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69・浄化スキル

「俺は浄化スキルを持っている」 


「浄化スキル?」


シリウスの口から飛び出した聞き慣れない名前に首を傾げた。

珍しいスキルなんだろうか。


「主に状態異常を解消するスキルだ。毒や麻痺はもちろん睡眠薬等にも効く、洗脳や魅了も含まれる。ちなみに外傷には使えないし、菌やウイルスには効かない。だがスキルレベルが高ければ毒水を水に変えたりもできる。少し定義が難しいのだが回復や治療とはまた違うものだ」


「なんか便利だね…」


「恐らく彼女も持っているんだろう。しかも俺より相当スキルレベルが高い」


シリウスはちらっとヴェラを見た。

たしかスキルレベルというのは生まれつき高い場合もあれば使ってるうちにレベルが上がる場合もある。

どんなにスキルレベルが高くても上位にギフトがあるからギフトの可能性の方が僕的には高いと思うけれど。


「公爵家なら分かると思うが…、公爵子息には付け込もうとする輩は少なくない。魅了スキルもかけられた覚えがある。今回の件もかけられている感覚と解けた時の感覚が同じだった。もっとも、スキルレベルが上がってここ最近はかけられることも無くなっていたが…」


シリウスが言うには小さな頃はスキルレベルが低かったから一時的にかかったりしていたらしい。

ただ浄化スキルは自浄作用があるから時間が経てばスキルの効果で魅了が解けるのだとか。

他人に対しても意識して使えば状態異常を解くことができるけどヴェラみたいに無意識に使えるのは珍しいらしい。


「ちなみに血のつながりが濃いとか一緒に過ごした時間によってスキルというのは影響し合う。リギル公子に魅了が効かないのも彼女と一番血のつながりが濃い兄である事と仲の良さは影響してるだろう。リギル公子を介しても多少の浄化作用があるのには驚きだが」


「ヴェラのスキルはすごいってことか」


そう言いながらヴェラを撫でるとヴェラは嬉しそうにしている。


「そうだな。リギル公子が魅了スキルなどで誘惑された経験がないのならヴェラ嬢がリギル公子をずっと守っていたってことだろう」


シリウスのその言葉にヴェラの表情がぱあっと輝いた。

ヴェラはお兄様の役に立ってたんですねっと嬉しそうに僕の腕に抱きついてくる。かわいいすぎ。


「魅了のかかった時や解けたときの感覚は俺もなんとなく覚えがあったんだけど、シリウスのほうが詳しいというかよく分かってるから言及しなかったんだ。シリウスを連れてくるのが一番だから」


カペラがへらっと笑う。せめて言っといて欲しかった気もするけどまあ結果は同じか…。


「しかしまさか彼女がな……、しかもかなり強い魅了だ…」


シリウスがはあと深くため息を吐いた。


「上位スキルってのがあるだろう?ギフトとも呼ぶヤツだ。僕は彼女の魅了はギフトで、ヴェラの浄化もギフトだと思う」


「ギフトの確認の例は少ないから決めつけるのは早計だが、可能性は高い」


シリウスもギフトについては知っていたようだ。

カペラがギフトって?とシリウスにこそっと聞くのでシリウスは呆れながら説明している。

ヴェラに対しては僕が前回のときにしっかり説明してある。

でもたぶん会話については分かってない部分もあるかもしれない。


「シリウス様とカペラ様に洗脳……、魅了スキルをかけたのはどんな人ですか?」


ヴェラの質問に二人ともが同時に気まずそうに目を逸らした。息ぴったりだ。

とりあえず今はまだ話せないんだと言ってヴェラを撫でると少し不満そうにしている。

聖女が悪いことをしているとはまあ言いづらい。

でもやっぱりちゃんと話した方が良いんだろうか。


「しかし洗脳とは言い得て妙だな。確かにただの魅了にしては洗脳じみていた。彼女を悲しませたり、害するものを許すなという強迫観念があった」


「そう!そうなんだよな。俺もそうだ。彼女を害するなら許さないとか、排除してしまおうとか、そういう激情があった」


シリウスにカペラが同意する。シリウスのさっきの態度もカペラの初めて会った時の攻撃性もそういうものがあったのなら納得はいく。


「それにこの前より明らかに俺にかかっていた魅了はこの一週間で強くなっていた。カペラの魅了が解けたことで違和感があって接触できる相手の魅了を重ねがけしたのかもしれない」


