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60・いつにする?明日?

今日は日曜日、カペラが来ることになっている。

ちなみに一応シャウラが巻き込まれたことなのでアトリアにもこのことは話したんだけど、私も同席すると言われて断れなかった。

無言の圧を感じた。

カペラより先に来たアトリアは通された応接室で先に座ってお茶を飲みながら圧を放ってる。こわい。

何この地獄の三大公爵家嫡男会議。

カペラはというと、一応招待したのはこちらだし、使用人に迎えに行かせた。

まあユレイナス公爵家の場所が分からないなんてことはないだろうけど、万が一話し合いから逃げられない為というのもある。


「シャウラが許したとはいえ、妹を傷つけられて黙ってるわけないよね」


紅茶を片手に邪悪な笑みを浮かべているアトリアは攻略対象なのにラスボスみたいだった。

僕はこほんと咳払いをする。


「……、ええと、カペラ・ケレス公爵子息が来る前に話しておきたいことがあるんだけど…」


「…、なんだい?」


アトリアがカップを置いてこちらを見た。

とりあえず気は逸らせたようだ。

どっちにしろ話しておかなきゃとは思っていたんだけど、こうなると少し緊張する。


「…、…シャウラとの婚約のことなんだけど…」


「考え直すとか言わないよね?」


言いかけた僕に素早くアトリアが反応した。

邪悪な笑みが今度は僕に向けられる。

穏やかな人が怒ると怖いってこういう事なんだろうけどマジで怖い。


「いや、その、今までは政略結婚に近いような……、まあその色々解決したら婚約破棄も視野に入れたような婚約だっただろ?」


アトリアの眼光が鋭くなる。

心の中でひえ〜〜と悲鳴を上げつつもめげずに続けた。


「…、実は、婚約破棄は絶対もうしたくないと思ってる。これからはもっと真剣に…いや、真剣じゃなかった訳じゃないんだけど、ちゃんと婚約者として向き合いたくて」


「それって…」


アトリアが目を丸くした。

恥ずかしくなってきてちょっと赤面している気がする。


「…、好きなんだ、シャウラのこと。その、1人の女の子として」


「じゃあ結婚はいつにする?明日?」


「卒業してからだよ!????」


何故かさっきよりも反応が早かった。これはこれで怖い。怒られなくてよかったけど。

でもアトリアの機嫌はさっきよりも遥かに良くなったようだった。邪悪さが消えている。


「私としては一刻も早くシャウラをエリス家から出したいんだけどね」


アトリアがぽつりと言った一言はどう考えてもシャウラの為を思って言っている事だった。

エリス家の両親は話を聞く限りシャウラにとっていい両親とは言えなくて、今はだいぶアトリアが制しているらしいけど使用人すらシャウラに冷たい態度をとっている。


「ユレイナス家なら、使用人も、リギルもリギルの両親も、ヴェラ嬢もシャウラに親切にしてくれる。あの家は魔窟だ。シャウラを早く出してあげたい」


アトリアが目を伏せた。

でも、僕としてはアトリアも心配だ。

シャウラが出て行った後、アトリアは大丈夫なんだろうか。


「…、気持ちはわかるよ。でも急いても良い事はないし、君もあんまり無理しないで。僕に相談してくれていいからね」


「…だからリギルならシャウラを任せられるんだ」


ふふ、と攻略対象のガチの笑顔を真正面からぶつけられてちょっと照れてしまった。

やっぱり顔の造形が綺麗すぎてドキッとする。

うん、女の子ならオチてたな、これ。


「まあ近いうちに婚約式はしたいなって思うよ。もしものために先延ばししてたけど、その、シャウラも僕のこと好き、みたいだし…」


「いまさら気づいたのかい?」


アトリアにスパッと言われたうえにやれやれと呆れられる。

いまさらと言うことはシャウラは結構前から僕のこと好きなんだろうか。

ユピテルに言われた「鈍感の擬人化」が頭の中で反芻した。

婚約式をしなかったのはこの国の決まり的に書類上だけとは違って婚約式をしてしまえば婚約破棄が困難、というかほぼ無理になるからだ。

でも、婚約式が終わればしばらくして現代でいう同棲が可能になる。


「…、ま、まあ、結婚はともかく、婚約式を済ませれば2か月ほど置いて同居が許されるだろ?だから結婚をしなくてももしものことがあればウチで匿える。王家もより口出しができなくなる。……、だからそれで妥協して貰える?」


