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天秤にすべきことではない

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、

ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 書巻に映された残酷の顔は、快感にあふれた笑顔だった。


 オニ狩り剣士陽光の命を奪うために、自分の考えた方法にご満悦のようだった。


「陽光さん。私は究極の『これ』を作ります。よもつひら坂の上の方まで登ってきていただけますか――あ、言い忘れました。我が親愛なる姉上も『これ』の材料としますよ。ふふふふ」


 残忍が、映像として見せたものは天秤だった。




 陽光は残忍の誘いに乗ることにした。


 急いで愛馬コウにまたがり、よもつひら坂を超速で登り始めた。


 坂をだいぶ登り、その幅がとても短くなってきた。

 

 最後は、標高がとても高い所まで達していた。


 すると、前方にオニとその軍勢がひしめいていた。


「戦うつもりなのか」


 陽光は愛馬コウから降り、歩きながら近づいた。


 途中で、腰に差す宝剣黒斬を抜いた。


 先頭のオニはとても良い甲冑に身を包んでおり、王子のようだった。


「おやおや。お早いお着きですね。ヤマトの国、席次第5位のオニ狩り剣士陽光様。私はオニ族第8王子残忍でございます」


 残忍は陽光が、宝剣黒斬を抜いていることを見るとあわてて言った。


「陽光さん。あわててはいけません。私は何も、あなたと戦おうとしているつもりは全くありません。余興ですよ余興、イベントなのです」


 それから、うやうやしく道の左右を指指した。


 よもつひら坂の道を横切る巨大な天秤だった。


 そして坂道を大きくはみ出し、空中に左右の腕が突き出されていた。


 右側の上の先には、100人くらいの人間が乗せられている皿があった。


 そして左側の皿には1人だけが乗せられていた。


 月夜見だった。


「お姉様は体重が軽いですからね。上皿の下に重しを乗せてバランスをとるのが大変でした」


 さらに、残忍は勝ち誇ったように言った。


「もしかしたら、月夜見お姉様は空を舞うことができるから大丈夫とお考えですか」


 残忍はわざとらしく、首を振った。


「巫女としてのお姉様の力は満月の日に最高になり、死人の国から人間のこの天空まで自由に空を舞うことができるのですよ。本日は月の位置が満月とは正反対。空は舞えず、真っ逆さまに地上に落下します」


 残忍の話しが続いた。


「陽光さんに選択権を与えます。右と左どちらを選びますか。命を救おうとされる方の腕を短くします。

すると反対側の天秤の腕は下に傾き、乗っている皿は、はるか下の地上まで落下します」


 陽光に究極の選択をさせようとする残忍のたくらみだった。


 さらに、残忍のたくらみは続いた。


「あなたは人間を守るオニ狩り剣士、まさか、100人もの人間を見殺しにはできないはずです。かと言って、月夜見お姉様の命はどうですか。少しも惜しくないですよね、愛し合ってもいないのに!! 」


 その時、月夜見が絶叫した。

「陽光様。私は良いのです。あなたが使命とされている人間の方々をお助けください!! 」


 陽光と月夜見の2人の目が合った。


「‥‥‥‥ 」


「何も言い返すことができないのですか。最後に私の方から究極のプレゼントです。人間、月夜見お姉様、どちらも助けたいと思われる場合は、あなた自身がこの坂の上からジャンプしてください」


「‥‥‥‥ 」


「絶望するお気持ちわかりますよ。だけど、あなたは選択せざるを得ない。しかも答えは決まっている。長い間。考えても無駄です。さあ、ジャンプするのです」


「そんなことはしません!!!! 」


 陽光はそう言うと、彼の一族に伝わる神呪文を詠唱した。


「我、今正義をなす。命をおろそかにする悪を阻止し、命を救う。ゆらゆらとふるべ、ゆらゆらとふるべ」


 その後、彼は神速で動いた。


 まず、天秤の中心まで行き、信じられない強い力で天秤を持ち上げた。


 そしてその後、よもつひら坂を横切っていた天秤を、坂沿いに縦に置き直した。


 一瞬の間にそれは行われ、さらに陽光は黒斬を抜いたまま、残忍にちかづいた。


「あなたが月夜見さんの弟であろうと、命をもて遊ぶなんて私は許せません」


 黒斬は残忍に向かって振り下ろされた。




 全てが終わった後、下の方に置かれた天秤の皿からよもつひら坂に降りた奴隷達に、陽光は言った。


「奴隷に売られるとは、大変な経験をされましたね。私の愛馬が御案内します。あなた達はもう奴隷ではありません。私の領地、高天原の領民です。愛馬の後について、早々に坂から降りてください」


 一方、月夜見の皿は坂の上の方に置かれた。

 

 第8王子残忍の手勢達のそばだったが、オニ族の兵士達はそこにひざまずいた。


「月夜見さま。我々が仕える王子の指示だとはいえ、あのようなことをして申し訳ありませんでした」


「かまいません、ただお願いごとがあります。残忍の死体を坂から下の高天原に落してください。それに、父上には残忍が誤って、よもつひら坂からはるか下の人間界の高天原に落ちたと報告してください」


 それから月夜見は坂を下りて陽光にちかづいた。


「陽光様。不思議な力で助けていただきました。あの力は人間ではあり得ない神のものですね」


「はい。そのとおりです。私の一族は1万年以上の昔、人間界に下ってきた神だったという言い伝えがあります」


「そうなのですが。残忍の死の原因は自分の誤りになりますから、(かたき)としてグレードアップする御心配には及びません。もう陽光様は2人の王子の仇として私の国では知らない者がおりませんから」


「憎まれているのですね」


「今では子供から老人まで知らぬ者はいません。みな涙にあふれています。そして、あなたが別の王子達の仇討(あだう)ちで命を落すまでそれは続くでしょう」


「月夜見さんは、毎日そのような中にいらっしゃるのですね。申し訳ありません」


「毎日だんだん、陽光さんに対する憎悪が大きくなっています。今のところは耐えることができていますが、これから私の兄弟の王子達や父親の炎王と戦いが続くのですね」


 月夜見の目は、暗い未来を見ているようで、とても悲しそうな顔になっていた。


「戦い、簡単に言えば殺し合いになるかも知れませんが、無くすことができないか、私は一生懸命考えようと思います。必ず最良の道を見つけることができるはずです」


「あなたは、苦難の先に光を見ることができるのですね」


「昔から、そのように考えることを自分に課していました。とても(むずか)しいのですけれど」

お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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