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38・ギフトの意味について

会ったときにさりげなくピースサインをするのが放課後話し合いたいという合図。

そういう風に彼女…ミラと取り決めをして数日。

今日の放課後、彼女に話を聞くことにした。

色々こっちもバタバタしていてある程度方針が決まったのもある。

場所はいつもの温室だ。


「ギフト、ですか……」


「そう、君なら知ってるかと思って。ユピテルから聞いた話だけどアトリアも一応存在は知っていたよ」


「うーん…というか、ユピテル様を執事にしてることがまずびっくりすぎてですね…」


ミラに話を聞くにあたって僕はとりあえずアトリアとの聖女についての話の内容、スキルについてユピテルに聞いた話をした。

その過程でユピテルがウチの執事であることも話したのだがめちゃくちゃ驚かれた。

ミラはゲームはしてないがファンブックで存在は知っていたらしい。


「ギフトというのは没ネタですね」


「没ネタ」


「聖女をより強固に特別にするために初期設定でギフトという能力を持った光属性の少女、というネタがありました。制作過程で光属性自体を特別にすることに落ち着いてギフトは削除されました。同じく初期設定で聖女は転生者…というより、転移でしょうか、そういう設定があったのも一般庶民から貴族へのシンデレラストーリーと変えられました」


「えっ、聖女が転移者っていう初期設定…?」


「ええ、これではまるであの聖女アンカ様が“初期設定の聖女”のようですよね」


初期設定の聖女………。


確かに、転生者と転移者という違いがあれギフトを持っているのならそう言っても過言ではない。


「ギフトというのは“贈り物”と意味が有名ですが“神から与えられた特別な才能、資質”という意味もあります。聖女の特別な力なら名付けとしては最適です。でもギフトを削除した理由についてシナリオライターのコメントで過ぎた力は毒になりますよねというのがあって引っかかった記憶があります」


「過ぎた力は毒……」


確かにその通りだ。

特別だから、超越しているから良いという単純な話でもない。

…このまま聖女が周りを誘惑することで人生が壊れる人間がいくらいるかなんて想像もできない。


「調べてみたところ、ギフト…“gift”には“毒”と言う意味もあったんです。シナリオライターはそのことも意識して名付けしたはずです。すごいけど、危険な力、注意が必要です」


「ギフトが毒……」


確かに今の聖女は毒花のようだなあと思う。

惑わせて、寄らせて、その先は破滅…。


ギフトを使い続けることで彼女自身にも何かの影響がある可能性だってゼロじゃない。

だって全く未知の力なんだから。


「そのギフトが僕に効かなかった可能性があるんだ」


「ギフトが効かない、ですか。うーん、その点については…ユピテル様以上に良い回答ができる自信がありません。スキルもギフトも言っちゃえばおまけに文章で綴られていた程度です。私がお話ししたのは制作の裏話であって、この世界について詳しく知るなら完全に彼のが専門家でしょうね」


「まあそうだよね……」


没になったネタに対してわざわざギフトを無効化するには〇〇が必要です!なんて書いているわけがない。

没ネタだったことが分かっただけで前進ではある。


「なので、ここからは私の推測になってしまいますが、リギル様も何かギフトをお持ちなのでは?ギフトに対抗できるのはギフトだけ。リギル様のギフトが無効化している可能性はあります」


「ええ〜、僕にギフトかあ……、どうかなあ…」


正直あっちは主人公で僕はサブキャラだし、そもそものポテンシャルが違う気がする。


「もう一つとしては聖女様の言う通り、転生者だからかもしれません。転生者はある意味異端ですから、お互いの干渉に制限があるのやもしれないです」


「そっちの方が可能性があるかも…」


でも転生者だからただ単に魅了が効かないのなら僕だから効かないだけで状況を打破する切り札にはならない。


「まあ私に言えることはこれくらいですかね」


「…、ありがとう。ええと、それで、君に報告しておきたい事があるんだけど」


「何ですか?」


ミラがじっと僕の目を見つめる。

その真剣な様子とこれから話すことを考えてずきりと胸が痛んだ。


「王太子がシャウラちゃんを側室にするつもりかもしれない」


「はぁぁあ!????ど、どどど、どういうことですっ!????」


やっぱりめちゃくちゃ取り乱してしまった。

僕はガッチリ胸ぐらを掴まれた。


僕でさえ驚いたのに最推しだって言うならもっとびっくりするだろう。


「聖女を正妻にするつもりだって話が出ていて、その聖女が公務とか面倒くさいことを嫌がってる。教養も足りないから、教養が足りてないぶん、側室で補うかもしれない。そうなると、候補筆頭は婚約者候補最有力のシャウラちゃんだって…」


