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82・みんなでわいわいお祭り

「まあ!見てくださいお兄様!きらきらです!」


すっかり日が落ちた頃、町がきらきらと飾り付けられた。

この辺り、隣国との国境前のリーン領の領主であるリーン辺境伯は雷の魔法属性の加護持ちらしく、祭りの時期になると魔力で光る電球のようなものが飾られている。

まあ前世風に言うとイルミネーションってやつだ。

祭りのためにわざわざ領主が作っているらしい。

電球の下は結構明るく、足元もそんな不安ではない。


電球は棒を立てて紐を張り、手の届かない宙に飾られている為、危なくもなさそうだ。

一応確認のため目立たないところでヴェラが近づいてみたが、電球の中が光っているということで魔道具の中判定らしく、ヴェラが魔力を吸うこともなかった。


「綺麗だね」


きらきら輝く灯りの中、ヴェラは嬉しそうにくるくると回るようにして辺りを見回している。

その様子をみてシャウラもクスッと笑う。


「ヴェラ様は可愛いらしいですわ」


「ふふ、そうでしょ」


「えー?リギルここは君の方が可愛いって言うところじゃない?」


「?同列に可愛いけど???」


リオのセリフにそう答えるとリオがええ…と引いたような顔をする。

シャウラはリギルらしいですわとニコニコしている。さすが僕のお嫁さん(将来の)。


「みてみてユピテル!あっちのは何!?」


「ヴェラ様引っ張らないでください。慌てるとお怪我されますよ」


ユピテルが色々詳しいので、ヴェラはユピテルをぐいぐい引っ張ってあれやこれや説明させている。

いつも余裕そうなユピテルだが、ヴェラにああいう風にされると少したじたじしている。

まあ、ヴェラの近くにいるのは気に食わないけどヴェラが嬉しそうだから今日くらいは許そう。


カラフルな屋台が並んでいて、あまり見たことのない料理もある。この辺りの特産品とかも売っているようだ。


「ユピテル様とはヴェラ様も仲が良いのですね」


シャウラの僕とユピテルも仲良いみたいな言い方はちょっと引っかかるけどそう見えているんだろうか。


「まあユピテルは小さい頃から仕えてくれてるから…、昔からの使用人もだけど、家族に近い感じかな……」


「使用人が家族……」


シャウラがユピテルとヴェラの様子をじっと見る。

この場合、悪役令嬢的なら使用人ごときを家族だなんて!ってことだろうけど、シャウラはいい子だからそういうのではないだろう。

シャウラは使用人からも軽く見られてきたからそういう関係性というのが不思議に感じるのかもしれない。


「シャウラもウチに嫁いできたら、使用人のみんなもユピテルも家族同然に接してくれるよ」


シャウラにそう微笑むとシャウラが少し赤くなった。

リオが隣でヒュー!プロポーズゥッ!とか茶化している。めちゃくちゃうるさい。

こら、とアトリアに軽く叩かれた。


「ユピテル様をヴェラ様が好きって訳では無いのですね」


「は?」


ミラが言った言葉に思わず過剰反応した。そのままミラの方を見るとミラがヒッと小さく悲鳴を上げる。


「顔怖いよリギルッ」


焦ったようなリオの声に反応してハッと顔の筋肉を緩めた。

般若みたいな顔になっていたかもしれない。危ない。

リオが僕の顔が戻るのを見てため息を吐いた。


「もう、ヴェラちゃんの恋愛関係になるとすぐに怒るんだから」


「いや、ヴェラにはまだ早いでしょ」


「そうかな?そろそろ好きな人が出来てもおかしくはないと思うよ」


アトリアがいたずらっぽく笑った。アトリアが僕をからかっているのは分かってる。分かってるぞッ…。


「お兄様、いじわる言ってはダメですわ」


「すまない。ふふ、アルケブ子爵はリギルのお眼鏡には敵わないのかな?」


「ええ?ううん、ユピテルは優秀だけど…」


きっとヴェラがユピテルを好きになったとしてもその恋は絶対に叶わないだろう。

ユピテルは千年以上(少なくて)生きる唯一の邪竜。楽しい、嬉しい、悲しいなど感情がないわけではないみたいだし、執着や憐憫なども恐らく無くはないだろう。

でも恋愛に関しては分からない。恋する気持ちが彼にわかるかと言えば、無いんじゃないだろうかと思う。

人間を気に入ったとしてそれは恋愛ではなく、ただの愛着、つまり人間のモノに対するソレだろう。


「歳が離れ過ぎてない?」


とりあえず無難な答えを出す。

いや、邪竜なんだよ〜実はさ〜とは言えないし。


「そういえばユピテルって何歳なん?見た目変わってなくない?」


リオは小さい頃からうちに来てるからそう思っても仕方ないだろう。実際変わってないし。


「うちに来たのが十九だったから、今は二十六だよ」


本当は二千云々っぽいケド。


「使用人の家系とはいえ、それは凄いね。そんな若くて公爵家に仕えるなんて」


「お父さんが元王家の執事で父様が使用人を探してるって聞いて彼の息子ならって推薦してくれたらしいよ」


まあそのユピテルのお父さん、存在しないだろうけど。

でもアルケブ子爵家はだいぶ前から存在していたことになっている。

ゲーム設定では普段は青年の姿だけど見た目は自由自在ってあったからその関係かもしれない。

幻覚で違うように見せる人間の変装魔法と違って骨格から変えられるのは邪竜と魔族などの魔法だけだ。


「僕が専属使用人と武術と学術の先生が欲しいって話をしたら何故か全てを兼ね備えたユピテルが来た」


そもそも別々に考えていたのに今考えると父様って意外に親バカというかなんというか…。

面倒とか人件費とかではない。そんな人探す方が面倒だしお金もかかるのだから。

僕への負担や何やらを考えて王家に相応しい人物がいないか打診したのだろう。


「ヴェラが成人する頃には30代前半だよ?ちょっとなくない?」


「まあ、確かに?」


リオが首を捻る。それにユピテルは仕事人間だしねと付け加えておいた。

ミラはあんなこと言ったがヴェラはユピテルを好きというより兄のように慕っているのもよくわかる。


「ヴェラは僕みたいな人が好きなんだって」


「それは…将来が心配だね……」


「なんだと」


リオは僕をなんだと思ってるんだ?なんでそんな憐れんだ顔をするんだムカつく。

追加でご愁傷様だわとか言ってきた。


「リギルみたいな人というのはなかなかハードルが高いね」


アトリアがクスッと笑う。アトリアの中の僕もシャウラ同様美化されてるらしい。


「妹狂いのシスコンお兄ちゃんかぁ、確かにハードル高い。なかなかいないもん」


しみじみリオが呟くのでついにデコピンした。

痛がるリオを見てアトリアがくすくす笑っている。

ミラがあわあわしながらリオを心配すると心配されて嬉しそうに頬を緩めた。こいつ。


「ふふ、リオ様とリギルは気安くて仲が良いのですね」


シャウラもくすくす笑いながら僕にそう言った。

まあ気安い仲ではある。


「…、幼なじみみたいなものだしね…」


「リギルが仲良いを否定しないだと…!?」


リオうるせえ。


「おや、ダンスをしているね」


そう言われてアトリアの目線の先を見ると、流れた音楽に合わせて周りの人たちが思い思いに踊っている。

貴族とは違う自由で楽しそうなダンスだ。


「シャウラ、一緒に踊る?」


シャウラに微笑んで手を伸ばす。シャウラはぱあっと表情を明るく輝かせた。


「…はい!」

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