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第九話 兵団と貴族

 兵団と貴族


 私が、ダンジョンマスターになってから、半年近くが経過したようだ。

 リアが、そのあたりを把握してくれているので助かっている。

 ちなみに、このリテラ世界は、三百六十日で一日が二十四時間に少し足りない程度らしい。

 そのあたりを踏まえた上で、グレムリンたちがこの世界に合わせた柱時計と懐中時計を作ってくれた。十二時間表示で、わずかに地球の時計より早いそうだ。

 さらに、研究が進めば、デジタルの腕時計を少しいじるだけで、この世界用に改造もできる可能性があるというのだ。グレムリンたちの探究心には、恐れを抱いてしまう。

 また、この一帯のランクス王国を含んだ地域の新年は冬至らしく、地球の新年と近いので、僅かだが安心ができた。


 ダンジョンのモンスターたちの様子を見ると、外に出ているボーンアーミーの総数は五十体で、彼らは、ダンジョン周辺で狩をしている。

 周辺地域を四方向に分けて、一定時間の間、皆で同じエリアを狩り、時期が来ると、次のエリアに移るという狩り方をしているようだ。

 この狩りの方法の意味を、ボーンアーミーたちに聞くと、ほとんどの森の獣には、縄張りがあり、一定期間、縄張りの主がいないと、別の獣がそこに入る習性があるらしい。

 この習性を利用して、同じエリアに長い間、留まらないように狩りをしているとのことだった。

 再び、戻ってきた時には、森の奥から新たな縄張りの主がやって来ており、獲物に困らない状態になるそうだ。

 すごく考えている……。

 私のモンスターへの評価は、低すぎるのかもしれない……。

 他のモンスターたちは、カッパーゴーレム、カッパーガーゴイル、ウイスプ、シャドーウイロウを、二十体に増やした。

 それ以外の、グレムリンとブラッドアイは三十体のままにしてある。

 リビングアーマーたちは、量は少ないが、ミスリル鉱石が取れたので、ミスリルの全身鎧に作り直し、四体が玉座の広間の装飾品となってもらっている。


 ダンジョン自体は、現状こうなっている。


 地下一階

 第一フロアのみガラス床と石床の広場、第二フロア、第三フロア、地下二階第一フロア、第二フロアを連結した立体迷路

 地下二階

 ジュエルゴーレムが潜む偽宝物部屋と立体迷路後半

 地下三階

 毒の湿地、モンスターはウイスプからブラッドアイに変更

 地下四階

 毒の湿地、モンスターは、ウイスプからブラッドアイに変更

 地下五階

 腐肉の湿地、腐肉を好む昆虫類と植物を置き、ウイスプを配置

 地下六階

 腐肉の湿地、腐肉を好む昆虫類と植物を置き、ウイスプを配置

 地下七階

 毒沼の迷路、シャドーウイロウを配置

 地下八階

 毒沼の迷路、シャドーウイロウを配置

 地下九階

 炎の迷路、迷路内の温度を人が耐えれる限界まで上げて、炎を使ったトラップを多く設置する。モンスターは未配置

 地下十階

 炎の迷路、迷路内の温度を人が耐えれる限界まで上げて、炎を使ったトラップを多く設置する。モンスターは未配置

 地下十一階

 氷の迷路、迷路内の温度を人が耐えれる限界まで下げて、氷を使ったトラップを多く設置する。モンスターは未配置

 地下十二階

 氷の迷路、迷路内の温度を人が耐えれる限界まで下げて、氷を使ったトラップを多く設置する。モンスターは未配置

 地下十三階、地下十四階

 立体迷路、ブラッドアイ、ウイスプ、シャドーウイロウを投入した迷路内の総攻撃を行う。

 地下十五階

 第一フロア第二フロアをつなげて作った三階建てになっている牢獄の一階部分を石の台座風に作り替えており、ここまで来た人数に対応して、ボーンアーミーが隠し扉から出撃する。程よい数まで減らせたら、隠し扉内に撤退するか、ジュエルゴーレムたちがまつバトルルームに押し込む。

 バトルルームでは、ジュエルゴーレムを筆頭に、カッパーゴーレムとカッパーガーゴイルも加わった最終戦が行われる。


 ここまでが、防衛用のダンジョンとなり、この下には、鉱脈が三階層、森が二階層、牧場が二階層、工房が三階層、そして玉座の広間と農園に私の私室がある。


 新しく階層として設置した腐肉の湿地は、以前にリアが見つけていた遺体を好んで苗床にする植物があるという報告を受けて、同じような植物が他にもないかとボーンアーミーへ、狩りのついでに探してもらっていたのだ。その結果、腐肉を好む虫や植物が何種類も見つかり、この階層が出来上がった。

