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27・昏き星の救世主

くらき星の救世主メシア


僕が身を置いているのはこの続編である“明けし星の輪舞曲”だけれど、大元でありベースの前作”昏き星の救世主”はもちろん切っても切れない関係だ。

リギル・ユレイナスは名前すらも昏き星には出てこないが。


この国は大昔、古の魔族と現在では呼ばれる種族によって危機に晒されていた。

悪魔族とも呼ばれるけど、単純に魔族と呼ばないのは現在存在する魔族は人間に害を及ぼさない存在だからだ。

魔族と言ってもまた種族が分かれるのだけど、まあ魔族というのは単純に言えば魔力を大量に生まれつき持っていて、魔力=生命力の人間より長命の存在だ。


古の魔族とはその中の一種族で強欲で傲慢、力こそ全ての乱暴な一族で他の魔族も苦手にしていた。

見た目は同じでも魔族は人間と身体の作りが違うせいか魔法の使い方も違うから様々な魔法を扱える。

それを悪用して魔法で人間や亜人の国に戦争を仕掛けてそれこそ世界を征服しようとしていた。


当時人間も魔法を使えなかったが古の魔族のあまりの横暴っぷりに辟易した精霊たちが人間に力を授けた。

それが最初の聖女と勇者だったらしい。

何故力を与えたのが精霊だと分かったのかと言うと、最初の原初の聖女は小さな頃から精霊の声が聞こえていたらしく、啓示を受けたんだそう。


乱暴な古の魔族に精霊から受け取った光の魔力はすこぶる効いた。

聖女の魔力が古の魔族の力を削ぎ、同じく力を授けられた勇者が古の魔族を打ち倒し、人間の国は守られた。


同じ事が無いようにと精霊は少しずつ気に入った人間に力を与えて魔力を持たせた。

さらに気に入られたら加護を受けて強い魔法が使えたりして…。

その精霊に好かれる体質の血筋が力を持ち、今の貴族になって、勇者は聖女と結婚して、当時の王から王位を譲られ、今に至る。

光魔法が神聖視されるのはまあこういうことだ。


人間と魔族の魔力は違うらしいけど便宜上同じものとしているだけって考察もあったけどまあ出自が違うからそうかもしれない。


前置きが長くなったけど、そんな光魔法を強く発揮するのが“昏き星の救世主”の主人公、アンカ・オルクスだ。

基本的に今は貴族にしか精霊の加護は発現しないけど、精霊もまあ気まぐれなのでごく稀に平民に加護が発覚することがある。

その為生まれたら国民全員加護があるか調べなきゃならない。

そして生まれてすぐ光の精霊の加護があると発覚したのが彼女だった。


数が少ないのか、はたまた精霊でも時に気まぐれなのか、ぶっちゃけ詳しいとこは知らないけど、光の精霊の加護は100年に一度あるかないか。

だからこそすぐに聖女と祀り上げられて貴族籍に入れられた。


そんな主人公は15歳になり、魔法学園に入ることになる。

そこで運命の相手に出会い、恋に落ちる。

攻略対象の魔力の暴走を愛の力で鎮めたり、滅びたはずの古の魔族の残党の企みを攻略対象と共に防いだり、時には古の魔族の一族の末裔である攻略対象の一人と恋に落ちてバトエン…。


ちなみにその古の魔族の末裔ヴェラの攻略対象にも流用されてる。ふざけんな。


そんな“昏き星の救世主”はラブエン、ノマエン、バトエンが用意されていて(末裔ルートはラブエンがメリバ)ノマエンですらなかなか鬱なのもあったけど、まあストーリーが豊富で細かい補足おまけストーリーがあったり、人気のゲームだった。

ただ、無かったルートがひとつだけある。


「アタシは逆ハーレムエンドを目指すのよ。アンタは練習台だったのに」


「は??????」


意味わからなすぎて、腹の底から低い声が出た。


“逆ハーレムエンド”とこの女は口にしたのか。


前世やったゲームで男モノでもハーレムエンドはあったし、乙女ゲームでもたまにあったけど“昏き星の救世主”には無かった。

キャラクター同士の関係性を鑑みても、ぶっちゃけ無理だからまあそうだよなって感じだ。


「いや無理でしょうよ」


ゲームでも無理だったのに、逆ハーレムを目指しているとはこれ如何に????

