最強デュエリスト、異世界に降り立つ③
ここはどこだ。どうしてこんな場所に。
状況を把握するヒントになるハズの【本】を開いてみるとそれは―――
カードバインダーになっていた!
「カードバインダー、懐かしいな」
最近はめっきり、デジタルカードゲームばかりだったから。
ページをめくってみる。
入っているカードは知らないものだったけど、手に持ってみると、やはりなじむ。
そういえば、さっきの雑音チュートリアルの中で聞こえていたな。
カードって―――
思考にふけるその時、声が聞こえた!
「【決闘】で奪うだけだからよ!」
誰かいる!
それに、【決闘】だって?聞き慣れた単語に、耳が反応した。
この手に持つカード、そして【決闘】という言葉。
そこから導き出される結論―――
これはまさか、よくある設定ではないだろうかーーー!?
カードの勝敗で全てを決める世界!!
ふと笑みがこぼれる。
ごくりとつばも飲み込んだ。
もしそうだったら、これほど僕に都合のいい異世界はない。
なぜなら僕は、現実でのカードバトル世界大会優勝者。
文字通り、最強デュエリストなのだから―――!
「これで俺サマも、騎士サマの仲間入りってわけだあ!」
笑ってられるのもいまのうちだ。
僕のこの世界でのデビュー戦!
少女を助けるヒーロー!
悪党には、その足がかりになってもらう!
世界も知らない。
ルールも知らない。
けれど僕は、そんな不安を振り払うように、そしてこの世界への期待を込めて、腹から声を出して叫んだ。
「それはどうかな!」
■用語説明
①よくある設定
-販売促進アニメによくある設定のこと
-カードゲームが世界の基礎になっている
-カードのプロがいたり、カードの授業があったり、カードが世界を救ったりする