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第二話 雪山の修学旅行と森の奇妙な岩小屋

ここから、お話が始まります。どうぞよろしくお願いいたします。

 雪山の修学旅行と奇妙な岩小屋


 雪山を三台のバスが進んでいく。

 修学旅行の行き先は二か所で南国組と北国組に分かれている。


 私たちは、クジ引きで北国組になってしまった。

 高校二年生の二月という寒い時期になぜ、寒いところへ行かなければならないのか……。

 この先にあるスキー場に隣接するホテルで三泊四日のうちの二日を過ごし、最後の日だけは、海辺の街に泊まるそうだ。

 窓から外を眺めても、強く吹雪いており、良い眺めとは言えない風景だ。

 とはいえ、多分この下は崖になっているようなので、見えても怖いだけかもしれない。


 バスの中は、それなりに、盛り上がっている。

 私と言えば、正直なところクラスメイトとはあまり親しいとは言えない。だからと言って嫌われているわけでもなければ嫌っているわけでもない。

 ただ無関心というだけだ。

 話を振られたら、答えるし、必要なら話しかけもする。

 だが、それだけの関係だ。


 元々、人への興味が薄い性格らしく、趣味と言えるものは、読書とMORPGのゲームだ。

 読書は、知らない知識を教えてくれるし、何を考えているのかわからない人の考え方を伝えてくれる。ネットを利用したMORPGは、関係性の薄い人たちとなら、気がねなく交流できるので気が楽だし、ダンジョンやフィールドに入れば、一人だったり少数だったりで、行動ができるので、これもありがたい。

 普通に話もできるし、気も使うことも一応できるつもりなので俗にいうところの『コミュ症』というやつとは違い、ただの面倒がりなのだと思う


 最近、気に入っているゲームは、ダンジョンに潜って、冒険をするゲームだ。

 一人用から複数用までレベルに合わせて無数にダンジョンが用意されており、地上にある街に戻れば、交流もできる。

 とはいえ、携帯ゲーム版を購入してまで、やる気にはならなかったので、今は、曇天の空と白いだけの風景を眺めながら、ぼんやりとしている。


 突然、バスが揺れて、強い衝撃が襲った。

 目が回るような感覚になり、衝撃を何度も受ける。

 そして大きな破壊音が何度もしたところで、私の意識は途切れた。


 意識が戻り、ぼんやりと瞼を開けると、バスは横転しており、私が座っていた中頃から、どういうわけか、私はバスの後方部分にまで吹き飛ばされていた。

 全身の感覚を確認していき、五体満足であることが認識できたので、改めて周囲を眺めると、クラスメイトたちは、無事とは思えない姿でバスのあちこちに散らばっていた。

 とにかく一度、外に出るべきだと考え、窓を何とか破って横転したバスから脱出すると、雪山だったはずなのに、青々とした森の中に三台のバスが横転しており、それ以外には、岩で作られた奇妙な小屋があった。


 雪山がないということは、さっきまでバスが走っていた道もどこにも見当たらず、ただ鬱蒼とした森のみが広がっているような様子だ。

 切り傷こそないものの、打撲はあるようで、痛む体のまま、奇妙な岩小屋の様子を見に行く

 もし、住人がいたり、住んでいる痕跡があれば、救助を呼べる可能性が出てくる。


 ゆっくりと、奇妙な岩小屋に入って行くと、階段があり、中に入って行く。

 おそらく地下になっているようで、かなりの広さがあるようなのだが、部屋の中はどういうわけか、薄ぼんやりと明るくなっており、何も置かれていないとわかる。

 奥に扉が見えるので、さらに進んでいく。

 扉を開けると、わずかな通路があり、また扉があり、二つ目の部屋が現れた。

 二つ目の部屋にも何もなく、また、扉があった。

 それを開けると、やはり、短い通路があり、再び扉があった。


 ただ広いだけのなにもない部屋と短い通路が続き、多少だが気落ちをしていたが、おそらく三つ目の部屋に続くだろう扉を開けると、玉座の広間という雰囲気の部屋が現れ、唖然としてしまった。

 ここまでの部屋を思い出し、この玉座の広間を考えると、これは、私がやっていたMORPGのチュートリアルモードにあるダンジョン、そのままじゃないか……!


