第一話~他人事
僕の名前は、室木秋成。ごく普通のサラリーマンで25歳だ。普通じゃない所があるとするのならば、
最近、僕の住んでいる天国市でRYOKIと壁に書かれ射殺体が発見されていることくらいだ。
そんな事件の噂について、幼馴染で同僚のめめちゃんに話してみた。
めめちゃんは、噂話や都市伝説が大好きで、あるひとつの陰謀論について口にした。
「ねぇ知ってる?RYOKI計画って!何かすごい権力者の陰謀が絡んでるみたい!」
またこの類の話にはやれやれだよ。確かに今回の事件は異質だけど、何でもかんでも陰謀論に結び付けるのには懲り懲り。
「ま~たそういう話?仮に事実だとしても僕らには関係ないからどうでもいいよ。」
「あぁ~そういうのが一番ダメだよ!何事にも関心を持たないと!」
少し、可愛げのある声でそう主張してきたが、関心はやはり持てそうにない。
「あ~そろそろ函須くんとの約束の時間?気を付けなよ?函須くん、借金して同級生からお金借りてるみたいだから」
そう言って、めめちゃんとは駅のホームで別れた。これから僕は、函須次郎という同級生に会いに行く。何やらうまい話しがあるとか…なんとかで
そしてラーメン屋に着いた。ここは僕と函須が高校時代から通い詰めている店である。
「よぉ~室木~来てくれたか~すげぇいい仕事みつけたぜ~」
仕事なら、もうあるしこいつの話は正直、ろくでもないことが非常に多いのだ。
「も~そういう話はいいよ~ラーメン食べよう。」
「そういわずに聞いてくれよ!これに成功すれば億万長者だぜ!借金もチャラだ!ハハハハハ」
すかさず函須はスマホの画面を見せてきた。そこにはRYOKI事件解明者に2億円と書かれていた。
ばかばかしい…そんなことがあるわけがないし、めめちゃんと同じ類か。
「俺とお前でタッグ組んで、解明しないか?もちろん、1億ずつ分けようぜ!」
相変わらず、頭の中がどうなっているのか見たいものである。
「そういう話だったら俺行くよ?アニメ見たいし…」
その場で解散し、俺は家に帰り、深夜アニメの視聴を始めようとする。しかし、副署長の父が、
俺にいつもみたいに口やかましく注意してきた。
「お前、アニメやネットばかり見ていないで何か資格を取ったらどうだ?」
資格なんていらない…どうせ僕みたいなサラリーマンは一生、飼いならされるだけだ。
「そういう話なら、僕は行くよ じゃあね。」
いつからだろう、親子の関係が無茶苦茶になったのは…そこには会話をしているという以外の
感情が全く存在しないのだ。
関係が崩れたのは15年前のあの事件から…か 担任の涼子先生が不審死をしたあの日…から
まぁいいや、あの時と同じようにどうせ親父は僕を信じてくれないだろう。
さーてと配信でもするか
今日も僕の放送には豊かなコメントが流れている。その八割が意地悪なコメントだけど、
どこかこの空間は心地が良いのだ。
翌日のことだった…俺はめめちゃんと何故か遊びに行くことになった。
待ち合わせの駅前、めめちゃんは待たせるのが得意なようである。まぁ慣れたけど
「ごめん待った?」
「うん厳密に言うと14分くらい」
「うわっそういうのチー牛みたい!」
自分が遅れたくせに随分な言い草で流石の僕も呆れてしまう。
「ねぇねぇRYOKI計画っておかしいよね。詳細が全く、報じられていないし…ネットでは現場の画像とかいっぱいあるのにね。」
「確かにそうだね。最初の一件目以降はあんまり情報が流れてないね。」
「政財界のお偉いさんの息子が絡んでいるとか、フィクサーが動かしているとかいろいろあるよ!」
まるで子供みたいな笑顔で話してるけど、エグいからね?内容…
「そういうのいいけど、被害者についてあまり触れられていないよね。」
「あっ!それ聞く!私ね、ここだけの話だけど…事件についていろいろ、まとめてみたの…いつか実話系の雑誌に売るつもりでね」
そういえばめめちゃんの夢は記者とかライターだったなあ あれも15年前…いや、何でもない。
「とりあえず、話だけは聞いてあげるよ。」
「あのさ、これから言うことは秋成くんには信じてほしい。嘘だと思っても…」
次の言葉で僕は衝撃を受け、その場に立ちすくんでしまう。
「RYOKI事件と15年前のあれは絶対に繋がってると思う。実は先生の無念を晴らすために、私はずっと事件を…」
ドラマや映画でしか聞いたことのないような銃声が聞こえてきた。一瞬、現実感を失うが、
目の前のめめちゃんがその場で倒れる。めめちゃんが撃たれた…!?