「そんなっ、そんなの!!!シャウラたんが幸せになれないじゃないですかぁ〜!!!王太子クソ野郎〜!!!」


ミラが涙を流しながら胸ぐらを掴んだままガクガク僕を揺らす。

脳が揺れるって。


てか、シャウラたんに王太子クソ野郎って。


「お、落ち着いて、対策は練ったから」


僕がそう言うとミラはパッと手を離した。


「なんですか」


そして僕をじっと見つめると袖で涙を拭った。


「彼女を僕の婚約者にする」


「んぬえ%○$☆♭×#▽!???」


「落ち着いて」


今度は言葉にならなかったらしい。

餌が欲しい時の鯉のように口をはくはくさせている。


「王太子から婚約者候補を奪えるのは第二王子か…王族の血筋のユレイナス公爵家…の、まあ僕くらいなものだから…、アトリアも婚約の申し出があったらあの両親でも僕が相手なら承諾するだろうって言っていたし」


実は王位継承権だって六位くらいの位置にはいる。

状況によって変わりけりだし六位なんかないも同然だけれど。


「つまり、それしか方法がないと…」


「王太子が婚約の意思を見せて、国王陛下が王命を出せば取り返しがつかない。魅了を解く方法が現状ない以上おかしなことになる前にそうする」


ミラはしゅんとする。

自分に出来ることがないのが悔しくてたまらないと言った表情だ。僕にも覚えがある。


「落ち着いたら婚約解除できるよう手は出さないし、もしそのまま結婚になっても、絶対幸せにするって、アトリアには言った」


「リギルさん……」


正直、僕の方もシャウラには愛着が湧いてる。

優しくて賢くて可愛いらしい子だ。

まだ中身が大人なのもあって妹のようにしか見れないけど、大人の立派なレディになったら好きになれるんじゃないかって予感はしてる。


「リギルさん…クソ鈍感野郎なのに…」


「なんて??」


いまめちゃくちゃすごい悪口言われなかった?


「いえ、シャウラ様が受け入れてくださるなら問題無いのでは…まあ私に口を出す権利はないです…」


なんかめちゃスルーされたけどまあいいか…。


「君はシャウラちゃんを1番に思ってくれてるから話しとかなきゃって思ったんだ」


「まあ誠実なところは評価します…。男の人なら異世界転生したら異世界チーレム無双だ!女の子といっぱいイチャイチャするぞ!ウヒヒ!ってなってるんじゃないかと思ってましたし…リギル様ほどのスペックがあれば出来なくもないですし…、シャウラ様を大切にしてくれるなら……」


偏見はめちゃくちゃすごいけど転生に気づいてすぐそんな感じのことを考えてたのでぐうの音も出ない。


「他に好きな人もいないし、大切にするよ。まあもちろん、シャウラちゃんが受け入れてくれればだけど…」


シャウラちゃん、可愛いし。


王族はより優秀な遺伝子を残さなきゃいけないからともかくとして、貴族同士の婚約でも割と本人たちの意思というのは大切だ。

特に相手がいないなら王命に従えとはなるけど、他に慕っている相手がいるならそっちが優先される。

もちろん家柄によって優先度合いも変わっては来るけれど。


だから今1番大切なのはシャウラがどうしたいかだ。

アトリアも事前に話し合ってはくれるらしいけど、どうなるか多少不安だ。


準備としてとりあえず両親にシャウラを婚約者にしたい旨は話したし、シャウラの家に婚約を申し込む手紙とかも用意した。

めちゃくちゃ悩みながら書いた。


この努力が報われて、みんなが幸せになれるように。



ああ、胃が痛い。




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