 石床なのに、なぜか見える部屋、これは、ヒカリゴケのせいだと言われていた。

 そして一つ目の部屋から、扉を開けると細い通路がわずかにあり、また扉がある。そして続く二つ目の部屋、その先には、同じように通路があり、その先の扉を開けると玉座の広間がある。

 間にある通路は、ゲーム上では、セーフゾーンであり、回復や休憩ができるポイントとされていた。

 ゲームの仕様では、チュートリアルが終わると、わずかな小遣いと街までの転移スクロールに回復薬などの初心者セットが宝箱に入れられ、玉座の上に置かれていたのだが、何も置かれてはいなかった。

 また、このゲームの仕様に面白いものがあり、中級以上のダンジョンをクリアすると、ダンジョンの権利を得ることが可能で、プレイヤー自らがダンジョンマスターとなり、モンスターを呼び出して、ガーディアンに設定することが可能だった。

 プレイヤーには、ダンジョンを攻略するだけの力があるので、自ら守り続けることも可能ではあったが、現実的にダンジョンマスターとして、ダンジョンを守り続けることは不可能と言ってよいので、ガーディアンを設定してダンジョンを守護させることが、当然とされていた。それでもマスター権限はクリアしたプレイヤーに権利はあるので、自由に改造することができ、ダンジョンを自らの好みに変えていった。


 とにかく、一度、玉座に座ってみよう……。

 玉座に座ると、ダンジョンマスターの権限を得られる設定だったので、試してみるだけの価値はある。私がどうにかなってしまい、夢を見ているなら、目覚める手掛かりになるかもしれないし、ゲームの何かが関係する謎現象が起きているなら、玉座に座ることで、何かが起きるかもしれない。

 玉座に座ると同時に、膨大な情報が、全身を駆け巡り、自分の体が組み替えられていく感覚に襲われ、そして、現状を理解した。

 ここは、私がやっていた『ダンジョンモンスターズ』の世界に、よく似た世界で世界中に、幾つものダンジョンがある世界らしい。

 このダンジョンは、バスがどうにかなった時、おそらく交通事故で崖に落ちた瞬間に、生まれたダンジョンで、たまたまゲームのことを考えていた私と波長が合ってしまい、この場所にバスごと転移してしまったという。

 この世界は、地球ではなく、リテラという世界で、今の私がいる場所は、三つある大陸のうち一番大きな大陸であるユルシア大陸の南西らしい。

 そして、玉座に座った私は、ダンジョンマスターになってしまった……。


 ダンジョンマスターになったことで、体が組み替えられ、全身の打撲が治っているようだが、これが現実だと、何となくわかってしまい、呆然としばらくしていたが、外のバスや皆のことを思い出し、何かをしなければと考えを巡らす。

 ゲーム的なステータス画面のようなものは、出ないが、脳に直接映像が浮かび上がる感覚でいろいろと見られるようで、現在のダンジョンポイントを見ると〇となっている。生まれたてのダンジョンとはいえ、〇からのスタートは厳しすぎるだろう……!


 うーん、バスを脱出する時に、多少だが、皆の様子を眺めたが、残念なことに、バスの中には、遺体がいくつもあるだろう。

 その遺体をポイントに変えてしまえば、あっという間にポイントが貯まるのは理屈では、理解できる。

 だが、仮にも同じ高校の生徒や教師だ。私は、人への興味は薄い性格だが、恩や義理は大切にする性格でもあるのだ。どうするべきか悩んでしまう……。


 生きている者がいるなら、後で考えるとして、遺体は、あのままバスに置いておいても、仕方がないので、弔いの気持ちを持って、糧になってもらうのは、そう悪いことではないかもしれない。

 よし、遺体を集めよう。今は速やかにこの状況を改善すべきだ。それに、遺体も痛んでしまう!


