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「目覚まし時計がなる前に目が覚めた」で始まり、「その想いは海に沈めた」で終わる物語。

今回は「目覚まし時計がなる前に目が覚めた」で始まり、「その想いは海に沈めた」で終わる物語を980文字以上で書くでした。

今回は新しいキャラですが、話としてはそれとなく繋がってます。

葵ちゃん以外名前出てないけど(笑


さて、次のお題は何がでるかなー?



目覚まし時計がなる前に目が覚めた。

カーテンの隙間から見える、夜が明けきっていない窓のむこうは、まだ薄暗い。

もう一度眠ってしまおうか……と一瞬、思うがさっきまで見ていた夢の余韻のせいか、再び眠るのは躊躇われた。


身体を起こし、窓を開けてゆっくりと朝に近づく景色を眺める。

マンションの5階から見る景色はいつもと変わらない街並をしていて、冷たい空気にぶるりと身体が震えた。

腕をさすりながらベッド横にかけてあるグレーのカーディガンを取って羽織り、また窓の外に目を向けた。


「景色は違うのに、それでも同じように日は昇るんだよなぁ」

さっきまで夢で見ていた世界とは、空気も景色も違うのを肌で感じながら、俺はため息を1つ吐き出した。

時々見る夢は、今いる世界とは色々と違う世界。


この世界で言う所の宇宙人みたいなやつらがたくさん住んでいたし、星間旅行とかも出来ていた。

後、今の世界では考えられない『魔法』が存在する世界で、俺は今世では双子の妹の葵とある意味、一緒に行動を共にしていた。


これは俺だけが持っている「前世」の記憶何だろうと思う。

それらしい話を葵を始め、その周りにいた奴らに話したことがあるが、誰も何も覚えてはいなかった。


前世の俺はちょっと特殊な立場だったから、記憶が残っているのか……と思っているが、実際のところはどうなんだろうなぁ

もし神とやらに合う機会があれば聞いてみたいもんだ。


それでも、葵がいて、あいつがいて……それから、あいつらがいた。

少し血なまぐさくて、それでも自由で、毎日が楽しかったように思う。


昇り始めた日の光が部屋の中を照らす。

俺は目を細め、眩いそれを眺めながら今の現状を考えて、小さく笑った。

「なかなか、意地悪な配役だよな。いやまぁ、無機物だったあの頃から考えたら、人間になれてるだけでも進歩……してんのかもしれねぇけどさ」

今の自分の立ち位置を考えて思わず1人ごちる。


俺の世界は今も昔も、葵が中心だった。

口もきけない無機物だった頃、葵の話相手になりたいとそう願っていた。


現世に生を受けて、何の因果か、葵の双子の兄として生まれ落ちた時、正直凄く嬉しかった。

これで葵の言葉を聞いて、それに応えることが出来るから


「でも、この立ち位置じゃ、これ以上は望めねぇんだよなぁ」


 もっと早くに気が付くべきだった。

 人でもなく、魂しかなかったあの頃、俺は間違いなく、葵のことが好きだった。

 そして困ったことに、それは今でも変わらない。


「兄妹……か」

近いようで遠いこの距離。

もてあましているこの感情を伝えてしまうと、葵が困ってしまうから。


だから、その想いは鍵をかけて、深い深い海に沈めてしまった。





読んでいただき有難うございます!

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