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第三十三話 密林のダンジョンと不死鳥

 密林のダンジョンと不死鳥


 ダンジョンアタックに出ていたと思われるドライスからの思念波に答える。

「ドライス、ダンジョンの方かな。どんな感じ?」

「現在は、北東のダンジョンを落としたところで、マイカ様を、お呼びするためにダンジョン外に出ております」

 北東のダンジョンか。

 難易度の低そうなホックルのダンジョンは後回しにしたのかな。とにかく現地に行ってみよう。

「わかった。すこし待ってて。準備をしてから転移をするね」

「かしこまりました。お待ちしております」


 エビルドールたちに声をかけ、私の武具防具を、準備してもらい、身に着けていく。

 アインスとメリッサは、アーマードスレイプニールに乗り、後から駆けつけてくれるそうだ。

 アーマードスレイプニールでも、半日以上がかかる距離なのでアインスとメリッサが到着するころには、落ち着かせておきたい。

 今から行く男女んは、拠点化をする予定なので、幹部たちが駆けつけてくれるのは何かと助かる。

 準備が終わり、翼を出して、北東のダンジョン上空に転移をした。


 人目がなければ、この上空に転移する方法が、一番安全で楽だと何度かの転移の実験をして、結論付けている。

 ちじょうにちょくせつてんいすると、足場が悪かったり、予想していた足元の感触と違っていたりと、戸惑うことが多いのだ。

 それに比べると、若干の落下があるが、上空への転移は、精神的な負担が少ない。


 ドライスたちを見つけ、彼らの元へ降り立つ。

「おまたせ、ドライス。ジンも連れてきていたんだね」

「はい。入念に調査をしたアサドたちの報告をもとに、飛行できる者のみで、攻略するべきという判断になりまして、ツバイスと私のふたりともが参加して攻略にかかりました」

 それから、ダンジョン内の無力化できているルートを通りながら、話を聞いていった。


 このダンジョンは、密林のダンジョンというべき場所で、食肉植物が多く、しかも、森の密度が高かったという。

 実際に今の私は、皆と共に飛行している。

 こんなダンジョンなので、デスナイトは、ダンジョンに待機してもらい、代わりにジンとウイッチに参加してもらったそうだ。

 ジンとウイッチに話を持っていくと、全てのジンとウイッチが参加すると言い出し、マリアに相談したところ、私がこの先のミナンのダンジョンは、静かになるかもしれないと言っていたことを伝え、ならば、多少防衛力が低下しても問題ないという結論に至り、結局、全てのジンとウイッチがダンジョンアタックに参加することになった。

 さらにだ、実は、オーガニュートたちは、飛べたらしい!

 速度はあまり出ないようだが、しっかりと飛んでおり、飛行には問題がないという結論になったが、オーガニュートたちは、研究員であり、戦闘訓練はしていないはずだったのを思い出し、そのことをきいてみると、アーマードミノタウロスやエビルアーマーと戦闘訓練もしていたことがわかってしまい、連れていくことが決定した。


 階段のある場所にたどり着き、そこで見たのは、空中に浮かぶロングメイスという名の金棒を持ち、全身鎧を身に着けた赤鬼たちだった……。


 彼らも私とともに最深部に向かう一行に入り、話を聞くと、赤鬼の正体は、オーガニュートなのは気が付いていたが、その赤い鎧は謎だ。

 赤い鎧は、黒鋼を研究しているときに、錬金術でよく似た金属を作れないかといろいろと模索した結果、ミスリルと鋼鉄にいくつかの素材を混ぜ込むことで出来上がった赤鋼という合金らしい。