 ダンジョンから外に出て、バスの様子を眺めると、あちこちが破損しており、ひどい状態だとわかる。

 私がバスから脱出した後に、外へ出た者は、誰もいないようだ。

 フロントガラスを石で叩き割り、まずは、運転手の生存を確認するが、残念なことに死亡していた。

 運転手の遺体をバスの中から何とか降ろし、ダンジョンに運び入れ、ポイントに変える。

 運転手の遺体だけで千ポイントになった。遺体運びに使えそうで、呼び出せるモンスターを探すと五百ポイントで、スケルトンが呼び出せるとわかり、二体を呼び出して、全員を運び出す。

 途中で六体にまで増やして、ペースを上げさせた。スケルトンは、何かと使えそうなモンスターなので、現状を変えるには、丁度よさそうだ。

 全員を運び出したところ、どういうわけか、私しか生存者がいなかった……。悲しい現実だが、ダンジョンマスターとなってしまった私にとっては、この展開は、好都合だと思っておこう。この先、モンスターだらけのダンジョンに数人で住むとなると、いろいろと不便が出るかもしれない。そう思うしかないのだ……。


 遺体を全て運び出したが、バスをこのまま外に置いておくわけにもいかず、スケルトンたちで運べないかを試したが無理だったので、クレイゴーレムを一体につき、千ポイントで四体、呼び出してバスをダンジョンへ運び入れた。

 ダンジョンの機能は、吸収、分解、保存、合成などがあり、入り口にさえ入れば中で時間が止まったように保存ができたり、ポイントにするために吸収が可能となる。

 また素材ごとに分解ができたり、素材を合成したり、モンスターを合成することも可能だ。

 今使ったポイントは、損傷が酷かった者の遺体を使ったので、損傷の少ない見た目だけは奇麗な遺体が約百人分ある。

 人の遺体は、多少の誤差はあるようだが、だいたい千ポイント程のようなので、大事に使った方が良さそうだ。それに、ここまでで呼び出したスケルトン六体とクレイゴーレム四体で、どうにかして、皆の遺体は、いざという時の切り札に取って置く。何が起こるか、わからないのだから、切り札は、あった方が良い。

 バスを含めた皆の持ち物で機械類は、できる限り修理をして残し、ここが異世界なら、この遺品たちも切り札となるはずだ。

 その他の小物も、この世界の様子がわからないので、ひとまずは温存だ。

 当面、使うのは女子制服や服飾類で、私のサイズに近いものだけを使い回していこう。


 さて、呼び出したモンスターたちを使って、周辺の把握と整備をしてもらおう。

 さっき、試しにやってみたのだが、草を一株ポイントに変えると、十ポイントになったので、スケルトンたちには、草取りを頼み、クレイゴーレムたちには、木々を倒してもらって、どれくらいのポイントになるのかも試してもらおう。


 私もダンジョン外に出てスケルトンたちに混ざり、草取りを始める!

 二千ポイントのところに、ダンジョンコア疑似生命化というものがあり、ゲームの時のナビゲーションフェアリーのような存在が現れるかもしれないと期待している。

 そうして作業にかかると、木の幹は、三百ポイントとなり、木の株も二百ポイントとなってしまって、あっさり疑似生命化ができてしまった。

 現れたのは、私の予想通り、ナビゲーションフェアリーだった。

「マスター、お初にお目にかかります」

「初めまして、名前はあるのかな?」

「ダンジョンコアとしか、名はありません」

「じゃあ、フェアリーっぽいから、フェアリーのリとダンジョンコアのアを取って、リアって名乗ろう」

「わかりました、以後は、リアと名乗ります」

「私は、長谷部舞香。マイカでよいからね」

「マイカ様ですね。かしこまりました」

「様は、辞めさせない方が良いんだろうな。一応、主従関係なんだものね。


「それじゃあ、改めて、リアよろしくね」

「はい、マイカ様、よろしくお願いいたします」





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