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第39話 勇者の願い

気が付けば1万PV超えてました。

やったぁ。

皆さん読んで下さってありがとうございます。

「すいません。お取込みのところ失礼します」

「うわっ、ビックリした!」


 突然目の前に現れた3人に驚く。

 何故って、今までこの人たちの存在を全く感知できていなかったから。

 あまりにも不意を突かれたもんだから思わず叫んじゃった。

 

 突然現れたのは黒髪黒目で見慣れない衣服を身に纏う少年一人に少女が二人。何故か口と鼻を布で覆っている。はっきり言って怪しさしかない。


 ……でも直感で何となく分かった。

 この人たちがきっと『勇者』なんだろう。

 魔力の質が何か違う。


 エイケツさん達はバッと立ち上がって、突然現れた3人を警戒する。

 ただ、見た感じ敵意は無さそうだけどね。


「何奴!?」

「あぁ、すいません。敵意はありません。僕たちはこの国に召喚された異世界人です」


 3人は両手を挙げて敵意がないことを示した。


「異世界人ということは『勇者』の皆さんですよね?」

「その通り。勇者のことを知ってるんだね。よかった。僕は新田賢三。名前は賢三でスキルは【魔道具生成】。初めまして」

「私は佐藤瞳。名前は瞳ね。スキルは【予知】」

「私は小畑昌代。名前は昌代。スキルは【癒しの御手】です」


 3人とも家名があるみたいだ。異世界ではそれなりの身分だったのかもしれない。

 名が家名の後に来るんだな。


 アラタ・ケンゾーさんが【魔道具生成】。

 サトウ・ヒトミさんが【予知】。

 オバタ・マサヨさんが【癒しの御手】ね。


 よし、覚えた。

 ケンゾーさんは一人だけ男性だから覚えやすい。

 ヒトミさんは背が低めで目が大きい。

 マサヨさんは(顔は隠れてるけど)おっとりした空気を纏っていて何か癒やされる感じがする。


「初めまして。僕はアーサーです。……それでどういった御用ですか?」

「会ったばかりで不躾だけど、単刀直入に言うと僕たちはアーサー君の力になりたい」


「貴様ら若に対して無礼だぞ」

 エイケツが声を荒げる。


 多分、僕のことを『アーサー君』呼ばわりしたのが気に入らなかったのかな。あと言葉遣い?

 僕は気にしてないんだけどね。『勇者』の人たちは僕より何歳か年上なのは明らかだし。

 むしろ親し気に接してくれるのは嬉しいんだけどね。


「エイケツさん、いや、エイケツ。僕は気にしてない。控えて」

「はっ」

 エイケツを始め鬼人族の面々は警戒を解いて僕の後ろに下がった。

 勇者の3人は僕の後ろの鬼人族をみて身を竦ませ目を泳がせている。

 警戒は解いたものの後ろから睨みは効かせているのかな?


「3人の目的は何ですか? 僕は帝国の敵の立場ですから3人が僕に味方する理由が分かりません。特にヒトミさんの【予知】には結構苦しめられましたしね」

「アーサー君。私のスキルで迷惑をかけて本当にごめんなさい。でも私たちは、客人として扱われてはいたものの、実質は帝国に誘拐された奴隷と変わらなかったの。【予知】は強制させられていたの」


 そうか、この3人も帝国の被害者なんだ。

 言われてみれば確かにそうだ。


「悪気はなかったから水に流せってことですか?」

「ごめんなさい。都合のいいことを言ってるのは分かってるつもり。でもむしろアーサー君が死なないように、そして成長するように【予知】の内容を伝えていたのよ」


「ん? それは僕を助けていたという意味ですか?」

「そう。あなたが死なないように村に送り込まれる刺客部隊は弱くてかまわないと誘導したし、あなたが強くなるように竜の角笛を使わせてドラゴンと戦うようにも誘導した。そして鬼人族を鍛える期間が十分持てるように超獣軍団の行軍を遅らせるようにも誘導したわ」


 んんん?

 何かとんでもないこと言ってない?

 今までの出来事は偶然じゃなかったってこと?

 

 っていうか、アルバとの戦いも仕向けられてたんだ。

 死なないようにって言ってたけど、むしろ死にかけてますが?


 でも、その戦いがなかったら今のような力は持ち得なかっただろうし、鬼人族に手を貸すこともなかったわけか。


 何だかヒトミさんの掌の上で転がされてるような気がしてきた。

 お陰でいい形で鬼人族が帝国に勝つことが出来たけど、それもヒトミさんの計算のうちなのかな?


