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第35 魔道兵器

◇アルバ◇

 ふむ。

 ようやく動いたか。


 して、「滅竜砲」と「機関銃」なる物で攻撃してくると。

 【感知】で感じ取れる魔力は……魔道具としては上々だが、我を滅するにはまるで足りんなぁ。


「撃てぇっ!」


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――

――ボシュウゥゥ――

――ボシュウゥゥ――

――ボシュウゥゥ――


 なっ!! 


 速っ!!


――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ――


 あ、危なかった。

 何だこの速度は?

 消費している魔力と釣り合わん。それにこの威力もだ。

 

 咄嗟に張った【障壁】から伝わる衝撃は想定をはるかに超えていた。 

 【障壁】にピシッ、ピシッと罅が入っていく。

 驚くほど小さな礫が凄まじい速度で次々と飛来する。


 魔法や魔道具での攻撃は、消費する魔力に応じてその威力を推し量ることが出来る。

 魔道兵器が消費している魔力を考えると、どうしてこの小さな礫にこれほどの速度と威力を持たせられるのか理解できない。


 今にも【障壁】が破られそうな勢いだ。

 すぐさま【障壁】を重ねて展開する。


――ドガァァァァン――

――ドガァァァァン――

――ドガァァァァン――


 これもか。


 続けざまに着弾した『滅竜砲』の威力はアルバにとってみればそう大した威力ではなかったものの確かに【爆轟】並みの威力がある。

 

 翼竜であれば一溜りもなかったであろうな。


 この攻撃も消費している魔力に対し、威力が圧倒的に高い。

 大した攻撃に思えなかったため、咄嗟だったこともあり【障壁】は大分薄くなっていた。


 重ね掛けして【障壁】を厚くしていなければ多少のダメージを負ったかも知れん。


――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ――

――ドガァァァァン――

――ドガァァァァン――

――ドガァァァァン――


 ……が、こういうものだと理解できえしまえば何の問題もない。

 何度攻撃されようとこの程度の攻撃でダメージは負わん。


 ただ、あの『神槍』だったか。

 あの魔道兵器の内蔵する魔力は中々侮れん。


――ゾクリッ――

 

 何か嫌な予感がする。

 主殿に【ブレス】を放ったときも同じようにどこか嫌な予感がしていた。


 この感覚は生を受けて以来2度目だ。

 まさか魔道具ごときが主殿に比肩するというのか?

 

 面白い。魔道具ごとき我が叩き潰してくれる。



 ふっ。いかんいかん。これは我の悪い癖だな。


 野生の勘が警鐘を鳴らしても、圧倒的強者であるが故に耳を傾けない。

 それが何を引き起こしたか、アルバはアーサーと戦った時のことを思い起こした。


 い、一応【障壁】は厚くしておくか。


「撃てぇ!!」

 その直後だった。

 『神槍』の魔道兵器に反応があった。


 反応のあった魔力は『機関銃』や『滅竜砲』と比べ物にならないほど大きい。

 とは言え、アルバを殴り飛ばしたアーサーの攻撃と比べたら10分の1もない。

 

 その瞬間一筋の光が走る。

 その光はアルバの首を貫いていた。


『グァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

『アルバ!』

 主殿の声が頭に響くが、答える余裕がない。


 凄まじい痛みが全身を貫く。そして全身の血が沸騰するかのように熱い。呼吸がままならない。

 喉が最も焼けるように熱い。


 全く力が入らない。

 

 こ、これは……?

 攻撃を……受けたのか?


 どのように攻撃されたのか全く見えなかった。

 全く理解が及ばない攻撃だった。


 思うように体が動かせず地面へと落ちていく。


――ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――


 城壁から歓声が上がる。


「まだだ、必ず息の根を止めるのだ。『神槍』の魔力充填急げ! 『滅竜砲』、『機関銃』続けて撃てぇ!」



◇鬼人族陣営:エイケツ◇

『グァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

『アルバ!』


 アルバ様の声にならない叫びと若の声が頭に響く。

 まさかのアルバ様の負傷に驚愕する。


『エイケツさん、今です。『神槍』が放たれ、攻撃が全てアルバに向いています。攻め込んで下さい』

『しかし、アルバ様が危ないのでは?』


『大丈夫! アルバはこれぐらいでくたばったりしない! 今は鬼人族のために動いて下さい。でないと体を張ったアルバの立場がないですから! アルバの面倒は僕が見ますから大丈夫です!』

『かたじけない。若とアルバ様から受けた恩は忘れません』

 

 若が見てくださるならアルバ様は大丈夫だろう。


 アルバ様は不器用だが中々情に厚い。

 短い付き合いではあるが、我らに犠牲が出ぬように演技までして魔道兵器に対処してくださったのは明白だった。


『総員、突撃! 必ず皇帝を討つぞ!』

――応っ!――


 【第十現魔法:夢幻】を維持したまま上空より飛来する。


「感あり! 皇宮上空に巨大な魔力を検知。数······およそ30! 敵襲です!」

「撃ち方止めぇっ!! 敵襲だと!? どこだ? 何も見えんぞ」


 ある程度近づくと敵の【感知】圏内に入るが、【夢幻】により空色の迷彩を施しているため敵の反応は鈍い。

 空色の迷彩であるため地上付近まで降りれば違和感が目立つが、飛翔する敵にそこまで接近を許せば通常時であっても対応できなかったであろう。ましてや今はアルバに集中砲火を浴びせている最中である。エイケツの率いる突入部隊は無傷のまま地上へと降り立ったのであった。


 城壁の金獅子師団、宮廷魔法師団に対処すべく鬼人族の半数は外に残り、皇宮内の皇室近衛兵団に対処すべく半数が突入部隊として地上に降りている。


 そしてアーサーは静かにアルバの傍に降り立ったのであった。

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