「シリウスの様子は俺ほどじゃなかったから大喧嘩するとは俺も思って無かったよ」


多分シリウスの浄化スキルによる魅了耐性は多少あったんだろう。

だからカペラの魅了を解くまではそんなに酷くかかってるように見えなかった。

カペラに無視され始めて聖女も周りも怒ってたっていう話もシャウラから聞いていたし、彼女なら重ねがけくらいやりかねない。

王太子もあまり放っておくとまずいかもしれない。


「とりあえずこれからは彼女との接触はしないよう注意してほしい。正直怪しまれないように変わらず接するのが一番なんだけど、会話や接触で魅了がかけられる以上避けるしかない」


僕の言葉に二人が頷く、どちらかに異常が見られたらウチに来るようにも言い含めておいた。

とりあえずこれからどうするかは慎重に動く必要があるからスキルの鑑定をしてからアトリアたちも入れてしっかり話し合うことになる。

二人にもしっかりその事を伝えておいた。


でもまあ…、まずは聖女を呼び出して説得するのが無難かもしれない。

説得……、出来るだろうか…。


とりあえず浄化スキルというヴェラのスキル(ギフト)の可能性があるものの名前が挙がったのは嬉しい誤算だ。

でもギフト…上位スキルになると治療なら絶対治療、回復なら超常回復と名前が変わるらしいから何とか浄化なのかも。


「スキルを調べる際に隣国に赴くのには賛成だ。ケレス公爵家ではスキルに対する拘りがあり、物心ついたときに隣国に行って調べたからな」


「だから浄化スキルがあるって知ってるんだ。隣国の鑑定士は信頼できる人だ」


万が一何かあったらどうしようと思っていた気持ちはシリウスとカペラのその証言で少しばかり解消された。

ちなみに国内にも鑑定士はいるけどいずれもスキルレベルが低い為、二、三人梯子しないと全部分からないし、上位スキルなら絶対分からないだろうとのことだ。

隣国の鑑定士に調べて貰って分からないなら諦めた方がいいとも言われた。


「二人とも貴重な情報をありがとう」


「いや、迷惑をかけたからな…」


シリウスが目を伏せた。

シリウス・ケレスという人物は真面目で無口であり責任感が強い。

小さな頃に魔法を無意識に暴発させて乳母を怪我させたことがあって、他人に自分のせいで迷惑をかけるということに対して人並み以上に罪悪感がある。


「あまり自分を責めないように」


シリウスにそう言って笑いかけるとシリウスは少し微笑みながら頷いた。


「ありがとう、リギル公子。ここまでして頂けて本当に感謝している。貴方が俺とカペラの違和感に気づいて早めに対処してくれなければ大変なことになっていたかもしれない」


「どうだろうね…」


聖女がそういう風に仕向けたのか、強すぎる魅了が激情を生み出したのか。

前者なら聖女が周りに危害を加える気があるということになるけど、僕は後者でただ彼女は単純に周りにちやほやされたいだけだと思っている。

つまり本当に何も考えてないのだ。

攻略対象に好かれたい、ただそれだけでみんなに魅了をかけたのだろう。

しかし魅了されて聖女を愛するが故に暴走する可能性はあったし、カペラなんかはほぼ手前だった。

だからやっぱりわざわざ対処したのは間違いじゃないと思う。


とりあえず双子の魅了が解けたことによる聖女のアクション待ち、もしくは何もなければスキル鑑定が終わってから聖女に直接交渉にかかろう。

まだまだ先は長いな…と思うと本当に面倒を起こしてくれた聖女が憎たらしい。


僕がため息を吐くとヴェラがよしよしと頭を撫でて慰めてくれた。









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