表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/174

12・攻略対象は抜群に顔が良い

「何かの間違いじゃない…??」


リオと教室の前まで来て、ポツリとそう言った。


「間違いじゃないって!名前もちゃんと書いてあるし」


教室に入る何人かの生徒が何でいるんだ?みたいな目でこちらをちらちら見てくる。

前世が陰キャだから被害妄想かもしれんが。

でも、ユレイナスの兄妹は王族筋の公爵家なのに精霊の加護を受けてないという話は結構有名で下の爵位の子供に馬鹿にされたようなことは何度かあった。


「ほら入ろう」


「ぅう〜……」


リオに背中を押されて教室に入る。

僕以外全員加護持ちの優秀者の筈だから、なんか、罰ゲームみたいな気分だ。


「これ席は決まってんのかな」


リオがきょろきょろと周りを見る。


「決まっていないよ。自由席」


柔らかい口調の声は後ろから聞こえた。

振り向くと、紫色の長髪をポニテに結わえた金色の瞳の男子が立っていた。


アッ、攻略対象だ。


考える間もなく反射的にそう思ったのは彼の顔が整っていたからだ。


「エリス公子様」


「様は特にいらないかな」


リオの言葉にそう答えて笑ったのはやはり攻略対象だった。

ヴェラを主人公とする二作目ではなく、一作目の昏き星の救世主の攻略対象、アトリア・エリスだ。


アトリアは雷の加護持ちの公爵子息で、悪役令嬢シャウラ・エリスの兄…。


「この学校は社交性を学ぶ場でもあるけど立場はみんな同じ生徒、あまり畏まらないで欲しいな。私にも砕けた口調で話して欲しいかな」


「あ、わ、分かった」


リオは戸惑いながらも頷く。


「ユレイナス公子も…」


アトリアはちらっとこちらを見る。


「リギルで良いよ。アトリアって呼んでいいかな?」


「もちろん」


「オレもリオで。えっと、オレもいいかな…」


「もちろん、構わないよ。二人とも、よろしく頼むよ。良かったら近くに座ろう」


アトリアがニコニコと僕たちに友好的に話しかけてくれたおかげか、クラスの雰囲気が少し軽くなったような気がした。

エリス家は公爵家ということもあるけど、今のエリス公爵が社交的なこともある他の家からは絶大な信頼を得ているし、アトリア自身も性格が良いため人気があって、アトリアの行動は結構影響がある。


ゲームでも王子より王子らしいって言われるくらいはテンプレの王子様みたいな性格をしていた。

あとこのアトリア、若干シスコンなのだ。

仲良くなれそうだと思う。


窓側の前の方の席に三人横並びで座ることにした。

窓側からアトリア、僕、リオの順だ。

なんでか僕真ん中にされた。


アトリアの方をちらっと見る。

紫色に少し黒を混ぜたような髪に日光が反射していた。

アトリアは所謂三白眼だけど、イケメンの三白眼って感じで目元もキツくなく、若干タレ目だ。

金色っぽいなって思ってた瞳の色は近くで見るとどちらかと言うとオレンジに近い黄色で、山吹色って感じの綺麗な色をしている。


「リギルは筆記試験はトップだったそうだね」


「えっ?」


本人ボク、初耳。


「まだ聞いてなかったかい?学長と父が友人で、私もさっき学長に会って聞いたんだ。ユレイナス公子は筆記試験がトップで魔力もバランス良く高いからSクラスにしたって。加護なしでSクラスは敬遠されることもあるから積極的に話しかけて欲しいとも言われたよ」


そ、そういうことだったのか。


僕が納得するのと同時に聞き耳を立てていたクラスの生徒たちも納得したようだった。

アトリアがニコッと笑う。

わざと周りに聞こえるように話してくれたんだろうな。

気を遣わせてしまった。


「でも頼まれなくても仲良くしたいと思ったんだ。リギルは優しくて親切だって聞いていたし、妹をすごく大切にしているって話も聞いたからね。私にも妹がいるから親近感が湧くなぁって」


やっぱりシスコン仲間であったか……


「そういうことじゃないんじゃ…?」


僕の顔を見てリオがぼそりと呟いた。


何だこいつエスパーか????


「妹のシャウラは来年魔法学園に入るから機会があったら仲良くして欲しいな」


「もちろん」


「妹は素直じゃないけど、そういうところも可愛いし根はいい子なんだよ」


素直じゃない…、そういやシャウラは若干ツンデレだったような気がする。

不憫な生い立ちやルートによって不幸になる事も踏まえて、実は根は優しいとかでシャウラも一定数のファンがいた。

見た目も可愛いしな。


「アトリアの妹ならいい子なんだろうな」


「リギルならお嫁に貰ってくれてもいいよ」


「お、王太子の婚約者候補だろ……」


一作目の攻略対象である王太子の婚約者候補は5人。

いずれも公爵家から伯爵家の令嬢で王太子と歳が1、2歳離れている程度で特に問題が無ければその中から選ばれることになっている。


シャウラは唯一の公爵家の娘で最有力候補だった。

というかシャウラ自身も王太子が好きだったのだ。

だから聖女とはいえ王太子対して遠慮なく振る舞う主人公に注意したりしていた。

シャウラは軽く牽制や注意する程度だったけど周りの取り巻きがやり過ぎて…あとはまあお察しだ。


「実のところ王太子は苦手なんだ」


アトリアが苦笑いしながらひそっと言った。

王太子はかわいい顔してかなりの腹黒だ。

他人を道具扱いしているドS…ヒロインのおかげで改心するんだけど。

まあ、苦手というのはわかるかもしれない。


「だからリギルがシャウラをお嫁に貰ってくれたら嬉しいなあと、個人の希望だよ」


婚約者候補といえど本人の意思が尊重される。

例えば僕がシャウラと恋人になれば、王族筋の公爵家ってのもあって問題なくすんなり許されるだろう。

なるほど見事な企みだ。


「まあ今のところは私と仲良くしてくれ」


にっこり笑う彼からはいずれ妹とも仲良くして欲しい、と言う本音が透けて見えた。

まあ僕もヴェラが王太子の婚約者候補だったら絶対嫌だ。

少し年齢が離れてるのと有力な候補が5人いるからヴェラに話が来なかっただけだ。


「それはもちろんだよ」


僕がそう微笑むと、リオとも仲良くなりたいなとアトリアはリオにも笑いかけた。

リオもオレこそ仲良くしてくれたら嬉しいよとニコニコしている。

僕がいなかったら結ばれなかった縁かも。

なかなか微笑ましいな、と前世の記憶があるぶん保護者みたいな目線で思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