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71・魔力枯渇症について

「なんか面白いことになってますよリギル様」


「面白いことって?」


学園に行く途中の馬車でユピテルが言ったことに思わず聞き返した。

聞けば執事見習いをしている方の弟(弟たちが定期的に手紙をくれるらしいのだが)のイザールが王太子の部屋の掃除を時折任されるらしい。


「王太子の部屋は聖女の肖像画でいっぱいらしいです」


「マジ?」


想像してみてそれはやべえなと思った。

残る攻略対象で魅了にかかってる疑惑があるのは王太子に第二王子(引きこもりだからわからん)とレグルスのみだ。

しかし王太子に関してはベタ惚れとかの領域じゃなく最早信仰に達しているらしい。怖すぎる。


「やっぱりこのまま放置は良くないかなぁ…」


「でもまあ下手に手も出せませんしね?」


「それなんだよなあ…」


僕を介してもヴェラのスキルが多少発動するのなら僕がまず接触する手もある。

条件としてはまず触れる必要があるのだけど。

ヴェラと接触させるのはマジで高難易度だ。ていうか無理に近い。

だから何か方法を考えないといけない。


「王太子といえばシャウラ様が王太子妃候補を下りたらヴェラ様が推薦されると思っていたのですが…」


「地位的には妥当だけど、シャウラの婚約者は僕だからね」


低いとはいえ王位継承権を持っているユレイナス公爵家。

ヴェラが王太子と婚約ともなればさらにユレイナス公爵家が力をつけることになりかねない。

そもそも婚約者候補は8歳ごろに選ばれて候補ってだけでも王太子妃教育を受けさせられる。

ヴェラは今12歳だから今から始めても出遅れだし、他の貴族の反発もあるだろう。だからか打診すら来る気配はないのだ。

今の状況ならもっと優秀な侯爵あたりの候補から選ぶのがいいだろうな。

まあ万が一ヴェラに打診が来ても断るだろう。

父様もヴェラが婿養子とって僕の仕事手伝うって言った話聞いてヴェラが嫁に行かない!って喜び狂っていたし。


「ふむ、なかなか面倒なのですね」


ユピテルは詳しいようで時折分かってないところもあるようだ。


「そういえば、隣国には魔力枯渇症について調べている医師もいるとか。ついでに尋ねてみては?」


「え、そんな奇特な人いるんだ…」


魔力枯渇症は本来は魔族特有の病気で発症したらすぐに…といっても個人差はあるが、一週間以内には死ぬ。

まあ先天性なのでつまり生まれて一週間保たないってことだ。

だから原因もわからないし、調べる余裕もない。

人間でも稀に発症するが平民ならまず分からないし、貴族でも魔力がないだけと判断されたりする。


「リギル様もヴェラ様の近くにいても魔力を吸われる感じはないでしょう?でも魔法を使えば使ったそばから吸収されて大地に流される……、色々条件や特徴を把握しておけば治せなくても最悪誤魔化す方法くらいは分かるかもしれません」


一理ある、と思う。

確かに魔力枯渇症、身体の外に出た魔力は吸ってしまうけど体内の魔力を奪ったりはできない。

ユピテルに初めてヴェラの魔力枯渇症について話したとき身体から魔力が流出する感じがするなんて言ってしまったのだが、人間から直接吸い上げるようなことはなかったのだ。

でもユピテルはあれが詭弁だと分かってるからあえて触れない。資料や文献が少ないせいで間違ったことを言ってしまった。


魔力の暴走は体内の魔力が無意識に放出されて周りや自らに負担や危害を加えてしまうのでヴェラの魔力枯渇症は有効なのだけど。

それなら根治は出来なくてもヴェラが大気の魔力を吸わないようにどうにかできる方法があるかもしれない。魔道具とかで。

ないなら作ればいい。病気の原理さえ分かれば。


「うん、会ってみようかな」


「では詳しく調べておきますね」


ユピテルがニコッと笑う。なんだかんだ助けられっぱなしだ。

ゲームでは邪竜って呼ばれていたけど実は本当はめちゃくちゃ良い竜だったり?


「しかし、魔力枯渇症を調べるなんて珍しいね。魔族なら絶対死ぬし人間なら命に関わりはないからってほったらかしになってるのに」


「どうやら魔族の医者の方のようです。すぐ対応出来るような治療法を見つけて魔力枯渇症の子供を救いたいんでしょうね。ああ、魔族の医者、というのは魔族を診る医者で本人は人間です。魔族に入れ揚げてる方なのです」


「それは…さらに凄いね……」


この前初めてユピテルから魔族の魔力は人間には毒だという話を聞いたばかりだ。

普通に一緒に過ごすならともかく、医者として魔族に接するなら魔力に触れる機会もなくは無いのではないだろうか。危険を伴う気がする。


「隣国は魔族との混合国ですからね、そういうこともあるでしょう」


僕のいる国は人間しか暮らしていない国だ。

一方隣国は魔族と人間が暮らす国で中には魔族だけの国もある。

うちの国は魔族を嫌う訳ではないけど古の魔族…悪魔族をたおした勇者と聖女が創立した国だけあって魔族から避けるのだ。

魔族と人間は共生はしているけど微妙な関係性だ。

ただ悪魔族の行いに関しては悪魔族が悪いという意見が一致しているのでそこは問題にはならないらしいけど。

悪魔族は自分たち以外の魔族を下等種族と馬鹿にしていたらしいし。


「魔族と結婚した人間もいるってたまに聞くけどそうなると命懸けだったり…?」


「うーん…実例が少ないですからね。そもそも寿命や価値観が違いすぎて結婚するほど恋愛が発展したりとかはあまり…」


確かに魔族側からしたら相手はさっさと死んじゃうしな…。

それに長く生きている魔族なら人間はみんな子供に見えるかもしれない。

逆も然り、どうしても遺してしまったり、自分よりはるかに歳上だったり、似てるけど別の生き物だからな。


「まあ人間が犬に欲情しますか?って話ですかね…、まあ稀に居ますよねそんな奇特な人みたいな感じです」


「喩えがなんかやだなあ…」


でも確かに的を射た喩えではあるんだけど…。

人間からみた動物、みたいな感じと言われれば好ましい、可愛い、好きとか思っても恋をするか?と言われてみればほとんどありえない話だ。

つまりそれくらい確率が低いってことだ。


僕はユピテルをじっと見つめた。

ユピテルなんかは人間とも魔族とも全く別の生き物だし、そりゃあまあ恋とかしないよなあと思う。

だからこそ楽しいとか別の感情を大切にするのだろう。


あれ、ユピテルにとっての僕ってなんか大切なペット的な…?


そう思うとやけに僕に優しいのも納得できる。

いやなんかヤダな。

ユピテルは首を傾げてにこと笑っている。


「ま、まあとにかく理由はなんとなく分かったよ。恋愛がまず成立しないなら確かに確かめようがないね」


「ええ、着きましたよリギル様」


ユピテルがそう言うと丁度馬車が止まった。

僕は慌てて馬車に忘れものをしないよう確認するとその間にユピテルが先に降りてドアを開けておいてくれる。

僕は馬車から降りるとユピテルを振り返った。


「行ってきます」


「ええ、行ってらっしゃいませ、リギル様」


よし!今日も一日がんばるぞい!









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