 炎と氷の階層は、リアが、今後を見据えて作っておいた方が良いというので作っておいた。

 人の限界で温度を調整してあるので、入ることは当然できるし、歩き回ることもできるのだが、消耗が激しすぎる。

 火属性と水属性の魔法の練習場所に、丁度良さそうなのが、私にとって嬉しい産物となった。


 リアが言うには、中々よいダンジョンになってきているそうで、順調だという。

 私のレベルも三十二となり、武技訓練と騎乗訓練は、順調だ。

 だが、魔法訓練は、魔力の伸びが悪いようで、試しに覚えた上級魔法を一発は撃てても二発目が撃てない。

 もしかしたら、人族をベースにしている私には魔力の伸びの限界があるのかもしれない。

 まだまだ、訓練できることは多いので、先の事を悩むのは辞めておこう。


 そして、ダンジョンにくる冒険者たちなのだが、遺体が三十体ほどになっている。

 二週間に一度程度で来ていたが、最近頻度が上がってきている。


 そろそろ大きな動きがあるかもしれない。

 それでも日々は流れており、ゴーレムたちは鉱脈を掘り続け、ガーゴイルたちは家畜を持ち帰り続け、ボーンアーミーたちは狩を続けている。


 そして、その日はやってきた。


 偉そうな貴族風の馬に乗ったものが数人と揃いの金属鎧を着て馬に乗った者たちが五十人ほど、揃いの革鎧を着た者たちが二百人ほど、兵団という雰囲気で現れた。

 ダンジョンの地上一階で、悪魔の巣窟を葬る戦いを始めるとか、そんなことを言っているようだ。

 かなり要約すると、家畜泥棒の巣は、ここだろうから、ぶっ潰す、と言っているとわかった。

 おそらく、家畜を捕まえて飛び立つガーゴイルの行き先を観察した結果、ここに行きついたのだろう。

 確かに、家畜泥棒なので、申し開きもない……。


 とはいえ、それはそれ、これはこれ、というわけで、モンスター総員に『命大事に、安全第一』を徹底するように伝達し、配置についてもらった。


 兵団の皆さんは、ダンジョンに入って行き、偽宝物部屋を見て一通り、興奮してから、立体迷路に侵入していく。

 革鎧の者たちが先に立ち、あっさりと、トラップにはまって行く。

 止ろうと号令をかけるが、後ろまで命令は届かず、革鎧の者たちが、無抵抗にトラップへ食われていった。

 中には、走って押し出されるのを回避する者もいたが、先にある落とし穴にはまり、命を落とした。

 あっという間に、五十人ほどの革鎧の者たちが無残な有様になった頃に、隊列は停止し、少数で小分けに出発することになったようだ。

 革鎧の者たちの中には、トラップを見つけたり回避する能力のある者がいるようで、最少の被害で、立体迷路を通過した。

 毒の湿地に入り、毒虫に刺されて、解毒のくすりを飲む者が続出した。

 ブラッドアイたちは、それをあざ笑うように、微妙な距離を取りながら見守っている。

 中には、ブラッドアイに斬りかかる者もいるが、湿地に足を取られて毒水や毒土を口に含んだり、目に入れてしまったりと惨劇は連鎖していった。

 数を減らしながら、二階層分の毒の湿地を抜けた者たちが腐肉の湿地にたどり着く。


 腐肉を苗床にしている植物をみて、嫌悪感を、あからさまに出す者や、異臭に嘔吐する者もいた。

 それでも彼らは進むのだが、ウイスプが、腐肉からでたガスを操り、炎の攻撃を仕掛ける。

 直撃して転げまわる者もいれば、応戦しようとする者もいるが、ウイスプたちは、すぐに逃げてしまう。

 この湿地にも毒水は流れ込んでおり、わずかな傷ややけどでも、地に這いつくばれば、致命傷になりかねない。

 毒の湿地で解毒薬を使い切った者たちも多くいたようで、どうにもならない状態のまま、進んでいく者が見受けられた。

 毒沼の迷路にたどり着けたのは、金属鎧の者も含めて五十人にも満たないようだ。


 満身創痍という様子だが、それでも彼らは進んでいき、全員、シャドーウイロウの餌食となって、この世から旅立っていった。


 そとには、金属鎧の者と貴族風の者が数人残っていたので、ガーゴイルたちに捕獲させた。

 牢獄に入れて、情報を聞き出す。

 聞いた話をまとめると、こうなった。

 まず、貴族風の男たちは、一人が子爵で二人は男爵だという。さらに、全身鎧のうちの二人が騎士爵だそうだ。

 子爵といえば、辺境伯の配下では、重臣になるはずだと、考えさらに詳しく聞くと、今回の兵団は、騎士爵の連合兵団が中心となったそうだ。

 中に二人の騎士爵がいたそうで、それぞれが領地としている村から合計で二百人を集めてきたという。

 金属鎧たちは、男爵と子爵の配下で、隊長格として参加した。

 なるほど、練度の低い連合兵団というのなら納得できた。

 初動の連携の酷さは、こちらとしても目に余るものだったので、答え合わせができた気分だ。

 その後のダンジョン内でのふるまいも、甘いところがあったが、冒険者の経験がある者は、トラップを警戒できるが、兵役に駆り出される程度の者たちなら、ああもなるのだろう。

 例外は狩人や自警団といわれる者たちくらいなのだろうな。


 そして、今回のダンジョン制圧の表の目的はともかく、その真の目的は、騎士爵が、今回の制圧を成功させ、男爵に昇ることで、男爵と子爵は、派閥内での発言力を付けることが目的だったという。

 また、兵士たちの中にも、良い物がいれば、取り立てて直属の部下にするつもりだったという。


 そして、実際の家畜泥棒の被害については、小さくはないが、大きくもなく、家畜の持ち主たちも、オオカミなどの害獣に襲われるのは、計算の内らしく、私の家畜泥棒もその範囲に収まっているそうだ。


 だいたいのことは分かったので、この先はリアに引き継いで貴族世界の在り方やらを聞き出してもらう。

 統治方法や税制度などを高校の皆の持ち物からノートとしても良い物を選び、再合成したノートに書きこんでいってもらうことにした。

 書記役には、文字の書けるグレムリンに担当してもらおう。


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