第三話 懐かしの男
投稿遅れ+下手くそな文の罪は重い…
「到着っと。ここは…」
結構な距離を飛んだようだ、一応東の方角に飛んだという事だけは分かっているのだが…そう考えていると、服の裾を誰かに引っ張られたのに気づく。
「看板…」
裾を引っ張ったのは零だった様だ。んーと何々。『水都 ヘリス』ねぇ。なんかおしゃれな雰囲気が漂ってくる。
「綺麗。」
淡白な感想だが、感情はこもっているように感じる。
・・・
「ずいぶん活気のある街だなぁ。」
おしゃれな感じで、いろんな高級店が並んでいるのかと思っていたが、思いの他露店も多く、歩いている人たちの表情も明るい。
「私がいた場所と全然違う。」
あれだけつらい場所で生活していたんだから、ここはまるで天国のような場所だろう。
「楽しいか?」
「楽しい。」
良かった。そう思って笑顔を見せる。
「煉の笑顔って、なんか綺麗だよね。」
「急にどうした?」
余裕ありげに言ったが、実は滅茶苦茶驚いてる。こういうこと言うんだなぁ。今後はそっちにも注意しないと。
「いや…特に何か考えて言った訳じゃない。ただそう思ったから。」
子供はよく分からない事を言う事が多いが、今回はとても不思議だ。何せそういうキャラではないはずだからだ。
「零も笑ってくれないかな?」
「難しい…と思う。」
「どうして?」
「感情が…ないから。」
感情がない?どういうことだ?確かに感情が薄そうではあったが、無いという風にも見えなかった。
「それって、そういう感覚って事?」
「違う。」
と首を振りながら否定する。
「取引…したの。悪魔と。」
やはり悪魔との取引か。だがやはり不思議だ。悪魔との取引に使ったものが感情だとしても、完全に無くなっていないのは変だ。それに、力も感じない。すでに終わった契約という事か?だがそれにしても魔力の違和感。悪魔と契約したというより、悪魔そのもののような…
「どういう取引?」
「気を遣ったりしないんだね。」
確かに街中だが今いるところは人が少ないし、まぁ、良いだろう。
「まぁ、気を遣って何も聞けないんじゃ意味がないからね。」
「そう…だね。」
少し暗い顔をして口を開く。
「悪魔と取引した内容は…私の感情の”大部分”を失う代わりに、両親を殺してもらったの。小さいころから虐待を私に行っていた両親が恨めしくて。」
なるほど。まぁ納得いかなくはない。だが、それだと魔力の違和感に説明がつかない。それに、二人の人を殺すのに、感情の大部分だけで足りるとは思えない。だが、もしも何か隠しているとしても、まだ言いたくないのだろう。わざわざ聞くことはない。
「辛かったな。」
そういって頭を撫でてやる。
「別に。今は煉がいるから、もう大丈夫。」
「そっか。良かった。」
一人の人。それも自分の娘を少しでも幸せに出来たなら良かった。君も少しは、喜んでくれるかな。
「ねぇれー
「おぉ!久方ぶりだな!「闇喰」!」
と快活な声で話しかけられる。誰だったか思い出そうと、頭の中の引き出しを全力で漁るっていると、
「俺だよ。「千剣」の無為 纏翼 だよ。」
「あぁ!纏翼かぁ!随分と懐かしいなぁ。400年ぶり位か?」
「いやそれ俺生きてない。せいぜい250年くらいだろ。俺が100歳ぐらいの事だったしな。というか、剣を俺に教えたのお前だろ!何で忘れてんの!?」
「そうだったかな?俺が350位ってことは…そのしばらく後に閃ちゃんの面倒を見てた位か。」
「ていうか十二災の面倒見過ぎじゃね?俺と、銀嵐と、あと「黒炎」と「盲目」もそうじゃなかったっけ?」
「涼ちゃんはよく覚えてるなぁ。目が見えてないのに、あれだけの強さだったから、だいぶ衝撃的だったなぁ。筋も良かったし。」
「なんでそっちは覚えてんのに俺は覚えてないんだよぉ。まぁ、それはそれとして、その子供は?お前女でも作ったのか?」
「それはない。こいつは貧民街で拾った。」
「十閻寺零。よろしく。」
「へー。なんで十閻寺?偶然?」
「いや、一応俺が名付けの親だからな。」
「さすがの面倒見の良さだな。昔から全く変わってない。」
「そうか?そんなこと無いと思うけど。まぁ、なんでもいいや。お前ここに住んでるのか?」
「まぁな。ちゃんと住民も知ってるから、俺といりゃぁ別に警戒されたりしねぇよ。」
ほぉ。やるな。俺は全く認めてもらえないが、ちょっとお兄さん系イケメンなのが効いてるのか?これだからイケメンは。まぁそんなこと言ったら俺も悪い方ではない(と思う)のだが。
「じゃあ、軽く案内してくれよ。出来れば宿も。」
「分かった。任せとけ。」
・・・・・
「なんか…豪華じゃね?」
「おう。」
・・・・・
