領主の資格③
波瀾万丈は【剣の領主】の館に足を踏み入れた!
僕は廊下を歩く。
【剣の領主】の館は、僕以外にも客をもてなしているようで、活気があった。
「よく来てくれた!新たな【刀の領主】!」
「初めまして、波瀾万丈です。よろしく」
「私はこの【剣の領】を預かる、ローランスだ」
男性はローランスと名乗った。
金髪碧眼。背は自分よりも高い、180以上くらいだろうか。
年は20半ばくらいに思える。顔がいい。性格も育ちもよさそうだ。
物腰と表情も柔らく見えるが、まだこちらを値踏みしているように感じる。
ローランスは僕の考えに気付いたのか「悪く思わないでくれ。【前刀の領主】は、どうも苦手だったのでね」と、冗談めかして笑ってみせた。
ははは、と僕もつられて笑ってしまう。
たしかに、ローランスとレオンハルトは相性が悪そうだ。
「さて、知っているとは思うが、この【カルディア】を治めるには、我々領主同士の連携が不可欠だ」
「剣と刀、そして盾と鎧ですね」
「4つの領の同盟を、我々は【アライアンス】と呼んでいる」
「君が【刀の領主】となることに関して、我々は意見するつもりはない」
「しかし【同盟】の一員となるなら話は別だ」
「我々は君が【同盟】の一員に足る人物か、見極めねばならない」
―――やっかいな方向に話が進んでいる気がする。
初対面のはずだし、敵意をもたれるような要素はなかったはずだが…
「ここに一つの密書が存在する。君の領の民からのものだ」
「密書?」
「ここにはこう書かれている」
「領主がハラン・バンジョーに変わって、民の生活は苦しくなった」
「彼は領主にふさわしくない、領主を放棄させてくれれば、商人組合は金を支払う、とね」
「商人組合!」
【刀の領】は、貧富の差がハッキリとしている領だった。
それは力や金が、すでに持っているものに偏るようになっていたからだ。
平らにするのは僕の好みではないが、それでも領を支える平民や農民が少しは暮らしやすくなるようにと便宜を図った。
それにより、利益が減ったのは商人だろう。
彼らが僕にいい印象を持っていないのは、納得できることだった。
「秩序を重んじる【剣の領】としては、このような状況の【刀の領】を、そのまま【同盟】に迎える訳にはいかない」
「では…?」
僕は【本】を取り出す。
ローランスもあわせて【本】を取り出した。
「そう。この【決闘】で【同盟】入りを見極めようということだ!」




