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死を奪われた女

※悲しい音楽


古びた本棚。かつてのきらびやかな内装を思わせる部屋。

今は見る影もない。

部屋の真ん中に、女の後ろ姿があった。

ブロンドの髪を後ろに束ねた女。ピンクのジャージ。

ジーンズを穿いた尻は突き出ている。

女の背に近づく。

女は嫌そうな顔をしながらタバコを吸っていた。

ちょっかいを掛ける。

女はしばらくして、別の部屋に移った。

それを嫌がらせのように追いかける。

見回すと燭台をおいた机の上に写真がいくつか立ててあった。

その中の一つに目を奪われる。

処刑台の写真。


首を縄でくくなれ、ぶらぶらと風に揺られる女。

白い装束がはためく。ブロンドの髪は泥で薄汚れている。

あの時、すぐ横でそれを眺めていた。

女は男たちに慰み物にされていた。

女は死ななかった。

だからどんなことでもできた。

女が横を向いた。

目が合う。

救いを求めるような目。

怒りと憎しみと、苦しみと絶望が入り混じった目。

様々な感情の入り混じった目。

首をくくられ喋れない女の感情が、言葉よりなお雄弁に伝わった。

だが、自分は何もしなかった。

ただ、見ていた。

女の首が剣で落とされる。さらに油をかけられ燃やされる。

男たちはそれを笑いながら見ている。

地面に落ちた女の首は、しかし死なない。感情を無くした顔で、燃える自らの肢体を眺めていた。


女がこちらを見ていた。

あの時と同じ顔で。

あのときのすべての憎しみを感じさせる表情で…。


※悲しい音楽

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