表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/174

74・状況整理

とりあえず、いまの状況をまとめてみることにした。


聖女は攻略対象含むクラスメイトの男子に魅了スキル(上位スキルまたの名をギフトと思われる)をかけていて、攻略対象に対しては強く魅了をかけている。

そのうち、カペラ・ケレス、シリウス・ケレスの二人は浄化と思われるスキルで魅了を解いた。

でもそのことで他の人には重ねがけしている可能性がある。


まだ魅了スキルをかけられている疑いがあるのは、まずはレグルス・アステロイド。

聖女のために魔物を使って何かをしている可能性が高い危険人物だけど、魔族だから本当に魅了がかかっているかは分からない。

次にアルメイサン・ルナ・プラネテス。第二王子であるが基本引きこもりのため状況が確認できず、魅了されてるか不明。でも全く来ない訳ではないのでチャンスはゼロではない。

最後はアルファルド・サン・プラネテス。王太子で第一王子。ユピテルがイザールから聞いた話からも一番深く魅了をかけられている可能性がある。


聖女が魅了をかけている事が何がまずいのかというと、攻略対象がレグルス除き国の主要人物に将来なり得る存在だからだ。

つまり聖女の言葉ひとつで国が傾く可能性があるということ。

レグルスは伯爵家出身だが悪魔族が本物のアステロイド伯爵家を洗脳してレグルスを嫡子として引き取らせた。バレないようにするため、地位はあれどあまり王家とは関わりがなく、そこまで影響力のない家だ。

とはいえレグルスも魔族として力(この場合権力じゃなく物理的な)があるため放置はできない。


そして聖女の魅了を解くことについて。

ケレス公子たちは最初は偶然魅了を解いてしまったけど、アトリア同様慎重に動くはずだからいきなり魅了を解いてもとりあえずの問題はなかった。

しかし、アルファルドやアルメイサンといった王族に融通が効くかと言えば、アルメイサンはともかくアルファルド、王太子は絶対に許さないだろう。

王太子が魅了されていたともなれば、聖女がただちやほやされたかっただけだとしても周りや王太子はそう思わない。

国を乗っ取るだの王太子を害するつもりだったのだろうなど憶測が飛び交い、最悪王族派の貴族たちからは聖女を処刑せよと声を上げるだろう。


そうなると問題なのは教会及び教会派の貴族たちだ。

聖女を処刑するなど絶対に許さないに違いない。むしろ王太子たちのほうが聖女を害するために嘘をでっち上げたことにするかもしれない。

聖女を敬い庇護する教会と勇者の末裔である王族、その二つの派閥の仲は良好ではあるがこれがきっかけで崩壊し、最悪内乱になりかねない。


教会というのは血筋ではない聖女を守るための割と独立した権力であり、王族に匹敵する発言力を持っている。

まあ聖女を信仰するか勇者(王族)のどちらをより重要視し、信仰するかの話ではあるのだけれども。


解決するに当たっては王太子の魅了を徐々に解くことだ。

それにはヴェラのスキルをしっかり鑑定して使い方を学ぶ事と聖女が王太子に接触しないように協力を求める、もとい、説得する必要がある。

徐々に解けばただ恋愛が冷めたと錯覚させることは可能だろう。元々スキル返しを持っている王太子は魅了にかかった経験がないから急でなければ誤魔化せるはず、ということだ。