「うーん。むしろお陰で死にかけたような気がするけど……なんでそんなことを?」

「それは……、私たちも含めて多くの人が幸せになるため。飢えで苦しむ人を救うため、戦争のない平和な世界を造るためよ」


 え?

 ちょっと話がいきなり大きくなりすぎてついていけないんですけど?


「ごめんなさい。ちょっと理解が追いつかないです」

「アーサー君には世界を変える力がある。そんな力を手にする。私はそれを知っている」


 【予知】を持ってるヒトミさんから言われると説得力がスゴイな。

 世界を変える力? そんな力はなくていいんですけど。


「いや、話が重いですよ。僕は気楽に気ままに商人として生きていきたいんですけど……」

「うん。あなたはそれでいいよ。アーサー君のしたいことをすればいい。あなたはきっかけだから。世界を変えるのは大人に任せればいい。ただ私をあなたの傍に居させて。そして……叶うなら私たちを救ってほしい」

「救う?」


 勇者たちが何かに苦しんでいるようには見えないんだけど……。


「救うってどういうことですか?」

 もし困っているなら助けてあげたいとは思う。


「うーん。まぁ何というか……」

 ヒトミさんは言いにくそうにしていた。


「ここからは僕が話すよ。ただ少し長くなるんだけどいいかな?」

 ケンゾーさん話を変わってくれるみたいだけど、長くなるのか……。


「ゴウケツどう?」

「今は新たな統治体系を構築するのに時はいくらあっても足りんからな。長くなるなら後にまわしにするのも手だろうな」


 だよねぇ。忙しくないはずないもんね。

「でも勇者たちの話って、新しい国を作る上でとても参考になる話なんじゃないかって思うんだよね。でしょ? ケンゾーさん?」

「流石アーサー君、聡明だね。今声を掛けたのもそれが理由だから」


 やっぱり。【予知】を持ってるんだから今声を掛けてきた理由があるはずだもんね。


「じゃあ、こうしよっか。みんなそれぞれ仕事をしつつ【意思疎通】で話に加わってもらう。ってことで」

「はっ」


 勇者たちの案内で適当にくつろげる部屋に案内してもらい話を聞くことにした。

 皇宮の従僕や侍女さん達は勇者たちだけでなく僕たちにもとても好意的で、お茶や食べ物などを持ってきてくれたので食べながら話を聞くことになった。


 鬼人族の主立った面々とアツィーノさんやマイルドさんにもケンゾーさんの話を聞いてもらった。


 ケンゾーさんの話はとても興味深かった。

「僕たちの元いた世界ではスキルは存在しないんだ。もしかしたらそういった超能力を使える人はいるのかもしれないけど普通の人は使えない」

「えっ、そうしたら生活が困りませんか? 文明が高度に発達した世界だと聞いてましたけどそれって正しくなかったのかな?」

「いや、間違ってないよ。スキルが使えない代わりに科学技術が発達しているから、この世界より便利なものが沢山あるんだよ。お金があれば空を飛んで世界中を旅することもできるしね」

『『『「ええ!?」』』』


 その言葉と同時にケンゾーさんの記憶が【意思疎通】を通じて共有される。

 スキルがなくても空を飛べるなんて信じられない。

 そんな世界があることに驚きを隠せなかった。


 そんな感じでケンゾーさんの話一つ一つに僕らは驚かされた。

 今後帝国をどうしていくかについてアツィーノさんは特に刺激を受けたようだった。

 

 まずケンゾーさんの元居た国は日本というらしいけど、日本では6歳から15歳までは学校に通うらしい。これは義務でお昼ごはんも出るらしい。

 そして多くの人が、高校、大学と進学し、さらに大学院という学校まであって希望する人は学問を修めるのだとか。アツィーノさんは一体何年学校に通うのかと驚いていた。

 おじいちゃんのところでは僕みたいな子供でも立派な働き手として数えられていた。

 何年も勉強に費やせるのは豊かさの証拠だと思ったけど、ケンゾーさんが言うには教育の不足は貧困の原因になると言っていた。ケンゾーさんの世界でも貧しい国や貧困に苦しむ人は沢山いるらしい。

 寿命も長くて100歳くらい生きる人もざらにいると聞いたときは本当に驚いた。それだけ生きるのなら若い時に勉強に身を費やすのも当然だとアツィーノさんも納得していた。


 また日本は何十年も戦争をしていないらしい。

 そのため国は発展し、道路が整備され、ライフライン? が整えられ、お店に行けば食べ物がいつでも買えるらしい。毎日お風呂に入り、ふかふかのベッドで眠り、いろいろな娯楽を楽しむことが出来る。

