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83・そして隣国へ

「まあ夜と言えば恋バナだよね」


断言しよう。このリオは浮かれている。


「初めて聞いたよ」


リオの言葉に冷静にそう言ったのはアトリアだった。

ちなみに僕も初めて聞いた。

リーン領で用意して貰った宿、部屋は男女分けて三人ずつ泊まることにした。

ちなみに使用人はまた別で騎士は交代で見張りだ。


「リオ好きな人でも出来たの?」


一応確認しておく。リオの初恋の人はリオの性格が捻くれる原因だからね。


「リギル以上にいい人がいない…」


「ヴェラみたいなこと言わないで」


さてはこいつ恋バナしようとか言って僕らの話聞きたいだけでネタが無いな?

へへぇーとか言いながら照れたフリして誤魔化している。

とりあえず好きな人ができたわけではなさそうだ。


「…まあリギルのはどうせシャウラちゃんとののろけになるから聞きたかないんだけど…」


「だったら何故…」


と、言いかけてハッとアトリアの方を向いた。

アトリアはきょとんとしている。


「アトリア、ミラちゃんどう思ってるの?」


やっぱり…。リオはそれが聞きたかったみたいだ。

まあミラは本人は否定してるけどどう見てもねえ。


「どう、って?いい子だと思うけれど」


アトリアが首を傾げる。


「じゃなくて〜恋愛的な好き、みたいなのだよ〜」


リオがじれったそうに両手をブンブンした。


「…、そういうのはよく分からないかな」


アトリアが困ったようにそう言いながら笑った。

なんだかどこか寂しげに見える。

それを見てリオもそっかぁ…と小さく呟いた。


「アトリアは考えすぎなとこもあるからそんな色々気にしなくていいと思うよ」


アトリアに向かってまあ、僕もなんだけどねとへらっと笑う。

アトリアはくすっと笑うと気をつけると答えた。

リオはあんまり何も考えてなくて羨ましいよなぁと思ってリオを見る。


「今オレのこと頭空っぽだと思って憐れんだでしょ」


リオがそう言ってムッとした。


「だいたい合ってる…」


鋭いのか鈍いのかよく分からないヤツだ。

リオはもぉー!と言いながら僕をべしべしした。地味に痛いんだけど。

その様子を見ながらアトリアがくすくす笑っている。


「それより建設的な話をしたほうがいいと思うけどね」


「あー…」


そういえばリオには聖女については一切伝わってない。

アトリアの言葉に考え込んでるとリオが何何?と近づいてきた。いや近えよ。


「今からちょっと衝撃的な話するけどいい?」


僕のその言葉にリオは首を傾げた。





次の日には僕たちは隣国の首都近くまで来ていた。

目的地は首都…より少し郊外の屋敷だ。

もう一日かかるかと思っていたけど馬車の性能が良いせいか、休むことが少なく早めに来れた。


ちなみに僕たちが暮らしている国はプラネテス王国という。

勇者が創り上げた勇者の国。

一方隣国はタラッタ王国といい、元々は人間の国だが魔族を受け入れることで繁栄してきた。

そのため魔族と人間の比率は半々でプラネテス王国ではあまり見られない獣人を筆頭にした亜人種も見かける。


「お兄様!もふもふのお耳の生えた人がいますっ」


「身を乗り出してはダメだからね、ヴェラ」


馬車の窓から上半身を投げ出すような勢いでキラキラした瞳で外を見つめるヴェラにそっと注意をした。

後ろ頭からもヴェラのわくわくが伝わってきてかわいい。

シャウラの方も興味深そうに外を見ている。

魔族、亜人、人間が混在している町の様子はファンタジーRPGのようだ。

僕もちょっとだけワクワクする。


「ヴェラ様、あれは亜人の方々ですわね」


「あじん?」


「人間に似た人間とは違う種族かな」


正直定義が難しいのだけど色々調べたりユピテルに聞いたところ人間側の神が生み出した種族であるらしく、魔族とは全く別。

人間より身体能力が高い種族が多く、獣人が一番の例だ。

人間に似た見た目の人間じゃない種族だ。

魔族にもケモミミが生えた種族はいるのだけどあっちは魔物がベースらしい。見分けは難しい…。

亜人は基本的に魔力を持っていないらしく、エルフに該当する種族はこの国には存在しなかった。

エルフは相当珍しいらしく、ほぼ伝説みたいな扱いだ。秘境にエルフの里があるという話もある。

エルフは精霊と人間の中間らしいから会えれば有益な話を聞けたりしそうだけどなあ。


「ヴェラもちょっと勉強したんじゃないかな」


「したけど難しくて…」


申し訳なさそうなヴェラに対して、まあそうだよな…と頷く。まあこの世界において種族は結構多い。

ざっくり分けると魔族、人間、亜人なのだけどユピテルみたいなどれにも該当しない存在もいればそのざっくり分けられた中にもたくさんの種族がいる。


「まあだいたいのことが分かれば大丈夫ですわ」


「ふふ、そうだね」


シャウラと二人で笑いかけるとヴェラは笑顔で頷いた。


「タラッタ王国へようこそいらっしゃいました。ユレイナス公爵家御一行様ですね」


とある屋敷の前で馬車を止めて降り、全員揃うと出迎えてくれたのは兎耳の獣人だった。

ぴこぴこと動く長い耳をヴェラは興味深そうに見つめている。


「アスピディスケ侯爵様から出迎えを仰せつかっております。この度はご滞在に我が家屋敷をお選びいただきありがとうございます」


深く頭を下げるウサ耳の執事。

アスピディスケ侯爵というのはこのタラッタ王国に父様が若い頃留学しに来た際に仲良くなった古くからの友人らしく、隣国に旅行に行く話になったときわざわざ手紙を出してくれた。

それで向こうから我が屋敷に是非泊まってくれと言われたのだ。

ここは本邸ではなく別邸なのだが、それもその方が気兼ねしないだろうという気遣いらしい。


「いや、こちらこそ部屋を提供していただきありがとう」


「とんでもありません。侯爵様はユレイナス公爵様には大変お世話になったそうなのでほんのお礼のひとつだと申しておりましたよ」


執事がニッコリと笑う。このアスピディスケ侯爵家についてはゲームのシナリオ中、両親が死んだ際、リギルやヴェラを手助けしようとしてくれたという話があった。

リギルが拒否した上で隣国なので手紙を出してくれたくらいだったみたいだが。

まあそういう理由もあるので信頼はできると思う。


「荷は使用人どもでお運びいたします。しかしどなたのものかなどは分かりませんのでそちらの使用人もお借りして宜しいでしょうか?」


「もちろん。メイドが三人いるから彼女たちに聞いて」


「分かりました」


ウサ耳執事は深く礼をすると、近くにいた違う使用人に目配せして荷運びの準備をさせた。


「お部屋の準備が整うまでどうされますか?応接間でお待ち頂いても大丈夫ですが」


僕がその言葉にヴェラの方を見るとヴェラの瞳がきらきらしていて、完全に町を見て回りたいと言っているようだった。


「僕らは町を見て回りたいかな、みんなはどうする?」


「オレはくたくただから休みたい」


いの一番にリオがそう言うとミラがそれに同意した。

リオはあまり元気がない。昨日の話が衝撃過ぎたらしい。

アトリアもでは私もと言うので三人は他の使用人に案内されて屋敷の中、応接間に向かって行った。


「シャウラはいいの?」


「はい、ヴェラ様とリギルにお供いたしますわ」


シャウラは柔らかくニコッと笑う。シャウラも居てくれたらすごく嬉しいのでありがとうと答えた。





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