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78・カミングアウト

集合時間30分前。シャウラとアトリアは少し早めについた。

あとはリオだけだけどあいつは絶対ギリギリだな。まあリオの性格からして仕方ない。


「……」


ミラは恥ずかしいのが収まらないのかソファの端の方で小さくなっている。

その様子をアトリアはニコニコしながら見ていた。

一体どういう心境なんだか。


「ミラは本当にお兄様が好きなんですの?」


シャウラがこそっと聞いてきた。いつの間にか呼び捨てになってるから随分仲良くなったらしい。

微笑ましいけどちょっと羨ましい。


「多分ね」


僕と会話してるときと明らかに態度が違うし、相手がイケメンだから緊張してるとかじゃないだろう。

僕はヴェラのお兄ちゃんなので当然イケメンです!


「ヴェラ荷物の準備終わりましたっ!」


応接室のドアがばーんと開いて元気にヴェラが登場した。可愛すぎか。

みんなが一斉にヴェラを見たので注目を集めてしまったヴェラは恥ずかしくなったのか、ハッとして顔を真っ赤にするとそっとドアを閉じた。


「天使か…?」


俯いていたはずのミラがドアの方を見つめながら呟く。いやほんとそれな。

僕は立ち上がってドアを開けるとヴェラがひゃうっと声を上げた。輪をかけてかわいい。


「ヴェラ」


「あうう…はしゃぎ過ぎて淑女としてあるまじきことをしてしまいました…」


ヴェラは声をかけると恥ずかしそうにもじもじする。


「みんな気にしてないから大丈夫だよ」


そう言って微笑むとヴェラはコクリと頷いた。

ヴェラと一緒に部屋に戻るとみんな暖かい目で見ている。


「ヴェラ様、こちらにいらっしゃいまし」


シャウラが自分の隣をぽんぽんと優しく叩いて座るように促すとヴェラはぱあっと表情を輝かせていそいそとシャウラの隣に座った。

シャウラは微笑みながらヴェラの頭を撫でる。


尊い……。


「リオくん来ましたー☆おっはよー☆みんなー☆」


僕も座ろうと思ったとき、再びドアがばーんと開いた。

驚いてそちらを向くと、やっぱりリオだ。

リオを出迎えたメイドが後ろで慌ててるから馴染みがあるとはいえ勝手に入ってくるのはやめてあげてほしい。

さっきのヴェラと全く同じだったので、さっきのことを思い出したのか、ヴェラが両手で顔を覆って恥ずかしがっている。


「おっ、オレが最後かぁ」


リオは応接室を見渡す。天真爛漫すぎる。


「まあ、五分前だからリオにしては早く来たほうか…」


ピッタリか遅れてくるよりは全然大丈夫だ。


「みんなが早すぎるんだよう」


リオがぶーと頬を膨らませた。まあたしかにみんな真面目だからそれもあるんだけど。

いやミラは早すぎたから逆に良くないけど。


「まあどちらにしろ30分時間を早く伝えたからいいんだけどね」


僕がため息混じりにそう呟くとみんなキョトンとしていたけれどいち早く反応したのはリオだった。


「えっ!?じゃあ、もう少し寝てれば良かった!」


ぶん殴るぞ。


と、言いたいのを堪えて……、僕はこほんと咳払いをする。


「…、旅行に行く前に大事な話があるんだ」


「えっ?大事な話?」


「リオ様、こちらへ」


驚くリオをユピテルが座るように促すと、リオは大人しく席に着いた。

僕がこれからする“大事な話”はもちろんヴェラについての話だ。

ユピテルをチラリと見ると、ユピテルは頷いて部屋の外に出た。話が漏れないようにドアの前で見張りをして貰う予定だ。

僕もヴェラの隣に座る。ヴェラを挟んで向こうからシャウラが僕を見つめているので、にこりと笑いかけてから、前を向いた。


「これから話すことは、他言無用でお願いしたい。みんなを信用しているから話すことだ」


僕のその言葉にリオでも真剣な顔つきになった。


「…、もしかしてリギルが転移魔法陣を使いたくない理由かな」


アトリアはさすがに聡い。まああの時は僕も焦っていたから様子がおかしく感じでも仕方ないけど。

僕は返事の代わりに黙って頷いた。


「やっぱり、そんな気はしていたよ」


「話すかどうか悩んだんだけど、シャウラが僕を信じてくれてるから、僕もこれ以上黙っていたくなかったんだ」


僕はそう言ってシャウラの方をちらりと見た。

シャウラは私ですか?と呟くと不思議そうにしている。


「シャウラは理由も聞かず僕の味方をしてくれたからね」


「…、婚約者なのですから、当たり前ですわ」


シャウラが少し恥ずかしそうに顔を逸らす。


「……、魔法陣が使いたくない……というより、使えないどころか使うと危険かもしれないからだ」


「あっ…、ヴェラのせいですか!?」


ヴェラがハッとして叫んだ。僕はしっとヴェラの口に人差し指を当てた。ヴェラは困った顔をしている。

あまり大きな声を出すと外に聞こえるよ、と言うと少しだけしゅんとした。


「ヴェラちゃんのせい?」


アトリアが首を傾げた。リオやシャウラもヴェラを見ている。

事情を知っているミラは察したのか真剣な顔つきで黙っていた。


「ヴェラは魔力枯渇症なんだ」


「まりょくこかつしょう…?」


まあ事例も少なくあまり知られていない病気なのでリオが知らなくても無理はない。

シャウラも知らないみたいだが、アトリアだけがそれを聞いて険しい顔をした。


「なるほどね」


「魔力枯渇症ってなんですの?」


「…、身体が魔力を吸い上げる病気です。吸い上げたのはいいものの、すぐ身体を伝い大地に魔力を還してしまうので、永久に吸い上げます。人間は生活にはさほど支障はありません」


「詳しいんだね」


「い、色んな文献を読んでるので」


アトリアがにっこり笑ってミラを見ると、ミラは恥ずかしそうに顔を逸らした。


「ミラ嬢の言う通り、魔力枯渇症は魔力を吸う病気だ。恐らく人間や魔道具など器に入った魔力は勝手に吸わない。…でも、大気中の魔力や魔道具や人間が出した魔力は吸い上げる。だからヴェラの側にいると使った側から魔力を吸われてしまうから、魔法も魔道具も使えないんだ」


「つまり、魔法陣も起動した途端にヴェラちゃんが魔力を吸い上げて、起動しないか移動の途中で魔法が停止してしまう可能性があるんだね?」


「アトリアの言う通りだ。だから転移魔法陣を使うわけにいかなかった」


僕がそう言うとみんながしんとした。きっと思うところが色々あるに違いない。

ヴェラが困ったように僕を見つめているので優しく撫でてあげた。


「よく分からないけど魔法陣を使うのが危ないってのは分かったよ」


リオが頷く。いやよく分からないんかい。

ため息を吐くと僕はもう一度、魔力枯渇症についてと問題点や他言無用な理由について細かく話し始めた。






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