第8話 自分のスキルが理解できない
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「な、何だ今の光は!?」
光を見た頭領が狼狽えている。
やっぱり今何か光ったよね。
「光? 何を言っとるんだ?」
あれ? じいちゃんには見えなかったのかな?
歳のせい?
「まぁ、いいや。とにかく僕は肉を焼いてくるね。その間に気絶した人たち起こしといて〜」
………
……
…
「はい、これが約束したお肉ね……うん?」
お肉を持ってきた途端、頭領の体に白い鎖みたいなものが巻き付いた。あ、頭領だけじゃなくて他の盗賊たちにも鎖が巻き付いてるな。
あれ?
それでその鎖が僕に繫がってるんですけど……。
触ろうとしても手がすり抜ける。
何これ?
どういうこと?
「な、何だこの鎖は!?」
「鎖? 何だ? 肉を前に急に錯乱し始めたのか?」
頭領には鎖が見えて、じいちゃんには見えていないと。
他の盗賊たちも鎖に気付いたらしくザワザワし始めた。
「おい、小僧。何しやがった!? お前のスキルは何だ!?」
「何って、僕は何もしてないよ。僕のスキルは【商い】」
「【商い】? そんなスキル聞いたことねぇぞ!」
「うん。祭司様も聞いたことないって言ってたよ。まぁ、念の為調べてもらったけど『商いができる』っていうだけのスキルなんだけどね」
「じゃ、じゃあ、この鎖は何なんだよ!?」
えっと、頭領はこの鎖が僕のスキルのせいだと思ってらっしゃる?
何となくだけど僕も自分のスキルが発動しているような気がしている。
「いや、そう言われても僕もわかんないんだよね」
でも、この鎖が何なのかはよく分かんない。
「いや、待て。祭司も聞いたことがないスキルだと? それってまさか……」
そこまで言って頭領は口を閉じた。
「まさか……何? そこまで言ったなら最後まで教えてよ」
「馬鹿が、誰が言うか。俺達は予知された未知の厄災級スキル持ちを殺しに来たんだよ!」
「頭領!」
慌てて隣りにいた盗賊がツッコむ。
「は?」
「今何と言った?」
突然の暴露に僕もじいちゃんも訳がわからない。
「待て待て待て! 俺は今何を口走った!?」
えっ? この人……頭大丈夫?
「そもそも俺はこのガキと取引なんぞするつもりはなかったんだ。いつの間に取引していた?」
えっ? そうだったの? ニヤリって笑ってましたけど?
「ちょっと落ち着いてくれる?」
言葉を発した途端、頭領と盗賊たちはこれでもかってくらい静かになった。
何か変だ。明らかに何か変だ。
「なぁ、アーサー。何が起きてるのかよく分からんが、こいつにどこの国から来たか聞いてみてくれ」
じいちゃんも流石にこの状況が理解出来ないみたいだ。
でも、取り敢えずじいちゃんの指示に従っておこう。
「うん、分かった。頭領はどこの国から来たの?」
「だからそれを言うわけ無いだろう。アークドイン帝国だよ」
うん……。やっぱり頭がおかしくなったのかな?
「決まりだな。こいつは、というかこいつらは、自分の意志とは関係なくアーサーの命令に従っとる」
「えっ? そんなことある?」
「現に、こいつはワシが聞いても答えんかった質問に答えた。そして秘密事項を話したにも関わらず、部下たちは落ち着いたままで咎めることもしない。先程のアーサーの指示に従ったままだ」
嘘でしょ。
何でこんなことが起きるの?
「よく分からんが、アーサーのスキルじゃないのか? さっき取引成立とか言うとったろ? スキルが発動している可能性があるんじゃないか?」
「ああ〜、う〜ん。そう。実はスキルが発動している感覚はあるんだよね。でも、僕のスキルは【商い】だよ。命令に従わせるなんておかしいよ」
「そうか。……いや、さっきそれっぽいこと言ってなかったか? アーサーのスキルが取引を成立させるスキルだとしたら今の現象にも納得できるぞ」
えっ、そうなの? 納得出来ちゃうの?
「取引を成立させるスキル……?」
よくわかんないけど仮にそうだとして考えてみるか。
さっき僕はどんな条件で取引を成立した?
「条件は、スキルを見せてもらう対価として魔鹿の肉を一切れずつ提供する。だったよね?」
「そうだ。しかしその後にも何か言うとったろ。『ちゃんと言うこと聞いてくれたら乱暴しない』だのなんだの」
あ、そう言えば言ったような気がする。
『ちゃんと言うこと聞いてくれたら僕らも何も乱暴しないから』って。
「えっ、それも取引の条件になってるってこと? 『言うことを聞く対価として乱暴しない』みたいな?」
「そう考えると納得出来んか? まぁ、わしの勘じゃがな」
勘か。
さっきもじいちゃんの勘は当たってたからな。
確かにこの混乱した状況を引き起こした理由としては納得出来る。
でも、そんな現象を引き起こす自分のスキルが理解できない。これって【商い】なの?
「じゃあ、この人たちに乱暴しない限り言うこと聞き続けるのかな?」
「かもしれんな」
エエエ!?
何このスキル。
でも、未知のスキルであることは確かだし、頭領なら何か知ってるかも知れない。
「ねぇ、頭領。その未知のスキルについて何か聞いてる? 知ってること教えて」
「だから言うつもりは更々ねぇんだよ。でも何で俺は喋っちまうんだ? 帝国が抱えこんだ【予知】スキルを持ってるやつが皇帝に警告したんだよ。未知のスキルがここファーラ王国で神授されたってな。何でも概念が及ぶ範囲に効果を与えるスキルで、やがて帝国を滅ぼし世界を覆す厄災級のスキルに成長しちまうらしい。それで俺たちは予知に従ってこの村を襲い、村人を皆殺しにするように命令されたってわけだ」
「概念が及ぶ範囲に効果を与える?」
どういうこと?
誰か分かりやすく教えて〜。
「アーサー、まずいかも知れんぞ。十中八九未知のスキルってのは【商い】のことだろう。【予知】スキルで作戦が失敗した現状を知られたらまた帝国の軍が攻め込んでくるんじゃないか!?」
――っ!!!
確かに、それってマズいんじゃない!?