「ふむ、それを私に話して良かったのですか?」


ユピテルが淹れた紅茶を飲みながら纏めた考えを整理するためにユピテルに話すとユピテルはそう言って首を傾げたのだった。


「まあ、ユピテルはだいたい把握しているし、雇い主は僕だから守秘義務があるだろ」


「ふふ、確かに、最近はリギル様が領地経営の手伝いをしたことに対する給金から私の給金が支払われているので、私は完全にリギル様のものです」


元々リギル様の専属として雇われましたしね、とユピテルは付けたす。

しかしその言い方はどうなんだ?と思った。

最近も空いた時間に領地経営の資料のまとめやお金に関する管理はしている。


「しかし改めると面倒なことになってますね」


「まあ、彼女は軽い気持ちでやったんだろうね」


正直逆ハーとか言って国の主要人物(将来の)たちを弄べばどうなるかなんて目に見えていただろうに。

彼女は盲目だったみたいだ。


「それで聖女様は魅了を止めるから代わりにリギル様に婚約を迫ったと…、ふむ、見る目だけはありますね?」


「いや、そうでもないでしょ」


今まで遊んでた玩具に飽きてきたから次に僕が欲しいというだけに僕には見える。

それともただ彼女は寂しかったんだろうか?

僕にはヴェラがいたけど一人きりで転生してきたと思っていた聖女にとって同じ転生者の僕がどういう風に見えていたのか。

彼女が他をゲームのキャラだと主張するのもそのせいで一人きりだという感覚があったのかもしれない。

前世を覚えているのに誰にも共有できない寂しさというか…、いや、そんな繊細には見えないな。


「…、ここまで拗らせておいて結局丸投げしたいんだよ」


「まあそうとも取れますね」


他にどう取れるというんだろう…。


「しかし行動が早いですね…」


ユピテルがボソリと呟いた。

あ、なんか知っているなコイツ。そういえば聖女の世話係のカフを通して向こうの状況を把握しているんだった。

とはいえコッチから聞く訳にはいかないな。


「まあなんというか考えなしなのは確かですね」


「まあ、だよね」


特に(今は)悪さをしていないユピテルだって自分の道楽(人間観察)のために万全を期してるっていうのにな。

ユピテルは何か楽しそうに紅茶のお代わりを淹れている。


「どうぞ」


「ありがとう」


そう言えばユピテルのお茶はすごく美味しいのだけど、同じお茶の葉を使っても僕には再現出来ないんだよな。

ユピテルのお茶に胃袋を掴まれてるというか、やっぱりユピテルのお茶を飲むのが一番落ち着く。

割と混乱というか、気持ちがこんがらがっていたんだけど、ユピテルに整理した話を話した事とお茶のおかげでなんとか気持ちが落ち着いた。


「もう聖女様を始末してしまえば良いのでは?」


「物騒なこと言うんじゃありません。聖女が急に居なくなったら騒ぎになるでしょ」


「ふふ、冗談ですよ」


ユピテルがくすりと笑うが、ユピテルならマジで出来そうだから余計にシャレにならない。


「私の主がリギル様で良かったです。カフは大変ですねぇ」


「君の弟でしょ…」


まるで他人事みたいに言うユピテルに呆れた。

たしかカフとイザールは双子だけどユピテルとの血の繋がりはなく、ユピテルが眷属にしたことで竜の力を手に入れ竜人になった。

元々は魔族なようだけどなんの魔族とかそこは言及されていない。

だから元は他人ではあるんだけど。


「まあ若いうちに色々経験を積むのは悪いことではありません。聖女様もまあ今回はやらかしましたが、今後生きていくなら経験を糧にして真面目になるやも知れませんよ。…反省すれば、ですから、反省する機会は必要ですが」


「反省する機会ねえ…」


まあ確かに僕らが上手く丸く収めてしまえば反省する機会は奪ってしまうかもしれないけれど。

そもそも説得できるかも分からないのにそこまではさすがにハードルが高い。

説得する過程で上手く反省を促せればいいんだけど…。難しい…。


「そういえば聖女様は魅了をやめてあげてもいい、と仰っていたんですよね?もしかしてかけるだけで解けないのでは…」


「…、それは僕も思った…」


「全く、世話の焼ける聖女様ですね」


「いや、本当にそう……」


僕は深くため息を吐いた。本当にまだまだ前途多難だ。

反省させる魔法とかあればいいのに…。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