VS 【刀の領主】レオンハルト③
レオンハルトの猛攻からライフを立て直し、僕は場に《異世界の放浪者》を立てることに成功した。
《【刀の領主】レオンハート》を打倒できるか!?
《異世界の放浪者》が空の裂け目からかかった階段より降り立ち、僕に並ぶ。
対するレオンハルトの隣には、《【刀の領主】レオンハート》が立つ。
互いのユニットの視線が交差する。
放浪者は無表情に、レオンハートは怒りの表情で闘志をぶつけ合い、火花が散っているようだ。
僕とレオンハルトの視線も合う。
僕は彼の、弱い者を切り捨てる考え方を改めたい。それがアーリア村を救うことにつながるからだ。
対するレオンハルトの狙いはなんだ?
僕の力量、持っているカードを調べること?
だけど、そのためだけにこんな大立ち回りをするだろうか?
アーリア村を人質のように扱ってまで…
(人質…まさか!)
カードをプレイする僕の手が止まる。
「【刀の領主】レオンハルト!あなたはこの【決闘】、勝ったら何を望む!」
「ほう」
「僕は勝つことにより、あなたにアーリア村の鏖をやめてもらう!
だが、あなたが勝ったときの望みを聞いていない!」
「その通りだ。よく気付いた。
だが、余の望みは、余が勝利したときにこそ伝えよう。」
レオンハルトはそう言って邪悪に笑った。
(なにが目的かは知らないが、負けられない理由が増えたな)
僕は宙に浮かぶ手札に手をかざし、フィールドに向けて放った。
「手札から、魔法《【征剣】カオスⅩⅢ》を発動!《異世界の放浪者》に装備する!」
放浪者が黒く輝く剣を持つ。
その刀身から闇の輝きがあふれだした。
「ほう!さらに【征剣】とは。それにはさすがの余も驚いたぞ」
「覚悟してもらう!」
「【使徒】―――神の使いの力を見せてみよ」
「《異世界の放浪者+【征剣】カオスⅩⅢ 5/5》で《【刀の領主】レオンハート 4/4》を攻撃!
「ぬるいわ!」
僕の攻撃宣言に合わせて、レオンハルトは一喝した。
「伏せた魔法《野望の代償》を発動!ユニットの攻撃を2倍に、防御を半減する!
この効果でレオンハートのパラメータは8/2となる!」
「伏せカードはコンバットトリックか…!でも、一方的にやられるような効果じゃない!
いけ!《異世界の放浪者》!」
放浪者の掲げる【征剣】が闇の柱となる。
ブレードロードは一瞬の隙をつき、間合いを詰めた!
この瞬間、すでに間合いは【征剣】の全力を解放できる間合いではない。
放浪者は実体のない闇の光剣ではなく、【征剣】を振り下ろす!
ブレードロードも突進した低い姿勢から、血に染まった太刀を竜巻のように振るった!
【征剣】と太刀が激突する!
衝撃波が発生し、僕とレオンハルトを襲った!
「ぐうう…!」
僕はそれを腕で防ぐようになんとか耐える。
レオンハルトは、激突の決着を見届けるように、その衝撃を正面から受けていた。
衝撃波がおさまり、互いにライフにダメージを受ける。
僕とレオンハルトは、互いに3のライフを失った。
「余のレオンハートを打ち破るとは、ますます面白い」
「打ち破るなんてとても。互角、とは言いたいですがね」
「だが、余の命にはまだ届いておらぬぞ!」
レオンハルトのターンに移る。
「ドロー!」
僕の場には《果樹園の村人》。
手札は1枚。ライフが3。
レオンハルトの場にカードはないが、手札は2枚。ライフは2。
心許ない盤面だが、次の僕のターンが回ってくれば、勝機はある…!
僕の手札には、この騒動の元となったカード《聖教会への叛逆》が握られていた。
「余は《野望の傭兵》を召喚!」
鎧をまとった傭兵が姿を現す。
そのパラメータは2/0と表示されていた。
「レベル1ユニットで攻撃力2だって!?」
「《野望の傭兵》は2/0という攻撃的なユニットだ。しかし、攻撃する際にライフを1支払わねばならぬ」
「野望のために犠牲は必要!余の野望は終わらぬ。死なぬ!」
「《野望の傭兵 2/0》で《果樹園の村人 0/1》を攻撃!」
「ぐあああっ!」
《果樹園の村人》が撃破される。僕はそのバトルによって1ダメージを受けた。
「ぬううう…!」
レオンハルトもまた、《野望の傭兵》というデメリットアタッカーのコスト、1ライフを失う。
「カードを1枚伏せて、ターンを終了する!」
なんとか僕のターンが回ってきた。
互いのライフも残り少ない。
おそらく、遠くないうちに勝負は決まるだろう。
目の前に立ちはだかる刀の領主、僕はこの男に勝てるだろうか。
いや、アーリア村のためにも、勝たなければいけない。
僕は手札の《聖教会への叛逆》に目をやる。
このカードを使うことになるんだろうか。そして、使ったらどうなるのだろうか。
「僕のターン!」
僕の運命、いや、それだけじゃない。
この世界の運命を大きく変える、ラストターンが始まろうとしていた。
「ドロー!」
■用語説明
①コンバットトリック
-カードゲームの戦術のひとつ
-バトルにおいて、カードのパラメータを増減させて優位にたつ戦術のこと
②デメリットアタッカー
-なにかしらのコストを要求するアタッカーのこと
-通常のアタッカーよりも高い攻撃力を持つことが多い
-今回の【決闘】では、ATKが高い代わり、ライフのコストを要求した




