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141・友達になりました!

「聖女様の説得に成功して、お友達になりましたわ!」


「オッ…?マジで……?」


シャウラにそう言われて、僕は思わずそう答えていた。

ちょっと手ごたえがあったような気もするが、あのひねくれようじゃもう無理かなと思っていた。

昨日シャウラが聖女の元に行ったのは知っていたので、今日になってどうなったのか聞いたのだ。

ちなみに今は馬車でこのままユレイナス家に向かい、放課後お家デートの予定だ。


「ええ。たくさん色んな話をしました。彼女も彼女なりに思い悩んではいたようです」


シャウラは優しい。聖女の前世の話を聞いて心を痛めているようだった。

そんなシャウラだから聖女…いや、アンカも心を開いたのだろうか。


「聖女様はあめりかという国の出身らしくて…、リギル様はご存知ですか?」


「えっ、そうなの?そっか…、外国の子だったんだ…」


そういや昏き星の救世主はアプリ版が配信をされていて、外国版があったはずだ。外国の人でもやっていてもおかしくはない。

明けし星のほうも僕が死ぬ少し前にアプリ版が配信されて、外国の人が鬱すぎる、幸せはないのかって嘆いていた。

少し齧っていた程度だからあまりゲームについてよく知らなかったのかもしれない。


ハダルは自分を元女子高生とは言っていたが出身がどこかは聞いてない、けど日本語を知っていたし、ミラについては攻略本ファンブックは国内のみの販売だったので二人とも確実に同じ国出身だろうけど。

だからアンカも日本人だと勝手に思っていた。

でも転生者が日本人だけなんて誰も言ってないしな。


「みどるすくーるに通っていたと仰ってましたわ。もうすぐ卒業する予定だったらしいです」


「ミドルスクールで卒業間近…、なら十三歳くらいだね」


ミドルスクールは日本で言う中学校だったはず。だいたい十歳から十三歳が通うはずだから卒業間近なら多分そのくらいのはずだ。

十三歳なら随分若いな、それなら現実をすんなり受け入れられるはずも無いし、まだ詳しい話は僕は知らないが、もし事故なら死んだのはショックだったろう。

もっと僕が細かく話を聞いてあげるべきだっただろうか、と思うも今更仕方ないことだ。


「彼女の心のケアをシャウラに任せても大丈夫?」


「はい、もちろんですわ」


シャウラは優しい笑顔でニコッと微笑む。僕の女神はさすがだぜ。

ミラの方が話が合うかもしれないがこれからミラは真聖女となるので立場的に無理なんだよね。


そこまで話したところでユレイナス家に着いた。馬車から降りるのにシャウラをエスコートしてそのまま屋敷まで帰っていく。

屋敷に入ると甘い匂いがしてきた。ヴェラがまた何か作っているのだろう。


「そういえば、この前のお菓子作りは楽しかったですわ。また開催して下さいとヴェラ様に伝えなくてはいけませんわね」


甘い匂いを嗅いで思い出したのか、シャウラがクスッと笑いながらそう言った。


「ヴェラもきっとまたやりたくてウズウズしてるよ」


僕もシャウラの様子を見て笑う。ヴェラは同年代の令嬢と遊ぶよりミラとシャウラにお菓子作りを教えて貰ったり、勉強を教えて貰ったり、刺繍の練習に付き合って貰ったり、そういうのが好きらしい。

とはいえ周りがユレイナス家を尊重するので浮いてるとか嫌われてるとかではなく、そこそこお茶会だの仲良くはやっている。

まあ若い令嬢の間にも親に言われてとかの打算とかはあるので、シャウラやミラのほうが気兼ねなく接せるのだろう。


「さすがですわ〜、とか、そんなんばっかりなんですよ」


部屋で会話していたシャウラと僕の元にお菓子を運んできたヴェラ(実際に持ってきたのはお馴染み巻き込まれユピテル)はそう言いながら頬を膨らませた。

僕が同年代の令嬢とのお茶会は楽しい?と聞いてみたからだ。


「そうなの?」


「はい。何を言ってもヴェラ様はさすがですわ、すごいですわ、博識ですのね知りませんでしたわ、ヴェラ様はセンスが良いですわねとか、ヨイショしてくるんです」


「ヨイショとは?」


シャウラの質問にヴェラは唇に指を当てて、はて?と首を傾げる。そういやヨイショも前世くらいでしか使わなかったな。

ヴェラは結構意識せず前世の言葉をふと使う。


「まあ持ち上げて褒めることだよ」


なるほど、とシャウラとヴェラ。にしても、さすが、知りませんでした、すごい、センスが良いって男をオトす為のさしすせそかよって感じだ。


「とにかく大したことなくても褒められるばかりで、あまり面白くはないです」


ヴェラはそう言いながらマカロンを齧った。

今日ヴェラが作ったマカロンはミラの前世レシピのもので、マカロンって難しいらしく、ちょっとヒビが入ってしまった。

でも味自体は美味しいのでまた再チャレンジするらしい。


「ヴェラ様も大変ですわね。私はお茶会なんて行く機会はありませんでしたが…何か困ったことがあったら相談してくださいましね」


「シャウラお姉様〜っ」


ヴェラが潤んだ瞳で感激しながらシャウラを見つめてからギュッと抱きついた。

あらあらよしよしとヴェラを撫でるシャウラと嬉しそうにすりすりしているヴェラが可愛いくて尊い。

なんて幸せな空間なんだ。


後ろからこそっとユピテルが「お顔がだらしないですよ」と声をかけてきた。うるさいやい。


「あの、そういえば聖女様とはお友達になれたんですか?お兄様が心配していたので」


ヴェラは顔を上げるとシャウラに問いかけた。

確かに昨日シャウラが聖女のとこに行ったから心配だと僕はボヤいた気がする。ヴェラも気になっていたのか。


「もちろん。お友達になれましたわ」


シャウラがそう答えながら笑うとヴェラもぱあっと明るい笑顔になった。かわいい。

かわいすぎるので人間世界遺産に認定されないか心配だ。


「私も聖女様とお話ししてみたいのですがだめでしょうか?」


オッ、マジで?(二回目)


「まあ…。そうですわね…」


シャウラが僕をチラッと見る。実はあまり仲良くしているのが公にバレると良くないので、シャウラは細心の注意を払って行動している。

聖女が偽物になったとき、共犯者にされたり、聖女が逃げたことに協力したのがバレたら困るからだ。


「今は難しいかな」


僕がそう言うとヴェラはちょっとしゅんとしたが、お兄様がそう言うならと健気に笑ってくれた。

ヴェラの気遣いと健気さが辛すぎて泣く。


隣国にアンカを逃したら、ハダルのところ預かりになるだろうからハダルに会いにいく名目で会うことも出来るだろう。

そうなったらヴェラもアンカと話す機会はできるはず。それまで待って欲しい。お兄ちゃん頑張るから。


「いつか話せるから待ってて」


僕がそう言いながらヴェラを撫でると、ヴェラは嬉しそうに僕の手を両手でギュッと掴んで僕の手のひらを自分の頬に当てた。


「はい!えへへ、お兄様大好きです」


そう言いながら、頬を僕の手のひらにすりすりする。


成仏した。

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