領主の資格②
【刀の領主】となった波瀾万丈は、他の領主の元へと着任の挨拶に向かう!
「ハランさまだ」
「ハランさまがいらっしゃったぞ!」
【剣の領】に向かうため、領主の館を出たところ、領民が何人か駆け寄ってきた。
「ハランさま!ありがとうございました!」
「え?な、なんだい?」
「わたしらは農民なんですが、新領主のハランさまに、一言お礼を言いたかったんでさあ」
「ハランさまが領主になってから、わたしら農民のような、弱いものでも生活しやすくなってきているんでさあ」
「それはよかった。これからも尽力してゆきますから、よろしくお願いします」
領主になってから、こうして声をかけられたのは初めてのことだった。
着任してからは、ひたすら書類に判を押し続けていたからだ。
そのときに提案した改善事項が、彼らの助けになっているなら、うれしいことだった。
しかし、ものごとは、ひとつの側面から見えているものがすべてではない。
「ちっ、あいつが噂のハラン・バンジョーか」
「あいつが着任してから、我々、悪徳商人の得る利率は、下がる一方だ」
「レオンハルトさまは、より力の強いもの、価値の高いものの味方だったからな」
「このままでは困る」
「【剣の領】に向かうようですが…」
「【剣の領】か。よし、私にいい考えがある」
そして、悪徳商人たちの秘密の会議がはじまった。
【刀の領】を出て、馬車で数日。僕は【剣の領】へと到着した。
「こっちは水が豊富なんだな」
荘厳な剣の領主の館には、噴水や堀に、豊富に水が使われているようだ。
道中の風景も、そういえば湖や川をよく見かけたな。
もともと、こちらの土地は豊かなのだろう。
「剣は秩序、刀は叛逆を象徴している」と言われたのも、風土に合わせた習慣なのだろうと思った。
考えにふけっているあいだに、館の門がひらく。
「【刀の領主】ハラン・バンジョーさまですね。我が主【剣の領主】がお待ちです。どうぞ」
案内にしたがって、僕は館に足を踏み入れた。
■用語説明
①【剣の領】
-【神教国カルディア】の4つの領のひとつ
-緑と水が豊富な裕福な土地
-剣は力と秩序の象徴