すげぇ内装。めっちゃ綺麗。シャンデリアとか、普通の宿じゃ見ねぇだろ。カーペットもしっかり敷いてあるし。床や壁に使用されてる素材は、明らかに高そうな石。あいつこんな所が行きつけなのか。金持ちかよ。俺も金持ちだけど。
「なんかすげぇ。」
「そうだね。凄い。でも、煉からそんな雑な感想が出てきた方がびっくり。」
「そんなこと無いだろ。」
「だいぶ大人な感じだから、あんまり予想できなかった。」
そんなに大人っぽかったか?嬉しくなくはないが、初めて言われたから驚いた。君には可愛い扱いされてたしなぁ。
「あっ、そうだ。せっかくだし、チェックインした後、闘技場で久々に戦らねぇ?」
「まぁ、いいけど。勝てるの?」
「勝てるの?ってお前…鬼畜やなぁ。本気でやるわけじゃない。軽くだよ軽く。」
「あぁそう?」
正直、纏翼は強い。けど、纏翼の強みである剣すら、使い方を教えたのは俺だし(思い出した。)。勝ち目はほぼ無いんじゃないかなぁ。ハンデとかつけようかな。
「じゃあ、飛ぶぞ。」
・・・・・
「おぉ。でけぇ闘技場。というか零の意見聞かなかったんだけど。」
「別にいいよ。煉がどのくらい強いのか知りたいし。」
強さに興味あったのか…俺の感想が雑なのよりも圧倒的に以外だわ。
「じゃあ!戦ろうぜ!」
はぁ。ため息をついてついていく。
「よし!準備は…いらないよな!」
「ハンデいる?」
「いらん!無くても勝つ!たぶん無理だけど…」
最後ネガティブになるのか…でもまぁ、よく言うようになったなぁ。俺に習ってた時はしょっちゅう泣いてたのになぁ…
「よし!行くぞ! 来い!我が愛刀「天狼」!」
「はぁ…創造。「闇刀」。」
ギィィン!
速くなっている。間違いなく。
カキィィン!ギン!
しかし、剣の性質をしっかり理解している訳では無い様だ。数撃の打ち合いで思い出した感覚を元に、脆い部分を探っていく。そして、
「天狼の脆い部分は…ここ!」
パリィィン!
「なっ!?折れた!?」
「千剣の内の一つである天狼の特徴は、軽さと、鋭さが両立された一番スタンダードなお前の愛剣。そしてお前の持つ剣のすべては、一度消せば、次出す時には元に戻る。かと言って数撃で折れちまうのはなぁ?これは鍛錬し直しかぁ?また、あの時みたいに。」
というと、ウルウルしだして、
「やめてくれぇ!あんな鬼畜修行はもうやりたくねぇ!」
といってダッシュで出口に行ってしまった。情緒不安定かよ…まぁ、そこまで辛かったんだろ。
「行っちゃったね。」
「俺らも行くか。」
・・・・・
「おーい。ってあれ?」
何故か纏翼は女の後ろに隠れて震えている。そこまで俺の稽古きつかったのか…
「えーと。何があったの?」
知らない女だが、恐らく纏翼と仲がいいから、大して俺に驚かないんだろう。
「いやー。もっかい稽古付け直すか?って聞いたら、泣いて走っていっちゃって。」
「あぁ!鬼畜師匠って、「闇喰」さんだったんですね。」
災名はよく知られているのに、名前は知られてないのか…いや、怖くて名前が呼べないだけか?というか俺の事鬼畜師匠って呼んでたのか。これは後で本格的なお仕置きが必要だな…
「名前は覚えてないんですか?毎回災名で呼ばれるから、不快なんですが。」
「あら、災名で呼ぶのがマナーじゃなかったんですか?」
「十二災ほとんどがそう言ってるだけで、俺は名前の方がいいんですよ。」
「そうだったんですか…ごめんなさいね?煉さん。」
「…ずるい。煉。」
何がぁ!?ん?何した俺?ずるい…分からん。なんでや?俺何も悪い事して無くねぇか!?
…ふぅ。落ち着いた。しかし失態だ。取り乱してしまった。落ち着いて対処すると決めたばかりなのに。
「どうした?零。」
「だって。私の時はそういう事言ってくれなかった。」
ん?どういうことだ?言ってなかったっけ?こんな感じのこと。いや、そもそも覚えて無いし。それに嫉妬?嫉妬なのか?…落ち着かねば。これ以上取り乱すのは俺的にNGだ。
「まっ、まぁ、そうだったようなそうじゃなかったような。」
まぁ、それは置いておいて、取りあえずもう部屋に戻ってゆっくりしよう…というか纏翼!ハッ!拗ねてる!でも…めんどくさいからいいや。というかこの人の名前聞いてなかったな…
「そういえばお名前は?」
「燐火です。冬川燐火。」
「なんか噛みあわない名前ですね…」
「よく言われます。」
よく言われるのか…
「じゃあそろそろ部屋戻るので。失礼します。」
そう言って燐火さんの隣を通り過ぎる。その時に囁くように纏翼に言う。
「夕食までに機嫌直しておかないと…わかるな?」
カタカタと震える纏翼を横目に零と一緒に部屋に戻るのであった…
都について言及できず申し訳ない!でも、次回もする気はないです。
にしても俺のかっこ率は異常なんではないかと思ってしまう…