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45・屋外授業とアクシデント

今日は魔法の屋外授業だ。

場所は王都から少し離れた森でここには度々魔物が出現する。

奥まで入ると危険だが浅いところならそんなに問題はない。

今回の授業の内容は一年間習った魔法を駆使して魔物を各一匹倒すこと。

怪我や非常事態の時のために三人一組でやる。

僕はリオとアトリアと…まあいつもの三人組だ。


「森かあ〜…ふふっ、ココは俺のフィールドだな…」


リオが何故か得意げそうだ。

ドヤ顔で小学生みたいに落ちてた木の枝を振り回している。


木の魔法を使えるからまあそうっちゃそうか。


「あまり調子に乗っているとどうなるか分からないよ」


アトリア手厳しい。


「ヒェッ…、リギルいるから大丈夫だもん」


リオがひしりと僕の腕に捕まる。

なんか謎の信頼を置かれている。


「まあ光魔法使えなくもないからかすり傷くらいは治せるよ。魔物もだけど普通の動物も気をつけようね。クマとか頭ふっとばされるかも」


「怖いこと言わないでよっっっ」


まあ魔物が出る森じゃ動物も少ないんだけどね。


「まあこの辺には小さいのしか居ないって言うし…そもそも見つけるのがなあ…」


指定された区域を探しているが魔物はなかなかいない。


「探知してみようか」


リオが近くの木を触った。


「探知?」


「森の声を聞く?みたいな?木の属性持ちの特殊能力って言うか〜、植物を通じてちょっとした範囲なら様子を探れるよ」


「え、すごいね」


僕が言うとリオがにんまりした。もっと褒めてって顔だな。

というかこんななかなか見つからないんじゃ他の班はどうしてるんだろう?


「とりあえずお願い」


「はぁい」


リオはもう片方の手、つまり両手を木に当てて目を瞑って意識を集中させた。

リオの手のひらから木に緑色の魔力が流れていくのが見える。

なるほど、こうやってやるのか。


「…、3時の方向にひとつあるね」


「見つけたの?リオすごい」


リオの頭を思わず撫でるとリオは満足げにしている。


「そうだろそうだろ」


「仲が良いのは良いことだけど居なくなるかもしれないから早く行こう」


「あ、うん」


アトリアに言われてリオの頭から手を離すとリオが少ししゅんとした。

犬か何かかな?

それからはリオの能力を使いつつ場所を絞って魔物を探す。


「あっ、いた」


黒いツノが生えた大きなクモみたいな魔物だ。

小型犬くらいだろうか。

木の上をガサガサ移動しながらギギギ…と鳴いている。


「うえっ、気持ち悪ゥッ」


リオが顔を顰める。でも僕も同意。


「とりあえず動けなくするよ」


魔物に向かって二本指を向ける。指の先に魔力を集中させる。

魔物がこちらに気づいて木の上からこっちを見ている。


「え、リギル大丈夫?」


「静かにして」


リオが心配そうに僕の服を掴んできた。

僕が魔法を撃とうとしていることに気づいた魔物は長い後ろ脚をグッと縮ませる。

こっちに飛びかかろうとしている、今だ。

魔物が飛び付いてくると同時に銃のように真っ直ぐ氷魔法を放った。

途中で広がった氷魔法は魔物を包み込んで、氷漬けになった魔物はゴロンと地面に転がった。


「ヒェッ…」


リオが小さく悲鳴を上げた。

一瞬の出来事だったので魔物が飛びかかってくるようにも見えたからびっくりしたのだろう。


「誰がトドメを刺す?」


「えっ、こいつまだ死んでないの…?ウワッ後ろ脚人間みたいじゃんコワ…」


リオが魔物を見ながら何かぶつぶつ言っている。


「僕的には雷落としたら火事になりかねないからアトリアが良いと思う」


リオを無視して僕はアトリアを見た。

一人一匹倒せとは言われたけどトドメだけやれば似たようなもんだよな…。


「じゃあそうしようかな。ありがとうリギル」


アトリアが魔物の封じ込められた氷に触れる。

バチバチバチっと派手な音がして氷の中に電気が駆け巡った。

あ、なんかこれ、あれ、プラズマボールみたいだ。

しばらくすると魔物が霧になって消えて、魔物の形に型が取られた氷の中に石がコロンと転がった。

魔物の核、心臓だ。


「これが退治した証拠になるんだっけ」


「うん、そうだよ」


今度は炎の魔法で氷を溶かして石を取り出す。

それをアトリアに渡した。

ちなみに誰が倒したかは核に残った魔力でわかるらしい。


「リオ、次お願い」


僕がリオを振り返るとリオが頷いた。

さっきのように木に手を当てて索敵を始める。


「っ…これ…!!!」


リオがばっと木から手を離した。


「え?何?」


「まずいよ。結構デカい反応がある…。そんなに近くはないなら離れよう。2時の方向だ」


「え、デカい魔物ってこと?」


「強い反応ってこと。大きさは分からないけど強い魔物ならでっかいかもね…。魔物は野良だと共食いして成長するらしいから、なかなか魔物が見つからなかったの、コイツの仕業かも」


ちなみに野良じゃない魔物ってのは使い魔のことだ。

魔族くらいしか使役していないけれど。

リオの言い分はつまり、強い魔物が弱いのを食べちゃってたから倒す魔物が見つからなかったってことだ。


「一旦引き返して教師に報告しようか」


アトリアの言葉にリオと僕は頷く。

このまま無闇に彷徨くのは得策じゃないし、他の班も心配だ。

でも普段この辺りに強い魔物が出るはずないのに。


不安に駆られながらも報告に行こうと踵を返した時だった。

誰かの叫び声が聞こえた気がした。


「助けてくれ!!!!!助けて!!!!」


リオの言っていた方向から誰かが走ってきた。

どう見ても同じクラスの男子だ。

彼は僕らの姿を見つけると必死の形相で駆け寄ってきて、それが何故かは来た方向から安易に想像できた。


「魔物にっ、強いやつに襲われて…二人がっ……」


「…、やっぱりか……」


もう違う班が襲われていたんだ。


「まだ二人は大丈夫?」


ぜえぜえと息をしながら倒れ込むように膝をついた彼の背中をさすりながら僕は聞いた。


「あ、足止めしてて…わからない……、誰か呼んできてくれって、それで…」


「分かった。そのまま先生に報告に行って。出来るね?」


彼に軽く治癒魔法をかけてあげる。

彼は身体が楽になったことに気づくと、コクリと頷いて立ち上がると教師のいる方に向かった。


「人数が多い方がいいから僕が行くよ」


「お、オレも行くよっ…正確な位置、俺なら分かるしっ…」


「火事になりかけてもリギルが消してくれるだろう?」


リオとアトリアが行こうとした僕の服を掴んだ。

リオなんかは少し震えているけれど、二人とも頼もしい。


「先にいる二人と三人なら倒せるかもしれないね」


僕はそう言って二人に笑いかけた。






新しい小説も投稿しているので良ければそちらもどうぞ宜しくお願いします

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