 黒鋼ほどの性能はないが、ミスリルと鋼鉄は、それだけでは、合金にならないらしく、奇跡的な素材の組み合わせで出来上がったすごい金属だとわかった。

 量産が可能かと聞いてみると、ミスリルさえあれば、なんとかなるそうで、私の武具防具も赤鋼に変えてもらう約束をした。

 その後も、密林のダンジョンを飛行して進んでいき、密林から、洞窟へとダンジョンが変わった。


 地下二十階をこえたところで変わったようなので、ここからが裏ダンジョンなのだろう。

 気温の高い洞窟の迷路だが、攻略済みなので迷わずに進んでいく。

 道中には、戦闘不能になったが、なんとか一命を取り留めたモンスターたちがうごめいているのを見かけるが、彼らには、今はまだ何もしてあげられない……。


 地下に進むほどに、気温は上がっているようで、マグマの池まで現れ始めた。

 さらにたちが悪く、トラップもしっかり配置してあり、これは人が攻略できるダンジョンには思えない。

 裏ダンジョンは、結局地下四十階で終わり、バトルエリアは、このフロア全面のようだ。

 マグマの池がある洞窟の広場には、陽炎の様な揺らめきの中に、閉じ込められた金色の鎧を着た者たちと、全身から炎を噴き出している女性がいた。

 陽炎の牢獄は、ジンたちが、体を張って維持している牢獄らしく、数時間は持つそうだが、あまり長くはもたないという。

 それにしても、あれは……、フェニクスか。

 そうなると、金色の鎧の者たちは、カルーラか……。

 良く勝てたな。フェニクスは、幻獣でもあるが、悪魔系でもある。

 通常の戦闘力は高くはないのだが、自爆攻撃をしてくるのがひどかったのをゲームの知識から呼び起こす。


 自爆か……。

「ドライス、自爆は、あったの?」

「残念なことに、ポイズンアイたちが、その身をもって、何度も防いでくれました。あの攻撃を受け流せる者たちは、私たちにはおりません……」

「そうだよね……。彼らは、マルス辺境伯との戦いで、力不足をかんじていたから、自ら選んだ結果なんだと思う。あまりきにしちゃだめだからね。それにポイズンアイたちが、全員自爆を防いで、いなくなったわけじゃないのでしょう?」

