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【商い】スキルで気楽に行こうや  作者: 外波鳥
第1章 スキル胎動
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第1話 授かったのは【商い】でした

 今日は待ちに待った8歳の誕生日。

 家族に囲まれて朝食を取りつつ、今日授かるスキルについて想いを馳せていた。


「アーサー、誕生日おめでとう。アーサーは何のスキルを授かるかな?」

「お父さんと同じ【アイテムボックス】が欲しいな。【鑑定】もいいけどやっぱり商人なら【アイテムボックス】でしょ?」


「ははは、そうだな。成功する商人は【アイテムボックス】持ちが多いからな。それなら強く願うことだ。真に願う気持ちとその者の素質に応じてスキルが与えられるという説もあるからな」

「じゃあ、お父さんの子供だから素質はあるよね? もし、【アイテムボックス】だったら次の行商に連れてってくれる?」


「だめよ。アーサーは優秀だし【アイテムボックス】を授かる素質は十分あるわ。でも冗談でも行っていいなんて言えない。行商には危険もあるの。8歳で行商なんて危険すぎるわ。あなたからもしっかり言ってください」


 母さんの目が鋭く父さんを射抜く。


「アーサーすまんな。リサの言う通りだ」

「ええ〜」


「でも、もう少し大きくなったら一緒に旅をしような。世界中の色んな所を見に行こう」

「分かったよ。仕方ないなぁ」


 父さんは商人で家にいることは少ない。

 寂しいと思うこともあるけど、そんな父さんの旅の話を聞くのは大好きで、大きくなったら商人になりたいと思ってる。

 

 同じ年頃の友達は冒険者や騎士に憧れて戦闘系のスキルを願う子が多い。僕も冒険者や騎士に憧れはある。強い人になりたいという周りの子たちの気持ちは分かる。

 でも僕がなりたいのは断然父さんと同じ商人なんだ。


 父さんは凄い。肉体的には強くないかもしれないけど、スキルで稼いだお金を困っている人や貧しい人のために使ってる。

 そんなわけで我が家はものすごいお金持ちってわけじゃないけど、不自由することなく暮らすことは出来ている。


 そして、父さんは忙しい合間を縫って僕の誕生日に時間を作ってくれた。

 何としても商人として役に立つスキルを授かりたいなぁ。


 授からるスキルは一つ。授かる機会も一生に一度。

 ここで人生が決まると言ってもいい。


 自分で言うのも何だけど、僕は毎日神様にお祈りしてるし、勉強も真面目に頑張ってる。時々ハナクソをほじって食べる以外はお母さんの言うこともちゃんと聞いてるし、弟や妹の面倒もよく見てる。


 だから神様。【アイテムボックス】が欲しいんです。伝説の【転移】が欲しいとは言いません(欲しいけど)。現実的なところで父さんと同じ【アイテムボックス】がいいんです。無理なら【鑑定】でも【真偽眼】でも【交渉術】でも構いません。でもやっぱり【アイテムボックス】が1番欲しいんです。


 神様お願いします。どうか僕に【アイテムボックス】をお与え下さい。



◇教会◇


「それでは、神授の儀を始めます。少年のお名前は?」

「ゲイリーとリサの子、アーサーです!」

「では、アーサー。この神授の水晶に触れなさい。神はあなたに相応しいスキルを授けて下さるでしょう」

「はいっ」


――ドクン、ドクン、ドクン――


 うぅ。緊張する。

 心臓が高鳴る。


 このスキルで僕の人生が決まる。

 神様どうか【二度寝】とか【口笛】とかは辞めてください。

 【アイテムボックス】をお願いします。

 【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】――


 ひたすら【アイテムボックス】と念じながら水晶に触れる。


――バチバチバチ――


 一瞬、身体の中を雷が駆け抜けたような感覚がして目の前が真っ白になった。

 水晶から凄まじい光が放たれた後、水晶に文字が浮かび上がる。


――おおおおおおおおおおおぉ――


 周囲から歓声が上がる。


「おお、何という光だ! 神授の儀でこれほどの光を見たことがない!!」


 光が強いとすごいスキルを授かるとことが多いと聞く。

 祭司様の言葉に胸が高鳴る。


「アーサーに授けられたスキルは――」


 スキルはなんですか!?


「あ···【商い】···」


 商い?


「祭司様! 【商い】というのはどんなスキルなのでしょうか?」

「う、うん。私も初めて見聞きするスキルですが――スキルの名はスキルの本質を表すものです。商いができる? とかかな?」


 祭司様の目が泳いでいる。

 初めてのスキルなら分からなくても仕方ない。

 仕方ないけど――


「そ、その【商い】のスキルが無くても商売は出来ると思うのですが、何か商売の役に立つのでしょうか!?」

「アーサー。あなたは商人になるといいでしょう」


「はい、それは元よりそのつもりです。そしてスキルはどんな役に――」

「今まで世に出なかったスキルです。どのスキルにも言えることですが、役に立たないスキルなどありません。しかしそのスキルを輝かせるか、埋もれさせるかはあなた次第です。努めて励みなさい」


「は、はい」


 僕のスキルは【商い】だった。


 祭司様の言われた通り、スキルの名前はスキルの本質を表す。つまり商いが出来るってことなんだと思う。


 でも、それってスキルが無くても出来ることだよね?


 初めてのスキルということであれば何か特別な効果があるのかも知れない。【商い】は物凄い可能性を秘めてるかもしれない。


 でも、単に商いが出来るというだけのスキルかもしれない。


 期待を捨てたわけじゃない。

 神様が与えてくださったスキル。役に立たないはずはない。それを知ってはいたけれど···不安と落胆は拭えなかった。

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