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145・結局何も決まらない

ユレイナス公爵家の歴史は他の公爵家より浅い。

というのも、そもそも他の公爵家はこの国がプラネテス王国になる前から、つまり今の王家より昔から貴族だからだ。


とはいえ、その時から公爵家だったわけでなく、爵位はバラバラだった。

当時の勇者と共に力を受け古の魔族と戦った貴族たちで特に武勲を立てたのが今の公爵家とされている。

その折、力を持たないものは平民になったし、平民から貴族になった者もたくさんいた。

その為この国では魔力を持つ家系が貴族だが、他国ではその限りでも無かったりする。


その中でユレイナス公爵家は勇者として一番強い魔法の力や精霊の加護と啓示を受けた平民の青年の弟だった。

勇者の次に強いほどの魔法の力を受け、勇者と共に最前線で戦った。

民や貴族たちが勇者を王としたように、勇者は勇者の弟にも“公爵”という地位を与えたのだ。


弟無くしては私の勝利は無かったろうと勇者は言い、黄金の髪の色をした勇者は太陽、白銀の髪の色をした勇者の弟は月に喩えられたそうだ。


それからユレイナス家は筆頭貴族として力を持ち陰ながら王家を支えてきた。

実は自領のことだけでなく、王城のことも多少担っているので父様は多忙なのだ。

ケレス家が宰相の仕事を担うようになってからこれでだいぶマシにはなったらしい。


ユレイナス家の娘は何度か王家に嫁いでいるし、王族がユレイナス家に降嫁したこともあった。

そして今やシャウラと僕の婚約でエリス公爵家と切っても切れない関係を持っている。


元々王族の血筋だとされている上に王族の血を定期的に入れていて、そこからそうなったので、これ以上ユレイナス家に力を持たせることはあまり良くないと王家は考えるだろう。

友好的な関係ではあるし、ユレイナス家は保守派(王族を存続させたい派閥)なので力を持ったからって何をするわけではないのだけれどね。


そもそもユレイナス家をそういったことで力を持ち過ぎているという理由で排斥したい貴族(保守派でも王族絶対信仰みたいな奴ら)も少なくないし、下手なことはできない。

だからこそヴェラは王太子の婚約者候補からは完全に外れていたし、それでこれからも無いだろうと考えていた。


なのにそこに王太子の不人気、という要素が加わってしまい、僕の名前が『王族の血筋だし、性格も能力も王に相応しいのでは?』と改革派の(今の王政に疑問がある)貴族の話題に出されることになってしまった。


そこから保守派の中で王族は自らの地位を保つためにどうするべきか…?という話になる。

その結論が貴族にも民にも人気のユレイナス家をいっそう取り込もう、となってしまったらしい。

しかも、ヴェラを僕や公爵とうさまが溺愛していることは牽制の意味で隠して無かったのだが、むしろ王族がヴェラを娶ってしまえばヴェラを盾にできるという方に取られてしまった。力を持ちすぎてもヴェラがいれば抑えられると。


だから今の王族に失脚して欲しくない保守派貴族たちがヴェラと婚約させた方が良いのではと言い出しているらしい。

王家の判断はまだ分からないし、王太子自身が未だ聖女に心酔しているのでどう転ぶかは分からないが、最悪を避ける為にはヴェラに偽造でも婚約者が必要だ。


王家に対抗できるのは教会のみ。自由恋愛を重んじる教会で書類でも形でも婚約を誓えば、王家が無理に破棄させることは出来ない。


とはいえ、ヴェラの偽婚約者として都合の良い人間なんてそうそういない。


ヴェラに恋愛的な興味を持つ可能性が低くて、あまり婚約によって影響が無さそうな貴族で、ヴェラが惚れたりしなさそうで、でもヴェラを丁寧に扱ってくれそうでヴェラに優しくしてくれてヴェラと並んでも見劣りしなさそうでヴェラを優先して尊重してくれて、


「それで全く何も決まらなかったんですか?」


ユピテルにそう言われて、僕はウッと唸った。


「…、本人の意見が一番大切だからね」


「それは詭弁では?」


ユピテルは呆れた顔をする。男二人でうんうんと唸りながら話し合って、結局何も進展しなかった。

結局ユピテルだけには相談して良いから考えておいてくれと押し付けられた形ではある。

でも父様のあの様子では候補を連れて行っても軒並み却下されそうなのだけど。


「多少は妥協が必要かと」


「ヴェラに関することで妥協なんか許されないんだよ…」


僕の婚約者に関してだってそうだ。シャウラみたいな可愛いくて優しくてヴェラにも優しくしてくれてヴェラを大事にしてくれる人なんて奇跡の存在。

めちゃくちゃ運が良かったのだ。


「ヴェラ様はお可愛らしいので人間のオスが発情するのも仕方ないことです」


「おいやめろ。その言い方マジでやめろ」


ユピテルが首を傾げながら何故?と言っている。これだからユピテルってヤツは。


とはいえ、ヴェラ本人の意見が大切なことには全くもって変わりはない。

結局ヴェラ抜きで話し合うことでもないという結論だけは出たのは本当の話だ。


しかし、ユピテルの言い方はだいぶアレだがヴェラの婚約者という地位を仮にでも手に入れたのなら誰でもヴェラを好きになってしまうのではないだろうか。

それを踏まえるとヴェラと交流がある人間から選ぶのが一番良いのだが、候補がリオくらいしかいない。

アレは色んな意味でダメだ。マジで。


あとはもうユレイナス家は保守派から抜けて、王族の言うことは聞きません!スタンスを取るしかないが、争いになることは避けたい。


「ぐう…、ヴェラが魅力的すぎる…」


「リギル様ってお会いしたときから全くブレませんよね…」


「それ褒めてる?貶してる?」


僕がじとりと睨むとユピテルはさあ、とはぐらかした。これは絶対に貶してる。

クソどうしようもないシスコン野郎だって思っているんだ絶対。

そうです僕がシスコンお兄ちゃんです!悪いか!!!


「もう古の魔族ほったらかしにして王族滅ぼしては?」


「恐ろしいことを言うな」


ってかユレイナス家も王族の血筋なんだってば。


ユピテルの言う王族に僕ら入ってはないんだろうけど、古の魔族からしたらどうかなんて分からない。


「リギル様が国王になるのもアリかと思いまして…」


「ナシよりのナシだから」


ユピテルがえー?と言いながら曇りなき眼で見てくる。完全にその方が面白いのにと思っている。

ちょっと自意識過剰かもと思うけどこのドラゴン僕のこと気に入りすぎてない?本気で王にされたりしない???

僕の将来の夢はかわいいお嫁さんと妹とのまったりライフなので公爵より多忙な国王なんか勘弁である。

まあ、今の国王は宰相や父様に仕事の八割押し付けつつ、楽してるんだけどね!殴りたい。

父様に昔、王族の認可が必要な書類をお前でもギリできるだろと王様に押し付けられてると聞いてまじで度肝を抜かれた。

自分の身の安全や地位固めに関することばっかに精力的で本当に嫌な王様である。


ユピテルに以前そのことについて愚痴ったら王族なんて普通は下の者に上手く仕事を押し付けて踏ん反り返るものですし、プラネテス国王は仕事している方では?と言われた。

ユピテルの認知が歪んでるのかマジでそういうもんなのか分からなくなってしまった。


でも仕事量を見れば本当は王様ってすごい大変で忙しいはずなのである。

僕がやろうと思ったら今の国王みたいに上手く他人になすり付けたり出来ないので無理だ。


あと僕が国王になるのは王子二人が不慮の事故にも遭わない限り普通に反逆だからね…!





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