第9話 家族との別れ
「いいね」頂きました。
ありがとうございます。
「じいちゃん、どうしよ? 【予知】から逃げるとか無理じゃない?」
「ふむっ……」
じいちゃんも流石に悩んでいるみたいだ。
「じゃあ、何で今回は【予知】による襲撃を退けられたんだ? 【予知】と言っても万能ではないのかもしれんぞ?」
「はっ! そうだね。流石じいちゃん!」
事前に何でも分かっていたなら勝てるはずなかったんだ。でも勝てたってことは【予知】には限界があるのかもしれない。
「頭領、【予知】スキルについて知ってること教えて。何で今回僕たちは襲撃を退けられたの?」
「【予知】で知らされたのは、昨日の時点でこの村に未知のスキル持ちがいるということだけだった。分かっていたのは8歳の子供だろうということと、場所だけだ。【予知】で知ることのできる情報は断片的で細かい情報はわからないと聞いている。また、【予知】は消耗が大きく1日に一度くらいしか使えないらしい。帝国では【予知】すべき事が数多くあるため、この件について次の【予知】を行うのは恐らく我らの失敗が報告されてからになるだろう」
頭領さん、ついに抵抗を諦めたね。
スラスラ答えてくれた。
「ほう。ならばすぐに次の襲撃があるわけではなさそうだな」
「だね。でも僕がずっとこの村にいたら皆が危ないよね。次はもっと大人数で攻めてくるかも知れないし」
「まぁ、この件はワシらだけでなく皆で策を練ろう」
「そうだね」
じいちゃんの声に元気がなかった。
だってそうだよね。
孫一人か、村の皆か、どっちか選べって言ってるようなものだからね。
そんな選択を迫るのは酷すぎる。
だから、僕はもう決めた。
じいちゃんには鍛えて貰ったし、一人でも生きていけるんじゃないかと思う。
だから、自分から村を離れることを提案しよう。
………
……
…
結局、村長さんと家族を含めて話し合ったけど、いい案は出なかった。
国に保護してもらうって案も出たけど、アークドイン帝国との外交次第では逆に国から狙われることもあるかも知れない。ってこで僕が出ていくのが一番現実的な解決方法となった。
ちなみに、じいちゃんと相談して僕のスキルについては「将来帝国の脅威になると【予知】されて狙われている」程度の説明で留めている。
盗賊たちのスキルは【剣術】とか【槍術】とかのスキルが多くて、そういったスキルはすぐに修得することは出来なかった。【アイテムボックス】持ちも一人いたけど、残念ながらこちらも修得することは出来なかった。
残りは強化系のスキルだったので簡単に覚えることが出来た。新しく覚えたのは【怪力】と【瞬脚】の2つだ。まぁ、似たようなことはじいちゃんの【身体強化】でできるからちょっと微妙だったけどね。
ちなみに、盗賊たちは人数が多いため、騎士団に村まで来てもらい引き取ってもらうことになっている。
盗賊から修得できたスキルはイマイチだったけど、身近な所でスキル的な収穫があった。
ばあちゃんの【意思疎通】だ。
ばあちゃんによると、【意思疎通】は目と目が合って通じ合っているときに断片的なイメージを送ることが出来るスキルとのこと。
ばあちゃんは魔力が少ないらしく何度も連続して使うのは無理らしい。
一度ばあちゃんにスキルを使ってもらったら、何となく身に覚えがある感覚だったんだよね。
何だろなぁと思ったら、胸から生えてる白い鎖だった。
鎖で繋がっている感覚と同じだってことに気付いて、試しに村の外れにいる頭領に【意思疎通】を使ってみたら通じちゃったんだよね。
これにはビックリした。
ちなみに、ばあちゃんの【意思疎通】の繋がりは、白い鎖の繋がりと比べるとかなり希薄なんだけど、白い鎖の繋がっている感覚を同じように薄くしてみたところ、見えなくすることができた。
見えなくなってもしっかり繋がっている感覚はあって、【意思疎通】もちゃんと出来た。
他の人には見えないとは言え、ずっと鎖が見えてるのは嫌だったからね。
でも、これで村を出ても家族と繋がっていられるんじゃないかと密かに期待している。白い鎖の繋がりに有効範囲がないことを祈るばかりだ。
次の日、僕は村を出ることにした。
もう少し村に居てもいいんじゃないかと皆言ってくれたけど、丁度村に行商に来ていたマイルドさんが僕を行商に連れていってくれるというのでそれに甘えることにした。
マイルドさんは独身の若い商人で、僕の状況を理解してくれている。その上で面倒を見てくれるのだからありがたい。
この機会を逃すといきなり一人旅になっちゃうからね。
僕の面倒を見るのはマイルドさん的にも利がある。旅の護衛として当てにしてるとのことだ。
まぁ、持ちつ持たれつってやつだね。
家族全員とは白い鎖で繋がっている。取引の条件は肉一切れを対価に定期的に僕と【意思疎通】することだ。ちなみに定期的っていうのは少なくとも年一回としているので、まずこの繋がりが切れることはないだろう。……大丈夫だよね。
「しかし、思っよりもあっさりと出発してしまったけど、良かったのかい?」
村を出てすぐにマイルドさんから質問された。
家族との挨拶が思ったよりもあっさりとしていて驚いたらしい。
「はい、大丈夫です。家族とは心で繋がってますからね」
胸に手を当てそう答えた。
馬車に揺られながら見つめる道の先は朝日で輝いていた。
第1章はここまでになります。
ここまで読んで下さってありがとうございました。