まず普段のアトリアの王太子嫌いっぷりの様子を見るにも同じ女性を仲良く愛するとか無理よりの無理だ。

他にも問題なんて沢山ある。

そもそも一夫多妻ですら許さない国なのだし。


「アタシはヒロインだからいいのよ」


「なん??????」


ちょっと理屈が分からない。おバカなんだろうか。


「アタシはヒロインだからみんなに愛されるべきだし、そういう運命なの。アタシが本気になればみんなアタシに媚びへつらうのよ。みんなアタシを好きだし、みんなアタシのモノなの」


ドヤ顔で語るアンカを前に頭が痛くなってきた。

何でこんな自信満々なの??怖すぎる。


「アンタは転生者だからダメだったけど」


そういう問題ではない。


「アンカさん、あの、“昏き星の救世主”はちゃんとやりました?」


思わず敬語になってしまった。

なるべく距離を取りたいという防衛本能である。


「やったわよ。10周くらい。えーと…続編も…タイトル忘れたけど途中までしたわ」


昏き星はだいぶやり込んでるのに続編の明けし星はやり切ってないのか…。

まあ鬱すぎて挫けた人もいるらしいしそこは追及しない。


「ならキャラ同士の関係性とか、色々考えても無理なのは分かるでしょ?」


「アタシはヒロインだから大丈夫よ」


宇宙人かなんかなんかな?????


ダメだ話が通じない。ユピテル助けて。


「脇役のクセにうるさいわね。転生したのが脇役なんだから脇役らしくしたら?ふふん、私はヒロインだけどね」


クッソムカつく。


「とにかく大丈夫なものは大丈夫なの」


「いや、無理は無理だってば…」


一体何処からこの自信が出てくるのか。


「そもそもこの世界はアタシの為にあるようなものじゃない?アタシがヒロインだから。まあ続編にもヒロインはいたけど…、愛され系ヒロインは私だけじゃない?」


愛され系ヒロインとは?


「アンタも顔は良いし可哀想な生い立ちだから仲間に入れてあげようと思ったのに…転生者なんてね…」


仲間になるなら逆立ちしながら鼻からスパゲティ食べたほうがマシです。

残念だわ、アタシを好きになれないなんて可哀想なんて呟くアンカに対してサイコパスなのでは?と思い始めてきた。


「そもそも、好きなキャラとか居ないの?推しとくっつきたいとかないわけ?」


それなら僕にだってサポートはできる。

逆ハーレムは論外。


「みんな好きだわ。イケメンだし。仲間外れがいたら可哀想でしょう?みんなアタシが好きなのに」


いや今の時点では好感度0ですけど…。


正直言ってこの子ちょっと危ういのでは??

あっちこっち行って男を取っ替え引っ替え…なんて事態になれば聖女とはいえどうなるかは想像はつかない。

周りを巻き込んで不幸にするのは必至だし、本人だって…。


「…、あのさ、ゲームに元々ハーレムエンドがないんだから無理だよ。1人に絞ったほうがいい。正直その…危ないんじゃないかな……」


「…、………」


真剣に訴えて、彼女の顔をしっかり見るとキョトンとした顔をしている。

これ、もしかして伝わってないかなあ。


「あら、やっぱアタシに惚れたの?えへへ、独り占めにしたい的な?ちょっとくらい構ってあげるわよ?」


やっぱり伝わってないなあ!!!!!


これ、無駄かもしれない。

入学して現実を見れば諦めるかなあ、命が危なかったら助けるかな…。


「あ。貴方は続編したの?カフは続編の攻略対象?」


「ええ…?いや、ユピテル……、僕の執事が攻略対象で…カフはユピテルの召使、的な…まあサブキャラだよ…」


サブキャラ…なるほどねえとアンカは呟く。

本当に続編やってないんだなあ。


「ええと、ちなみにファンブックは読んだ?」


昏き星の救世主と明けし星の輪舞曲のファンブック。

未収録スチルやラフ、初期設定、裏話ナドナドが盛り込まれた分厚い一冊だけど僕はゲームやりたい派なので買わなかったし読まなかった。

知らないこの世界の設定だし今となっては読めば良かったけど。


「そんなのあった???」


アンカが怪訝そうな表情をした。


うん、僕以上の情報持ってないなコレ。

完全に関わり損です。


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