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47・踏み潰されて串焼き…って考えると魔物ちょっと可哀想だった

「魔物にはランクがあります。Sが最高ランクで次はA、Eまであります。これは冒険者ギルドで定められているものですが一般にも適応されています。森深くに入るほど魔物のランクが上がりますが、大抵外側にいるのはランクがDかEの弱い魔物です。魔物の種類ごとに分類されますが稀に強い個体もいますので一概に同じとは言えずあくまで目安でして、ちゃんとしたランクは魔物から取り出した核を見れば分かります。大きさが違うからです」


と、ユピテルに授業で教えて貰ったことがある。

狼の姿のような魔物は明らかに大きな核を落とした。これはAランク以上はあるのだろう。


「ではリギル様、後は宜しくお願い致します。皆様気を失っているようですし、リギル様がなんとか倒したか皆様が気を失う前の攻撃で死んだ事にしてください」


「そんな無茶な」


残って説明して欲しいとお願いしたのにユピテルは全く聞く耳を持たずさっさとどこかに消えてしまった。

とりあえず魔物は雷で弱った事にして、スキルで収納していたのを思い出したから剣でトドメを刺したことにしよう。

ユピテルが炎魔法の痕跡を残してないのでなんとか誤魔化せるだろう。


「リオ、リオ…」


まずリオの頬をぺちぺちと叩いた。1番派手に飛ばされて木にぶつかっていたからだ。

打ちどころが悪かったらと思うと心配だった。


「っっはぁ!???死んだ!???」


リオが勢いよくガバアッと起きあがった。

頭同士がぶつかるとこだったけどなんとかギリギリで避ける。元気そうじゃん。


「…、生きてるよ」


「っは…!?本当だ…!!手足ついてる!!!リギルの顔が綺麗だから天界かと思った!!??天使じゃなかった良かった!!!」


「やめろ」


本気で言っていそうなのが何か嫌だな。

僕だって出来れば美人よりイケメンに生まれ変わりたかったよ全く…いや、“リギル”も顔は良いからわがままは言わないけどさ。


「僕アトリア起こしてくるからリオはあと二人お願い。動ける?」


「あ、ちょっと頭痛いけど大丈夫…わかった…」


リオに利き手を差し伸べて立ち上がらせる。

リオは軽く土や草を払うと他の二人を起しに行った。

僕はアトリアの方に向かう。とりあえず大した怪我とかはない様子だった。


「アトリア、大丈夫?」


リオと同じように軽く頬を叩いた。

う…とアトリアが小さな呻き声を上げる。


「あ…、リギル…あれ、どうなった…?」


アトリアはゆっくりと身体を起こした。


「魔物は倒したよ」


「え…リギルが倒したのかい…?」


「あ、いや、アトリアのおかげだよ。雷魔法で弱ったところでなんとかトドメを刺したんだ」


僕がちらっと核の方を見ると、アトリアもそっちを見た。

嘘つくのはちょっと申し訳ないけどユピテルが踏み潰したあと串焼きにしたとかは言えない。


「…、そうか、ああ、良かった」


アトリアはそう言うとズルっと倒れてしまった。


「わ、だ、大丈夫?」


「ごめん、安心したら力が抜けて…、でも、ありがとう、リギルがトドメを刺してくれたおかげだ。相手が弱っていてもみんな気絶していたら危なかった」


アトリアが僕の右手をギュッと握る。

まあ倒したの僕じゃないんだけど…、頭の中で憎らしく邪龍がウインクしている。


「早く戻らないと他の魔物が来たら困るね…」


少し落ち着くとアトリアが呟いたので握られた手をそのまま貸した。

アトリアを引き上げて立たせるとき、足首がズキッとした。


「どうかした?」


僕の微妙な反応に気づいてアトリアが僕を見る。


「あ、いや、脚を捻ったみたい」


「肩を貸そうか?」


「たぶん大丈夫…」


アトリアもまだ少しフラフラしてるしね…。

光魔法で治そうと思ったけれど治療って言うのは結構魔力を使う。魔力がなくても人間は大丈夫だけど急に失うとふらついたりもするから歩けないことはないし無理に使わないほうが良さそうだ。