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫、たぶん警告だと思う…殺意はないはず…いいから犯人を追って!」
「そんなことできないよ!まずは救急車を!」
「いいから!私は大丈夫!それにこれだけ騒ぎになってるからもう襲ってこないよ…」
ここは芽芽ちゃんの想いを尊重し、犯人を追うことにした。
僕が追っている人物は、如何にも強盗の様な格好である。
「待て!」
僕は犯人に誘導されるがままに廃ビルにたどり着いた。
犯人が逃げようとしたので、昔習っていたボクシングで仕留める。
しかし、僕は今日、二度目の衝撃を受けることになった…犯人の正体は…
なんと函須次郎だった。
「函須!?なんでお前が!?」
「悪いな…秋成…めめちゃんよりも先に真実を見つけないといけないんだ!借金を返すのに!」
違う…そんなわけがない!こいつが犯人なのは認めるとしても、動機がおかしい。僕に山分けを
迫ってきたなら同じ条件で有益な情報を持っているめめちゃんと組めばいいんだ!
「誰に頼まれたんだ!?」
「言えねぇ…言ったら俺だけじゃねぇ…全部、終わっちまう!」
「悪いな、秋成!死んでもらうぞ!」
しかしその威勢の良い言葉とは対照的に、彼の手は震えていた。
「流石にお前は撃てねぇよ…15年前にいじめられていた俺を助けてくれたお前だけは…どんなひとでなしでも殺せねぇよ!!!」
「僕に恩を感じているなら、全部話してよ!大丈夫だ…誰にも言わないし逃がすから」
「奴らはそんなに甘くねぇ…本気出せば、俺なんてイチコロだし、もう引き返せねぇ!」
「奴ら?一体誰なの?」
だが次の瞬間、更なる悲劇が僕を襲うことになった…またもや銃声が鳴り、函須が倒れた。
「なぁ秋成…たぶん俺、お前に助けられなくてもこうなってたと思うぜ…でも少しだけ、長生き出来て良かったよ。」
「函須!死なせないよ!」
涙が溢れてきた。どんなにクズでも、めめちゃんを撃った犯人でもこいつは一応、親友だ!
「死なせてくれ…じゃないとお前まで殺されちまうよ…お前は日常に戻れ!まだ間に合う。」
「それとめめちゃんに伝えてくれないか…ずっと好きだったって でも許してもらえないか…撃ったんだし 俺って本当にさ、さいていだな…」
「ふざけんな!僕もお前に返せてない恩がある!給食袋泥棒で僕が疑われた時に助けてくれたじゃないか!」
「あ、ありがとうな マイフレンド」
その後、函須は病院へ搬送されるも息を引き取ったのだ。俺はふたりの大切な人を守れなかった。
めめちゃんは意識も戻り、元気になったけどまだ動けはしない。逆に今は安心…か
そしてめめちゃんのお見舞いに来た僕。めめちゃんから僕はあることを告げられる。
「函須くんから実はメールが来てたの…たぶん時間は亡くなったあとだから、予約送信だけど…」
『ふたりと過ごした時間は楽しかった。来世もラーメン行こうぜ!』
そのメールと共に一枚の写真が添付されていた。恐る恐る開くと、
BAR シャンデリアと書かれた看板だ。ネットで調べてみると、評判のいいBARが出てきた。
ここへ行けということなのか?函須の葬儀を終えた僕はシャンデリアへ向かう。
「いらっしゃい」
「あの函須から聞いてきたんですけど…」
「君が秋成くんだね?実は預かりものをしていてね。」
「このUSBにRYOKI事件について彼が追っていることをまとめていたらしい。」
そのデータの一部を見ると、15年前の被害者の近くの壁に【RYOKI】と記されていた。
もはや他人事ではない…
第一話投稿しました!にぃには親友の死を乗り越えて真相を解明できるのか!?