「はい、散った者たちは、ポイズンアイの三分の一ほどです。彼らのおかげで、他の者には、被害と言える被害はありません。誇ってよいと私は思います!」

「うん、仲間の健闘を彼らも誇っているよ」

 その後、地下四十一階にある玉座の広間には、素朴な青年の遺体が寝かされていた。


「ツバイス、大変な戦いだったことは、ドライスから聞いた。まずは、勝利を喜ぼう」

「マイカ様、ポイズンアイたちの事申し訳……」

「それは、彼らが選んだことだから、良いんだ。残ったポイズンアイたちにが誇ってくれる。それに彼らには、次の姿を用意しているから大丈夫」

「はい……」

「ここにいる皆は、勝者だ。今回の事、ありがとう。そして、散っていた者たちに感謝を!」

 そうして、玉座に座り、ダンジョンのマスター権限を奪っていく。

 私がダンジョンのマスターとなるとともに、素朴な青年の遺体は、塵となり消えて行った。彼については、フェニクスに後で聞いておこう。


「……、ダンジョンの権限は奪ったからフェニクスとカルーラかな。彼女たちを解放して大丈夫だよ」

 それから、ダンジョンを復旧する作業に移るのだが、まずは、けがをしているモンスターたちからかな。

 オーガニュートの全て、ガーゴイルナイトの半分、ポイズンアイの残った者たちをミナンのダンジョンに帰還させ、マリアをこちらに呼び寄せる。

「マリア、早速だけど、ここに怪我をしているモンスターたちを呼び出していくから、治療をしていってくれるかな」

「はい、お任せください」

 下層から、少しずつ呼び出して怪我を治療してから、元の場所に戻していく。

 治療ができるのは、私にマリア、バンパイアの二体、ウイッチたちなので、フェニクスが正気に戻るまでには終わるだろう。


 治療がひととおりおわったころに、フェニクスとカルーラたちが、現れた。

「新たなマスター。我が身はフェニクス、この者たちはカルーラでございます。今後もお仕えすることが許されるのなら、全身全霊を持ってお使いいたします」

「君たちには、名を与えるから、今後は私に仕えてほしい。私はすでに、もう一つダンジョンを持っているから、配置については、考えさせてもらうけど、それで良いかな?」

「それで構いません。どうぞ、よろしくお願いいたします」

「フェニクスの君は、スフィルでどうかな?」

「良き名を……。ありがたき幸せ」

「カルーラたちは、また後で名付けるね」


 フェニクスは、いわゆるふしちょうで火の鳥のことだ。この世界のフェニクスは、ゲームの知識通りなら、自爆をしてすぐに復活する厄介な存在だが、治癒能力も持っており、怪我だけではなく、病気にもその治癒能力は発揮する。

 カルーラは、炎を操る金色の怪鳥として、描かれることもある幻鳥で、日本では、カラス天狗のモデルになったという話も聞いたことがある。

 両方とも完全な人の姿に慣れるようで、全て女性型のようだ。ヘルムを取ったカルーラは、金色の髪の美女たちで、勇猛に私たちの軍勢と戦ったかと思うと、恐ろしく感じてしまう。

 フェニクスもカルーラも、幻獣だが、悪魔でもあり、カルーラは、私たちと同じグレイターデーモンに当たるようで、フェニクスは、アークデーモンで、私たちより上位の存在になる。

 だが、ダンジョンが持つ、強制力の方が強いようで、私の配下となるようだ。

 ねじれているなら、何とかして直した方が良いのかな……。


 さて、このダンジョンの話を聞かなければ、いけない。

 フェニクスのスフィルから前マスターのことをきいていく。


 前マスターは、随分と以前にマスターになった人物で、この周辺に街があった時代だという。

 さすがにそれがいつなのか、私にはわからないが、上空から見る限りでは、街があった様子は見られないので、痕跡がつちにうもれるほど昔の話のようだ。

 その街に住んでいた素朴な青年は、獣を狩るために森に入った時、生まれたてのこのダンジョンを見つけ、ダンジョンマスターになったという。

 初めの頃は、街で生活をして、ダンジョンに必要な物を呼び出したモンスターたちと集めてダンジョンを成長させていたが、十年近くも、そんな生活を続け、さらに、年齢を増しても姿が変わらないことに周囲が気が付きはじめ、ダンジョンに籠るようになった。


 だが、街の者たちは、青年が、何か悪い存在になったのかもしれないと、その姿を彼が良く言っていた森に探しに出た。

 そこで、ダンジョンが見つかり、ダンジョンと街の者たちとの戦いが始まった。

 よびだしたモンスターたちは、強さよりも、彼にとっての友人としての役目が強く、街の者たちにすぐに殺されてしまう。

 それを憤怒した彼は、徹底抗戦のために本格的にダンジョンを作り始める。

 そうして長い時間がたち、街との戦いが終わったころには、この土地には誰もいなくなっていたそうだ。

 この戦いの終盤にフェニクスやカルーラたちは、呼ばれたそうで、とどめを刺したなのは彼女たちなのだろう。


 それからも、ダンジョンを充実させるためにフェニクスたちを使い、各地の植物を集め、自分の森で育てていったそうだ。

 そうして、さらに時間が過ぎたある日に、私たちがやってきて、長すぎた彼の生涯は、幕を下ろした。

 ダンジョンマスターらしく生き、ダンジョンマスターらしく死んだ彼は、素晴らしいダンジョンマスターだったのだろう。

 それを支えたスフィルとカルーラたちもまた素晴らしいモンスターたちだ。

 彼女たちが支え続けたこのダンジョンを私色に染めるのは多少気が引けるが、重要な拠点となるのだから許してほしい。


 聞きたい話は、だいたい聞いたので、本格的にこのダンジョンの拠点化を始めようじゃないか!



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