宿命は誰が決めたのか
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、
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一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
王宮の中には、ヤマトの国で最も大切な神殿があった。
そして、その中で古くからの祭司を行っている巫女がいた。
巫女の名は「卑弥呼」という。
卑弥呼とは個人的な名前ではなく、千年以上引き継がれてきた役職のようなものだった。
ある日、今の卑弥呼に陽光が会いに来ていた。
「陽光様。最強のオニ狩り剣士のあなたが、本日はどのような御用でございましょうか」
「はい。卑弥呼様。古くからの歴史を口伝で引き継がれているあなたに、教えていただきたいことがありまして参りました」
「このような老婆に―― わざわざ、御領地からここ王都までお出でいただきありがとうございます。私のお答えできることであれば、全てお答え致しましょう」
「私が子供の頃から、あたり前の事実として教えられたことです。人間とオニ族との関係です。人間が死にやがてオニ族に転生する。オニ族に転生して死ぬと、それは永遠の死・消滅することなる? 」
それを聞いた卑弥呼は、きっ、とした目つきで陽光を見つめ、口を開いた。
「陽光様。それはおおむね事実でございます。ただ重要ななことが省かれ、理解されていません」
「どのようなことでしょうか」
「『オニ族に転生して死ぬと、それは永遠の死・消滅することなる』ことは確認されていません。なぜなら、確認する方法がないからです」
「そうすると、もしかしてまた輪廻の中に入り、人間やオニ族に再び転生することがある可能性も無いわけでは無いのですね」
陽光の言葉を聞くと、卑弥呼は大きくうなずいた。
「オニ族に対して、人間は大きな嫌悪をいだいています。なぜなら、自分達が最も恐れる死を身近に感じさせるからです。全て否定したいのです」
「逆に、オニ族はなんで人間に大きな嫌悪をいだくのですか? 」
「鏡の効果です。人間が自分達に抱く負の感情を反映してしまうのです。自分達が汚らわしいものだと不当に思われていると認識してしまうのです」
「そうなんですか。私は逆に、人間の死から生まれるオニ族は尊いものだと思います。彼らは自分達の先祖です。自分達の今をすばらしいものにするために努力して、やがて死を迎えたのです」
卑弥呼は非常に驚いた顔になり、目を大きく見開いて陽光を見た。
「そのようにお考えになるとは‥‥ 」
「私達は卑弥呼という名前を継ぐ時、昔からの言い伝えを伝承されます。その中で、このようなものがあります。『人間の中に勇者が現われ、オニ族との関係を正し、世界に平和をもたらす』」
「勇者ですか?? 」
「はい。私は今、確信しました。それは、あなた、陽光様です」
「私ですか?? 」
卑弥呼は大きくうなずいた。
「陽光様の御領地、高天原には、死人の国からよもつひら坂が天から降りていますね」
「私が子供の頃から見慣れた景色です」
「ところが、数百年前までよもつひら坂はなかったのです。そして、人間はオニ族、死人の国のことなど全く知りませんでした。ところが、ある時、突然、天からよもつひら坂が降りました」
「それが、今に至る人間とオニ族との戦いの始まりです。誰もが意識はしませんが、オニ族は死人の国から来たということを強く認識し、汚らわしいものとして嫌悪しました」
「それもおかしいですね」
「そうなんです。なにか、この世界を統治している神が、人間が、そのように思うことを望まれたようなのです」
「もし、それが真実ならばひどい神なのですね。少しやり過ぎだと思います」
「し――っ 陽光様。この世界を統治しているんは気まぐれな女神なのです。彼女はこの世界で行われている全てのことを見て聞くことができるのです」
実際、ほんとうに、
陽光と卑弥呼の会話を、運命の女神は光りの球体の中に映し出し聞いていた。
「なに。この人間は神の行ったことを『ひどい』と批判するなんて、なんて無礼なんでしょう――
まあ、いいわ。悲劇の恋人として、物語をしっかり演じてもらうから!! 」
運命の女神は無気味ににっこりと微笑んだ。
第8王子残忍の死は、よもつひら坂からの転落死だと報告された。
あまり人気がなく、むしろ性格的にきらわれていた王子だった。
しかし、死人の国の炎王にとっては、かわいらしい愛する子供の1人だった。
炎王は王宮の自分の部屋にあるベランダから、はるか下に見える星の地面を見ていた。
すると、大変なスピードで上に上がってくるものがあった。
「闇ガラスか」
炎王が転落死した残忍の死骸を確認してくるように命じたのだった。
闇ガラスは炎王のそばに止まると、話し始めた。
「ザンニン、オチルマエニシンデイタ。カラダ、イッチョクセンニ、ケンデキラレタ」
「なに!! 見せろ!! 」
炎王の命令で、闇ガラスはその目から光線を出し、映像を形作った。
それは地面に落ちた残忍のなきがらだった。
「これは この傷跡は 黒斬がつけたもの。許せん!! 」
炎王は残忍の最後の場面に月夜見がいたことを知っていた。
そしてすぐに月夜見と、残った7人の王子達を読んだ。
謁見の間に全員が集まった。
そこに出てきた炎王の顔は怒りに満ちあふれていた。
「月夜見よ。お前は我に嘘の報告をしたな!! 」
「残忍の死因を我に誤った転落死、と言ったが違うではないか!! 」
「父上、私は嘘をついてはおりません」
「どの口が言うのか。我は人間の地上に闇ガラスを放ち、残忍のなきがらを確認させた。すると、体には黒斬に切られた一直線の致命傷があった。陽光に切られた跡がな!! 」
炎王のその言葉に、その場にいた王子達や家臣達から、大きなざわめきが起こった。
(仕方がないわ。でも、真実を正しいことを)
月夜見は決心し、その決心が彼女の体を青白い光りで包んだ。
「父上。残忍は人間100人と私の命を天秤にかけたのです。天秤にかけてはいけないものを、おもちゃのように取り扱いました。そして卑怯にも、陽光様に両方を助けたければ坂の上から身を投げろと!! 」
彼女のその言葉に、前よりも何倍も大きなざわめきが起きた。
さらに、月夜見は驚くべきことを言い始めた。
陽光への愛が彼女を支えていた。
「私達オニ族と人間は敵ではありません。同じように生き、同じように大切な命、同胞なのです。残忍の心と陽光様の心、一体、どちらが気高いのでしょうか―― 」
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に平日に更新させていただきます。
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