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【商い】スキルで気楽に行こうや  作者: 外波鳥
第1章 スキル胎動
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第3話 魔力がすごいらしい

「ばあちゃーん、帰ったよぉー!」

「お帰りアーサー。すごいね大物じゃないか!」

「へへっ」


 身を寄せた先、母さんの実家は農村で豊かな生活が出来るわけじゃない。食い扶持が増えてじいちゃんとばあちゃんは困ったかも知れないけど、それでも僕らを快く迎え入れてくれた。


 農村での暮らしは畑仕事でやることは沢山あるし、日々の生活を送るだけでも大変だ。僕くらいの歳の子は当然労働力として数えられている。


 じいちゃんとばあちゃんは二人共40歳を超えてるけどとても元気で、特にじいちゃんはムキムキだ。

 そのじいちゃんは狩の仕方を教えてくれた。まぁ、狩りといっても罠を仕掛ける簡単なやつね。


 農村では狩りをしてレベルを上げることが必須らしい。

 城壁に囲まれた街中ではそんな機会に恵まれなかったからこれは嬉しかった。


 街では、11歳から学校に行きそこで訓練を経てダンジョンにもぐったり、城壁の外で狩りをしてレベルを上げる。

 と言ってもそれは戦闘系のスキルを授かった子の話で、商人を目指す子はレベル上げは身を護る最低限に留め主に勉強ばかりする。


 8歳の子がレベルを上げるのはリスクもあるけど、農村ではそんな甘いことは言ってられない。でもこれが男の子にとっては嬉しい状況なわけだ。


 今のところはじいちゃんが罠を仕掛けてくれて、それに掛かったホーンラビットに僕が止めを刺す、ということを行っている。

 今日は3匹のホーンラビットを仕留めた。

 今晩は御馳走だね。


 お肉が手に入って家族皆がニッコリしている。


「じいちゃん、僕レベル上がったかな?」

「あぁ、一目瞭然だ。間違いなく上がっとる」

「そうなの?」


 おじいちゃんのスキルって確か【身体強化】だったと思うけど、何で見ただけで分かるんだろ?

 レベルって【鑑定】とかじゃないと分かんないはずなのに。


「が、正直想定外だな」

「想定外ってどういうこと?」


「魔力が有りえんほどに迸っとる」

「魔力が?」


 レベルが上がるとそれぞれの素質に応じて身体能力が向上する。魔法系のスキルを授かっているとレベルアップしたときに魔力が上がりやすいって聞いたことがある。ちなみに【アイテムボックス】は魔法系のスキルに分類される。【商い】は当たり前だけど分類がよくわからない。


 でも、何でだろ?

 僕のスキルは【商い】でしょ。魔力を扱うイメージが湧かない。


「その荒ぶる魔力を抑えんことには狩りにならん。獲物が尻尾巻いて逃げるぞ」

「そんなにすごい魔力なの!?」


「ああ、わしが今まで見た中で一番の魔力だ」

「ど、どうしたらいいの?」


「まぁ、慌てるな。魔力を抑えるなんざ野生の獣でも出来る。人間様にできねぇ道理がねぇ。時間はかかるが訓練すれば抑えることは出来る」

「そっか。それなら良かった」


 狩りができないとここでの暮らしが苦しくなるからね。

 何とか身に着けないと。


「それとな。筋力や体力も向上しとるぞ」

「そうなの!?」


「ああ、ホーンラビットを丸々一匹抱えて山を降りただろ。それも何の苦もなくな」

「そう言えば……そうだね。そんなに重くなかったよ」


「ふはは、これは将来が楽しみだ。体の半分ほどもある大物を抱えて『そんなに重くなかった』か。レベル1や2のガキが言える台詞じゃねぇなぁ。少なくとも商人の器じゃ収まらねぇだろ」

「えっ? それは困るよ。僕は商人になりたいんだよ」

「いやぁ、本当に将来が楽しみだ。アーサー自身の素質と授かった【商い】ってスキルは並じゃねぇな」


 どうやら僕がレベルアップしたのは間違いないっぽい。でも、今後の生活のためには魔力を抑え込む必要がある。


「それでじいちゃん、魔力を抑える訓練てどうやるの?」

「ああ、今教えとくか。まず、深呼吸して落ち着いた気持ちで目を閉じてみろ。そうすりゃ魔力を感じやすくなる。まぁ、暇を見つけてやってみろ。アーサーなら半月もかからずに感じられるかもしれんぞ?」


 じいちゃんの言葉に従って試してみる。


 目を閉じたら体の内側から湧き上がる温かいものを感じた。


「あっ、分かった。何か温かいものを感じるよ。これが魔力だね」

「はぁ? もう感じ取れたのか!?(魔力関連の訓練てのは年単位でやってくもんだぞ?)」


「それで、次は?」

「つ、次はだな。感じた魔力を自分の意志で動かす訓練――」

「あっ、動かせるっぽい」

「――っ!!(もう出来たのか!?)」


「どうしたのじいちゃん?」

「じ、自分の意志で動かせるなら溢れ出さないように抑え込むことも出来るはず――」


「本当だ。抑え込めた!! 良かったぁ、これで狩りに行けるね!」

「――っ!! 本当に抑え込んどる。というか、全く漏れ出ておらん。まるでそこに存在していないかのように魔力が感じられん! すごいぞアーサー!!(凄まじい精度の魔力操作。正に神童。この子は天賦の才を持っておる)」


 じいちゃんが褒めてくれた。

 狩のお荷物にならずに済んで本当に良かったぁ。


「のぅ、アーサー。抑え込んどるその魔力を極々薄く、大気に漂う魔力と同じくらいの濃度で拡散することは出来るか?」

「ん? どうかな。取り敢えずやってみるね」


 極々薄く。大気の魔力と同じ濃度で。

 

 意識すると、じいちゃんが言うとおり大気中にも魔力が含まれていることが分かった。


 それと同じ濃度で自分の魔力を拡散する……か。

 細かい魔力の操作は難しかったけど何とか出来た。


 そしてやってみて直ぐにじいちゃんが何をさせたいのか分かった。


「スゴイ! 目で見てないのに、世界が視える!」

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