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01・チーレム無双とかでは決してなかった

ふわふわと意識が浮遊している感覚がした。


うっすら目を開けると眩しい。


生きていたのか、僕…


病院か?妹は…?


身体が重いが不思議と痛みの方はなく、でもこれは多分生きてる感じだ。

あれ自体もしかして夢だったのか?


僅かに身体を起こすと、


「坊っちゃん!?目を覚まされたのですね?!」


女性の高い声にハッと意識が覚醒した。


意識がはっきりしてキョロキョロと当たりを見回す。


豪華な天蓋付きのベッド、アンティーク調の机や椅子、クラシカルなロングメイド服を着た年配の女性………


え、どこここ。


「ああ、良かった。すぐに、すぐに奥様をお呼びしますね…!」


瞳に涙を溜めた年配の女性はそう言うと僕にお辞儀を軽くして部屋から出て行った

たたた、と走るような足音が聞こえた。


「あ……」


何が喋ろうとして喋れないことに気づいた。

喉がガラガラだ。

ベッドの脇を見ると水の入ったガラスポットとひっくり返されたグラスがあったけど、勝手に飲んでいいのが分からず、とりあえずベッドを降りることにする。

このベッドやけにでかいなと思うのと、自分が縮んでるのに気づいたのは同時だった。


「い、異世界転生……?」


そんなまさか。


呟いといて首を振る。


でもオタクな僕にはこの状況が異世界転生だとしか思えなかった。

チート能力を持ってて世界最強とか謳われてハーレムとか築いちゃうとかいうやつ????

前世の記憶を駆使して様々な問題を解決して英雄になっちゃうとかそういうやつ????


ぺたぺたと小さい足で部屋の隅にあった姿見の前まで行く。


「うおっ…び、美少年……」


思わずそう言うほど、鏡に写った自分は美少年だった。

美少女と言っても過言じゃない美少年だった。

まじで。


白銀色のキラキラ光るサラサラした髪と、ルビーを溶かしたような赤く輝く瞳に肌は男とは思えないほど白くて滑らかだった。


一瞬マジで男か?と思って確認しようとしてさっきの人が坊っちゃんって言っていたのを思い出してやめた。

なんかまだ、自分って感じがしなくて悪いし。

ショタコンな趣味はない。


でも何かどっかで見たことあるような…


姿見の前で色々悩みながら首を傾げたり顔を触ったりしてみていると閉まっていた部屋の扉がばんっと音を立てて開いた。


「リギルッ…!!!」


ビクリと僕が肩を震わせるのとその声は同時だった。


リギル?僕の名前?


入ってきた女性は、それはそれは超絶美人だった。


華美なドレスを身に纏う彼女はドレスに負けないくらい華美でプラチナブロンドの髪は眩く、ピンク色の瞳からは涙が流れていた。


僕が振り返ると間髪入れずに女性がギュッと抱きしめてくる。


うおっ、めちゃくちゃいい匂いがする…。


「良かった。リギル…、母様は…貴方が死んでしまったらどうしようかと思ったわ……」


はらはらと涙を流す女性にすごく戸惑った。


どうやらこの人は僕の母親らしい。


「あ、あの、僕、は、何があったんでしょう?」


首を傾げて聞くと、一瞬キョトンとした母親はボロッと大粒の涙を流した。


まずいこと言っただろうか。


「坊っちゃん、坊っちゃんは、熱病で生死を彷徨っていたのですよ。ここ一週間ほどずっと意識が無かったのです」


ハンカチを母親に差し出しながら先程のメイドがそう言った。

母親と一緒に入ってきたらしかった。


「可哀想に…、ずっと寝ていたから記憶が曖昧なのね…」


「体調はいかがですか?もう少し横になっていてくださいまし」


メイドが心配そうに促すので、大人しくベッドに戻ることにした。

ベッドに戻ると母親はベッドの脇の椅子に腰を掛けたがまだ泣いている。

リギルは相当心配をかけてしまったらしい。


ここで僕の名前はどこのリギルですかとか聞いたら更に泣かせてしまうかもしれない…。

とりあえず家名を知るのは後にしよう。


「もう、だいぶ大丈夫だよ」


メイドにそう言うとそれはようごさいましたとメイドが微笑む。

メイドに敬語使うのはおかしいよね?合ってるよな僕…


「ヴェラもね、心配していたのよ」


ヴェラ?


聞いたことがあるようなないような名前に首を傾げる。

でもここで聞き返すのもよくないよな…。


「お兄ちゃまと一緒に寝るとごねていたのだけれど、熱病が感染ると良くないから…二週間近く会えてないから……」


続いた母親の言葉でヴェラというのは妹か弟であると確信した。


「騒がしくしてごめんなさいね、ゆっくり休んでリギル。ヴェラと父様にも伝えておくから…、ヴェラは貴方の体調を鑑みて明日…、父様はお仕事を終えたら様子を見に来ると思うわ」


母親が僕の手の上に優しく両手を重ねて微笑んだ。

何故か、胸がギュッとした。


そういえば前世では早くに両親を無くしていたからこういうのは忘れてたな…。


「カルラ、リギルに軽く何か食べさせてあげて。母様はヴェラや父様に伝えてからまた後に様子を見に来るわね」


「…はい、母様」


優しく僕を撫でる母親に僕は思わずそう返事していた。


「いい子ね」


「すぐに消化にいいものをお持ちいたします」


母親が部屋から出るとメイドのカルラもそう言ってお辞儀してから部屋を出た。


身体を起こしていた僕はぽふんとベッドに身体を倒す。


ここは、どこだろう。


一人になって静かな部屋で思考が巡る。

どうやら裕福な家であることは確定だ。

メイドや母親、部屋の中を見てみればよくある中世ヨーロッパ風の異世界なんだろうな。


転生なのかリアルな夢なのかはよくわからないけど、夢にしてはリアルすぎるような気がする。


「リギル……、ヴェラ……」


どこかで、最近聞いたような。


「あ…」


もしかして、乙女ゲーム?


最近やってたのは専ら乙女ゲームだった。

だとすると、


「乙女ゲームの攻略キャラ…?」


絶世の美少年(自分で言うのもなんだが)だし、充分ありえる。

攻略キャラ、もしくは攻略キャラの兄弟、親戚……

この顔じゃ中心的な人物じゃなかろうか。


でもハマってたとはいえ野郎の名前なんかに興味はない。

好きだったのはどっちかって言うとヒロインで…


ヒロイン………


「あれ…、ヴェラって一番最近やった乙女ゲームのデフォルトネームじゃ……」


そう思って、さあっと血の気が引いた気がした。


「え。じゃあ僕、悪役じゃね?」


ヴェラというヒロインには確かに兄がいた。

リギルという兄が。


でもそのリギルは将来的にはヒロインを酷く嫌って虐めて、家から追い出すように無理矢理政略結婚させるのだ。


しかもこのゲーム


「ヤンデレだらけの超鬱ゲーだ………」


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