状況でも希望を捨てなかった。




 人間界は平穏だった。


 人々はそれぞれ、自分達の生活をそれなりに楽しんでいた。


 ところが、突然、


 平穏は信じられないことで奪われた。


 人間達が行き交う世界の上の広い青空。


 そこに、不自然な暗黒な四角い空間が現われた。


 そしてそこがスクリーンのように、オニの姿を映し出した。


 普通のオニではなかった。

 気の弱い人が見て、その強い闘気に押され失神してしまうほどだった。


「我は死人の国、オニ族を束ねる炎王なり。これから、人間を1人でも多く殺害するための侵攻を、人間界全域に向けて行うであろう‥‥ 」


 炎王はそれから黙り込み、そして思いついたように再び話し始めた。


「しかし、唯一侵攻を回避する選択を与えることとする。よもつひら坂の上、塔の最上階の部屋に我が不肖(ふしょう)の娘、月夜見がいる―― 」


「――人間達よ、月夜見をそこから連れだし人質とするのだ。ただ、最上階の部屋にいくまでの7つの階には我が最強の息子達が守っているから、その王子達と戦い勝つことが必要だがな―― 」


「――いっておくが、王子達は極めて強い。おまえ達がほこるオニ狩り剣士に戦わせてみるがよい」


 王都ヤマトに大騒ぎが起きた。


 女王アマテラスは国中から、会議のためオニ狩り剣士10人を招集した。


 やがて9人がそろったが、唯一1人、席次第5位の陽光だけは現われなかった。


 会議では、そこにいない陽光をみんなが批判した。


「アマテラス様はいつも陽光を甘やかしているからこうなるのです。あいつは今まで、本当に運が極めてよかっただけで数々の武功をたてることが出来たのです」


「そう思いますか。私はそうは思いませんけれど!! 陽光が今どこにいるのかは、だいたいわかります」




 陽光は既に、よもつひら坂の相当高い場所まで登っていた。


 彼は大変急いで進んでいたが、坂の幅が急に狭まっているある場所まで来ると急に足を止めた。


 はるか下の高天原を見渡せる場所で彼は目を閉じ手を合わせた。


「父上。私はオニ狩り剣士としての責任を全うします」


 ただ、彼の心にはもう一つ、別の気持ちがあった。


(月夜見さんを救うんだ。「人質にしろ」なんて、たぶん今、最も危険な立場にあるはず)


 背の高い若者の表情は、独特の巻き毛の下にいつもと全く違っていた。


 彼の心の大部分は、これからの未来をとても悲観的に見ていた。


 しかし彼は必死に、心の中の希望の光りを燃やし未来を見ていた。




 やがて、よもつひら坂の頂上が見えてきた。


 そしてそこには、炎王が言ったように高い塔が造られていた。


(7人の王子達か、恐いけど勇気を出して行け。陽光!! )


 彼は最初の階に足を踏み入れた。


 暗い部屋だった。


 やがて、1本の蝋燭(ろうそく)がか弱い光を灯した。


 椅子が置かれており、1人のオニ族が座っていた。


 第5王子深黒だった。


 陽光が見ただけで、最高に強いことがわかった。


「陽光様ですか。私はオニ族第5王子深黒と申します。まずわ、いつぞや私の妹月夜見を影狼から救っていただいたことに心から感謝致します」


(観察眼発動!! )


 深黒のオニの目が純粋な赤色に光った。


(えっ‥‥ えっ、えっ‥‥ )


 心の中で大変驚いた。


(こんなに強いのか。これは神レベルだ。たぶん、他の6人の王子を倒し月夜見を救えるだろう)


「陽光様。あなたは月夜見の力で生み出される『茶』という飲み物を飲まれたことがありますか」


「はい。いただきました。月夜見さんが私が用意した米で作ったオニギリという食べ物に最高に合うと、作っていただきました」


「‥‥‥‥ そのなのですか。それほどまでに妹と親密なのですか」


 深黒は決心した。


 彼は剣を捨て、陽光の前に丸腰で正座した。

お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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