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68・ヴェラは有能な妹

「今日はシリウス様がくる日ですね…!」


ヴェラは朝早くに起きて朝から何やら張り切っている。

今日はカペラがシリウスを連れて再び来ることになっていて、もちろんヴェラにもお願いしたからだ。


しかし昨日はめちゃくちゃ焦ったな…。


前々から計画していたシャウラにドレスやアクセサリーをプレゼントする作戦を少々強引に決行した。

シャウラは遠慮がちだったが最後には受け取ってくれて喜んでいた。ちなみにシャウラのドレスのサイズはあらかじめアトリアに聞いた。

まあそれまでは良かったのだけど婚約式の話を馬車で切り出した途端にシャウラが号泣してしまったのだ。

これにはすごくびっくりした。

やっぱり嫌なのかと思って焦ったのだけれど、シャウラは僕が真剣に色々考えたのが嬉しかったらしい。

シャウラの可愛らしいところをまた一つ知ってしまった。


話を戻すと、早く起きてきてしまったヴェラは僕の部屋に来てカペラやシリウスについての話を聞きたいと言うのであまりよく知らないけど…と前提を言ってから少しだけ話してあげた。

二人に会わせるのはもう今回きりにするつもりだけどどっちかをヴェラが…もしくは二人がヴェラを好きになったりしたらどうしようと少し悶々とする。


だからこそ昨日のかわいいシャウラを思い出して気を紛らせていたのだけど。

今日はアトリアの同席はないので僕たちで対応する予定だ。


「それでその悪いひとはカペラ様やシリウス様にどんな洗脳を…?」


ヴェラが首を傾げる。僕は言葉に詰まった。

この場合なんて言えばいいんだろうな…。


「…ええと、その悪い人を好きになって…その人のために何でもしたくなっちゃう洗脳かな?悪い事でも。だから二人が悪い事する前になんとかしたかったんだ」


「なるほどです」


ヴェラは納得してうんうん頷いている。

なるほどですだって可愛い〜。

まあ魅了って結局そういうことだ。魅了スキルで犯罪を代行させた前例なんて割とある。

あと、情報に引き出すのに重宝されるから諜報員にされたりもする。


「リギル様、ヴェラ様に何か無いよう私もしっかり見ておりますのでご安心を」


ユピテルが後ろからそう僕に囁いた。

この前もだけど時々こいつは心読めるんじゃないか?って思うけど多分読めてるよ…。

でもそういう申し出はありがたいので素直にありがとうと返事をした。





「だから一体なんなんだ。カペラお前は何を企んでいるんだ」


「やー、企んでるとかじゃなくてさ…」


「お前は最近アンカも無視しているし、行動がおかしい。挙句に無理矢理こんなところに…」


「おかしいのはシリウスの方だ!」


うーん、この状況は……。


カペラが何とかシリウスを連れてきたのだがシリウスはだいぶ怒っている様子だった。

何とか応接室まで連れてきて僕とヴェラ、カペラとシリウスで向かい合って座っている。

再び魅了をかけられないようにアンカを避けていたらしいがそれがシリウスの癪に触り喧嘩していたらしい。

でも僕らをほったらかして喧嘩し始めたのには驚いた。こんなところとか言い出す始末。

まあ、というよりシリウスの方がゴネていてカペラはワタワタしているんだけど。

カペラもこの前まで話が通じなかったし、何か理性がぶっ飛ぶみたいな効果でもあるのか?


「リギル公子がお前と話がしたいって言ってたんだ」


「俺は話すことないどないけどな」


シリウスはふんとそっぽを向いた。

カペラはすまない…と謝りながら困った顔をしている。

僕の隣に座っているヴェラも不安げだ。

するとシリウスはちらっとヴェラを一瞥した。


「エリス公爵家の次はウチとのコネを作りたいとかそういう話か?」


「シリウスっ!」


カペラがベンッとシリウスの頭をぶっ叩く。シリウスは持ち上げていた紅茶を膝に零した。

それでまた言い争いが始まった。

ヴェラがこの場にいることで婚約の話を進めようとしているとでも思ったらしい。

とりあえずヴェラと接触させたいのだけどどうも上手くいかない。

というかこのままでは埒があかないな。

僕は言い争う二人を止めるため少し強めに机を叩いた。

不意を突かれた二人はビクッと肩を震わせてから黙りこむとゆっくりこちらを見た。

タイミングがバッチリなのはやっぱり双子だ。


「ヴェラを君らの家に嫁に出す気はない」


これはハッキリさせておかないと。


「えっ、あ、そこ?」


カペラがキョトンとしている。

今の会話の流れで一番重要なことだと思うけれど?


「ならなんなんだ」


シリウスがあからさまにため息を吐いた。

まあ仲が良くもない人間の家に急に呼び出されて警戒する気持ちも分かるけれど。

どうしようかと思案しているとヴェラがすっと立ち上がった。


「ヴェラ?」


ヴェラがシリウスに近づくとシリウスは不信感たっぷりの目でヴェラをめ付けた。

ヴェラは気にせず、シリウスの近くですっとしゃがんだ。


「シリウス様、お膝が濡れています」


あっ、さっきカペラがシリウスの頭を叩いた時だ。

ヴェラは優しくシリウスを見上げて微笑むとシリウスの膝にハンカチを当てて紅茶を拭き取った。


天使がいる。


シリウスはさすがにたじろぐとありがとうと呟いた。

ヴェラはすっと立ち上がる……と同時にきゃっと小さな悲鳴を上げてぐらっとシリウスの方によろめいた。


「わっ…!??」


シリウスはよろめいたヴェラを咄嗟に抱きとめる…と、ヴェラに触れた瞬間にシリウスは目を見開いたように見えた。

少しの間固まっていたかと思うとすぐにハッとしてヴェラを引き剥がす。


「す、すまない、大丈夫か……」


「あ、は、はい」


ヴェラにユピテルが大丈夫ですか?と声をかける。

一方、大人しくなったシリウスは魂が抜けたようにボーっとしてから黙って頭を抱えていた。

僕は一連のことを黙って見ていた。ヴェラを抱きとめた瞬間にぶん殴りたくなったけどヴェラの作戦だと何となく気づいたからだ。

ユピテルにハンカチを預けて席に戻ったヴェラは僕と目が合うと可愛らしくウインクした。

僕の妹が天使すぎて生きるのが辛い。


「…、どういうことだ、カペラ…」


頭を抱えたままシリウスがじろりとカペラのほうを睨んだ。

カペラはなんて説明したらいいのか分からずにふいーっとそっぽを向いてしらばっくれる。

それを見てシリウスは大きくため息を吐いた。


「…、リギル公子、先程までの無礼を詫びよう。どうかしていたようだ」


カペラと同じだった。急にシリウスは冷静になったようだ。


「リギル公子は何か知っているのだな?……、これは…先程までの夢のような気分は……、もしかして魅了スキルか…?」


覚えがあったのか、それとも察しがいいのか…


「君の妹は魅了を解けるのか?」


ヴェラの活躍のおかげでやっとまともに話せるような状態になったシリウスはカペラよりはいくらか状況を飲み込むのも早かった。


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