 夏でも涼しい部屋で快適に過ごし、冬でも温かい部屋で過ごすことが出来る。

 その生活の記憶に僕らは圧倒された。街には車? というものが何台も走り、空には飛行機? というものが飛び、見たこともないような大きな船が世界中の海を巡っていた。


 あまりにも違う世界に僕らは衝撃を受けた。

 ケンゾーさん達はこの世界の皇帝よりもはるかに快適な生活をしていたのだ。

 ケンゾーさん達は何も日本の上流階級の身分とかではない。一般人だというのだから驚きだった。


 そして、ヒトミさんが言っていた救ってほしいと言うのはまさにその点だった。

 この世界は3人にとってあまりにも苛烈で、あまりにも不衛生で、あまりにも臭くて、あまりにも不便で、あまりにも食事がおいしくない世界なのだ。(顔を覆っているのは臭いかららしい)

 帝国の客人として扱われる生活でも3人にとってみれば奴隷の様な生活だというのも頷けた。

 でも、それをこの世界の人に言うのは失礼だからと話すのをためらったようだ。


 ちなみにケンゾーさん達がこの世界に召喚されたのは5年前でその時は高校1年生だったらしい。

 今20歳ということにも驚いた。もっと若いと思ったんだよね。

 この世界に来て未知のウィルス(?)が原因で何度も死にかけたと言っていた。マサヨさんのスキルのお陰で何とか生き延びられたらしい。これに関しては何を言っているのか僕はさっぱりわからなかった。

 あと言葉は頑張って勉強して覚えたらしい。とにかくこの世界に来て大変だったとのことだ。


 肝心の日本を参考にする点については、日本とこの世界はあまりにも違い過ぎてどう参考にすればいいか全然わからなかった。ただ目指すべきものは見えた気がする。

 勿論日本にも様々な問題点はあるらしいけど、スキルのない世界がとても眩しく見えた。というか、実際にキラキラしていた。天にそびえる程高い数々の建物。夜になっても暗くならない街々。魔物にも強盗にも怯えることのない町。見たこともない美味しそうな食べ物。快適で機能的な家。様々な娯楽を楽しむ人々。どれも眩しく見えた。

 この世界も日本のようになれるだろうか。僕は【アイテムボックス】を授かることが幸せな人生を送るための鍵だと思ってたけど、それがとてもちっぽけなものに思えてきた。

 だって日本ではスキルがなくてもあんなに素晴らしい生活が送れるのだから。

 

 ケンゾーさんによると日本も昔は国内でも沢山戦争をしてきたし、国内が統一されると外国と戦争をしてきたらしい。日本だけじゃなく世界中の国々が至る所で戦争をしていて人類の歴史は戦争の歴史だと言っていた。

 元居た世界では世界中を巻き込んだ大きな戦争が2度あったらしいんだけど、核兵器というとんでもない威力の兵器が登場したことで大きな戦争は抑止されるようになったらしい。

 意外だったのは日本はその大きな戦争で負けたと聞いて更に驚いた。戦争で負けてボロボロになったけど数十年で見違える程の復興を遂げたとのことだ。


 それならこの国だって日本のように大きな成長が出来るかも知れない。そんな希望が胸に湧いてきた。


「アーサー君がこの世界の抑止力になれば世界は平和になるかもしれない」


 ケンゾーさんのその言葉が僕の胸に脈を打った。

 日本の様な国を目指すには足らないものが多すぎる。それに国を変えていくには時間もかかるだろうし、沢山の問題もあると思う。まぁそういう難しいことは大人の人たちに任せちゃおう。僕は何でも出来るわけじゃないしね。

 

 でも「世界の抑止力」にならなれそうな気がする。

 そうなることで世界は本当にもっといい方向に変わるのかもしれない。


 そう思うと妙にワクワクしてきたのだった。

第二章がこれで完結です。

全く商いをしていませんが商王とはアーサーのことです。(念のため言っておきますね。本当に全然商いしてませんので念のため)

マイペースでやっていますが、もともと第4章くらいまでは構想を練っていたのでそのくらいまでは執筆を続けられたらなと思っています。

(というかそこまで行かないと書きたかった【商い】スキルが活躍しないので早くそこまで至りたいです。誰か代わりに書いてくれないかな……まぁ無理か)


続きが気になる、作者もっと気合い入れて書けや、という方は是非ブックマークの登録や作品の評価をお願いします。作者のモチベーションが爆上がりしますので間違いなく執筆に影響出ると思います。

甘口の感想やレビューも是非お待ちしています。


第三章以降も読んでいただけますと幸いです。

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