第2章 プロローグ
暗がりの部屋で、女の人がうずくまっている。その後ろ姿の女の人は、赤毛のカールした長い髪で、黄色いドレスを着て、腰の大きなピンクのリボンが印象的だ。そして体が小刻みに震えている。
昨日と同じだ。またわたしは部屋のどこかからお姫様を見ている。
「りこ・・・・助けて、りこ・・・・」
やっぱり今日も女の人がほんの小さな声で、なにか言っている。
「りこ・・・・助けて、りこ・・・・」
もう1度女の人がほんの小さな声で言った。昨日はここで、お姫様がこちらを振り向こうとした時にわたしの目が覚めてしまったのだ。でも今日はそうではない、まだ大丈夫みたいだ。わたしはお姫様が誰のなのか、注意深くお姫様を見る。
目をこらして見て、あることに気がついた。どうやらお姫様の右横には、なにか物があるようだ。なんだろうあれは?サイズは枕くらいの大きさだろうか?暗くてよく見えないけれど、なんか塊みたいなのが確かにある。
もっと目をこらして見ていたらその物体が動いた。ムクッと立ったように見える。そして、そのなにかがこちらに近づいて来た。ゆっくり歩いている。サイズからすると、妖精かなにかだろうか?それとも小人?
しばらくして、そのなにかの正体が、薄ぼんやりとわかるまでになった時、それがわたしの知っているある物であることが判明した。
「あっ!」
わたしは思わず声を出してしまった。その正体は、勇者のぬいぐるみだった。あのぬいぐるみは、この特別な夢にまで出て来た。
「じゃあ夜にな」
勇者のぬいぐるみが言うと同時に、わたしは目が覚めた――。