「リオ、リギル足を捻ったみたい」


僕がアトリアに気を遣っているのに気付いたのか、意外にも元気そうにしているリオにアトリアが声を掛けた。アトリアは本当よく見てる。

アトリアに声をかけられたリオは焦りながらこっちに来た。


「えっ!?リギル大丈夫!?死ぬ!?」


「死にはしないけど」


「肩を貸してあげて」


アトリアがクスッと笑う、それから辺りを見渡した。


「魔物の気配を辿ってきたからどの辺なのか分からないね、リオ、出口を探れる?」


「オレめっちゃ頼られてる〜!よゆー!」


「さすが」


「さすがリオだね」


僕とアトリアの二人でリオをヨイショする。承認欲求が満たされて満足げだ。単純なやつ。

リオが僕に肩を貸しつつ探知しながら先導して行くことになった。

あとの2人も大した怪我はなくて大丈夫そうだ。核は2人に運んで貰うことにした。


「はー…にしてもめっちゃ怖かったなぁ…」


リオがため息をつく。あんなレベルの魔物普通に生きてたら対峙することなんてないだろう。


「一生に一度の経験だったね」


そう言って苦笑いしてみせるとリオは口を尖らせた。


「一生に一度も経験したくなかったよ」


「まあ、僕もだけど」


一生に一度の経験、だといいんだけどね。

僕は利き手の反対、左手にずっと握っていた魔石を強く握った。

この魔石の持ち主が今度は王都や学園に魔物を侵入させたら?それの予行だったらどうする?

あまり後ろ向きなことは考えたくないけど、最悪の事態は考えなきゃいけない。


レグルス・アステロイド…。


魔族が犯人なら1番の有力な犯人候補だ。

アンカ…聖女の同級生で人間と偽り学園に通う魔族の子供。レグルスは身分を伯爵の息子と偽って学園で過ごしている。

証拠がないけど、レグルスの魔力は冷気を放っていた、とゲームでは表現されていたのと魔石から感じる冷気が一致している。根拠はある。


レグルスは大昔に人間界を支配しようとした悪魔の一族、古の魔族。その生き残り…が、他の魔族に無理矢理産ませた子供の1人。道具であり生き駒。

人間を憎めよ、人間を滅ぼせよ、と育てられたレグルスは聖女を殺す任を与えられていた。レグルスルートではレグルスが聖女を殺してしまうのがバットエンド、聖女のためにレグルスが古の魔族を滅ぼすために戦って死ぬのがハッピーエンドの位置付けだった。

レグルスにぼろぼろにされた古の魔族たちは今度こそ聖女の力で滅びるのだ。


古の魔族はずっと大人しかった。まだ力が万全じゃないからだ。

だからまず捨て駒たちを使って聖女や王族を殺すことに注力した。それが本編で対峙する敵だった。

レグルスと同じように、古の魔族に利用されてきた魔族の子供たちは聖女と対峙し、返り討ちにされたりするも、皆、親の愛に飢えた半身は善良な魔族の子供。聖女は彼らを説得して受け入れ、幸せにすると誓う。

他のルートでもその話はあって、色んな形で魔族の子供を聖女は救った。

レグルスルート以外だとそれを傍観していたレグルスはどこかに姿を消した。レグルスルートと同じく、古の魔族を滅ぼすため動いたのだろう。

まあ続編にも攻略対象として出てくるんだけどね????

ちなみに、レグルスルート以外では魔族の子供を改心させるだけで古の魔族については深く触れずに終わる。だからレグルスルートは隠しルートでトゥルーエンドと言われていた。


そのレグルスがやったとして、何の為にこんなことをしたのか、と考えてみれば二つ可能性がある。

まずはあのお馬鹿聖女が関係している可能性だ。

レグルスは聖女の為なら何でもするキャラだった。盲目的で信仰的で独善的だった。聖女が魅了させたレグルスになんかの弾みで僕のことグチったから使役獣に殺させに向かわせたとかアリ寄りのありえる。

もう一つの可能性としては、ゲームにおいてレグルスは聖女を殺すルートでは平気で人間を殺していたので中途半端に聖女が関わったとかでそっちのルート入ってる可能性もある。

レグルスは憎んでなくとも人間が好きでも嫌いでもなくどうでもいいから。

万一、レグルスではなかったら古の魔族の誰か、レグルス以外の捨て駒の誰か……。だとしたらさっきの心配…予行かも、につながる。

ただこんな事件は無かったはずだからイレギュラーではある。転生者(特にあのお馬鹿)が関係してる可能性は高い。


考えごとをしながらしばらく歩くとやっとのことで教師たちと合流できた。

授業は一旦中止になり、Aランクだったと判明した魔物の核を取ったということで僕ら魔物と対峙した2チームは課題が免除された。リオはラッキーと言ったけどラッキーではない。

魔石のことはとりあえず、よく知らないフリをして魔物から核と一緒に落ちたとだけ伝えて教師に渡した。



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