「…まあ、明日は冗談だからね。そんなに真剣に考えてくれているならリギルに任せるよ。二人のことだしね」


アトリアが微笑んでくれたのでホッと胸を撫で下ろした。

そもそも婚約式は簡素なものにしても、結婚式には準備に時間がいる。

僕としては色々時間をかけてシャウラにとって幸せな一日にしてあげたいので手は抜けないのだ。

卒業したらしっかり公爵家を継げるのでそれからにしたいというのもある。

まあ、公爵家同士の結婚なんて重大だし、婚約式も多少豪華になってしまうかも知れないけど。


「まあとりあえずは目先の問題だけどね」


今回で言えばカペラのこととか。

僕のその言葉にアトリアは何かを察したようだった。


「…、そういえば、ケレス公爵子息の様子がおかしかったのが、リギルとの接触で良くなったと言っていたね」


「うん、やっぱり何かしらのスキルなのかな」


聖女の魅了が全く効かなかった話は以前話したのでアトリアもそのことが気にかかっていた様子だった。


「そうだといいんだけれどね」


アトリアがふうとため息を吐く。

憂いを帯びると色っぽくなるとか、やっぱりイケメンは徳だなと余計なことを考えてしまった。

僕が落ち込んでると、道端に落ちてたものでも食べました?お腹壊してる顔してますよとかユピテルが言ってくる。

リギルは美形でも顔色が悪いと病気に見えるらしい。

というかユピテルなんだあいつ。思い出したらムカついてきたな。

公爵子息が道に落ちてるもの食べる訳ないだろ。


「ただもしそうでも王太子は後回しにした方がいい。絶対面倒になるだろう。解くにしても対策が必要だ」


「まあ、そうかも」


正直下手にやらかして聖女の自業自得でも反逆罪で処刑とかになったら後味悪いし、陰謀だのとか言って教会が絡んできたらまずい。


「私としては王太子だけは一生そのままでいいけれど。クズはクズ同士結婚してくれれば」


「こらこら」


他に誰もいないユレイナス公爵家じゃなければ王族侮辱罪案件だ。

僕とふたりのときのアトリアは王太子嫌いを隠す気が全く全然ない。

てか嫌いにしても嫌いすぎだから何があったのかな。

僕の制止にアトリアがにこっと笑顔で返事をする。悪びれてない。

にこっ、じゃあないよ。


「あー…、そうなったらほら国の将来が心配だから」


「ずる賢いくらいの方が王に向いていると思うけどね。あの聖女の頭のお粗末さは心配ではあるけれど、王太子はクズだけど賢い。清廉潔白じゃそれはそれで王には向いていない。暴君というほど自分勝手でもなく周りに自分をよく見せる人間だから王になったら上手くやるんじゃないかな」


どうやら能力に関しては評価はしているらしい。

アトリアのあまりの暴言に後ろに控えていたユピテルがぷぷっと吹き出した。

咳払いをして誤魔化したけど誤魔化せてないぞ。


「まあ、ともかく、先ずは王太子以外を正常に戻して聖女の出方を見るべきかな」


「そうだね…」


とはいえ、スキル(もしくはギフト?)の効果なのかははっきりしないし、先ずはカペラと話し合って、さらに魅了を解けないか試してみるのが良さげだ。

それとレグルスのことも妙に引っかかる。

問題は山積みだなあと考えながらちらりと時計を見ると、カペラとの約束の時間の20分前になっていた。





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