第十二話 ダンジョン村と人の世界
ダンジョン村と人の世界
エスナル北のダンジョンまでは、馬で、六日程の距離なのだが、空を行くことで、二日程で着いてしまった。
野営のために準備しておいた、テントが使えたのは、満足している。
高校の皆の荷物から、雨具を集めて、始めは、ドーム状のテントを作ろうとしたのだが、あの張り具合を再現することは、難しく諦めてしまった。
だが、私が二人分寝れる程度の袋型の三角テントを、作ることはできた。
雨具の防水シートを三角柱になるように加工して、強化した携帯傘の中心部をつなぎ合わせると、それっぽくなったのだ!
もっとうまくできるはずとは思うんだ。
でも、使えるんだから問題はないのだ!
そんな、野営だったが、食事もなければ、リア以外に放す相手もいないし、獣除けに何かをする必要もない。
そこらの獣よりも恐ろしいモンスターたちがいるので、何も起こることはなく、無事に野営は、終わった。
ガーゴイルたちの様子を見る限りでは、もっと早く飛べそうだが、デスナイトや私が荷物となっているので、随分手加減して飛んでくれたようだ。
風よけの魔法を常時使っていてくれたので、これには助かった。私もつかえるのだが、空を飛ぶことを想定して、イメージできていないので、ガーゴイルの魔法よりも劣るのは、容易に想像ができた。
そうして、ダンジョン村を遠目でわかる程度の森の中に降り立ち、私と、四体のリビングミスリルアーマーで、ダンジョン村に向かった。
シャドーファントムの調査により、どこの地図売りが良いか、どの時間が、突入に良いか、どういう手段で突入するかなど、打ち合わせも十分できている。
ダンジョン村に入り、目的の地図売りのところに行く。
森が近くにあり、鉱脈となっているダンジョンがあるおかげで、建物は、それなりの者が立っている。基本は木造で、二階建ての建物がダンジョンを中心にひろがっている。
ダンジョンは、大岩に穴が開いているようなかたちをしており、突然大地から何かが口を開けているようなイメージに見えてしまった。
おそらく、私のダンジョンと違い、初期の状態のままなのだろう。
入り口周辺には、露店が並び、回復薬や食料を売っているようだ。
よく考えたら、私にとって、この世界で初めて人々がいる村に入ったんだ……。
初めての人の世界と思うと、感慨深いところもあるが、思ったよりも人への固執の様な物はないのかもしれない。
多少上等な鎧を着ているので、ちらほらみられるが、異端を見るような目ではないので、私の見た目でも、十分にこの世界は、生活できるようで安心した。
そうして、予定通りに、シャドーファントムが下調べをしてくれていた地図売りのところまでたどり着いた。
「評判の良い地図売りさんと聞いたのだけど、軽く見せてもらっても良いかな?」
「ああ、地下一階だけなら、見るだけタダだ。それにしても、俺を評判の良いなんて言うやつもいるんだな。ありがたい限りだ」
地図売りは、ダンジョン周辺に何人もおり、この男は、重装備を見せつけるように置いて地図売りをしていると報告を受けていた。
実際に見てみると、地図を作るには、当然、モンスターと戦う必要があり、良い装備がなければ、それは難しい。
自らの商品の正確さを示すつもりで、重装備を置いているようだった。
他の地図売りも同じようなことは、しているのだが、気配の様なものがこの男は違う。
強者の威風というのか、そういう者を感じるようだ。
だてに私も、モンスターと日々、戯れているわけではないのだ!
本当は、大きな体と厳つい顔立ちに、歴戦の猛者を感じたからなのだが……。
さて、地図自体は、問題はないと信じるしかないので、腰に付けてある革鞄から代金を払い、地下十五階分まで購入した。
この腰の革鞄は、貴族が持っていたマジックバッグで、ひつようとなるものは、ほとんどここにいれてある。
同じものをデスナイトにも渡してあるので、あちらはあちらで何かを持ってきてくれているだろう。
「ところで、最近、変わった事があったりしない?」
「そうだなぁ。しばらく前だが、南にダンジョンが見つかったって騒ぎになったが、帰還者が、誰もいないらしい。そんなダンジョンだから、初の帰還者となれば、一獲千金も夢じゃない。そんな感じで、たまに誰かが行くようだが、誰も戻ってこないな」
そういうつもりで、いままでの冒険者たちは、来ていたのか……。
「例えばだけど、武具や防具の値段が上がってるとか、食料の値段が上がってるとか、そういう話はない?」
「ああ、まさに、それが起きてるな。戦争の気配はないのに、貴族様方が、色々集め始めてるそうだ」
私のダンジョンを攻撃する準備をしているのは、間違いないだろう。だが、まだ徴兵は、始まっていないのか、この周辺は徴兵されないのか、そのあたりは、どうなっているのだろうか。シャドーファントムの諜報能力は、かなりの者だったようなので、今後もおねがいしよう。
「そっかぁ。ありがとね」
「おう、まだ成人なりたてってとこだろう。無茶はするなよ」
このランクス王国の成人は、十五歳となっているそうだ。
私は、そこそこに背のある方だったので、子供には思われないようで、助かった。
ついでなので、露店で売っている串焼きを幾つか試してみる。
名前を聞いても、よくわからない獣の肉だったが、鶏肉のようで悪くはない。味付けは塩とハーブのようで、香辛料は、まだ普及していないのかもしれない。
他の串焼きも、触感は違うが、だいたい塩とハーブの味付けで、この地方の味だと信じたい。
飲み物も売っていたので、試してみたが、ワイン色のはちみつ酒という感じで、甘さはほどほどで飲みやすくはあるが、今から酔うわけにはいかないので、すぐにキュアブラッドで酔いを醒ました。
この世界基準では、私は、成人なので、余裕があるときに酒精も今後は、試してみるのも良いだろう。
そうして、シャドーファントムたちと共に、皆がいる森の中に戻った。
ダンジョン村で、仕入れてきた地下十五階までの地図を皆に回して、把握してもらう。
最後は、シャドーファントムの一体に預けて、案内役をしてもらう段取りになっている。
基本的に、五組に分かれて、背中が見える距離を保ちながら進んでいく予定となっている。
私は三組目に入り、無事に最下層までたどり着かなければならない。
今回は、殲滅戦ではないので、できるだけ早く、地下十五階を超えるのが、第一目標だ。
モンスターとエンカウントしても、移動速度を低下させたなら、後は気にせずに先を目指す。
夕暮の時間は、随分前に過ぎ去り、グレムリンが作ってくれた懐中時計が示すじかんは、午後十時となった。
この世界には、まだ時計はないそうだが、時を刻む方法はいくつもあるそうで、ある程度の時間はわかるという。
この時間に夜警が後退され、ここから朝まで同じ衛兵が夜警を勤めるそうだ。
皆で、なるべく音を立てずに、ダンジョン村に近づく。
金属鎧の音は、静かにしても、それなりに出てしまうのは、しょうがないので、気にせずに進んでいく。
シャドーファントムに周囲を囲んでもらい、夜警の衛兵に近づき、闇魔法の誤認を使った。
誤認の内容は、朝まで何も出入りする物はない、という内容だ。気が付かないや、入る物だけにすると、どうなるかわからないので、ない物はない、ということにした。
ちなみに、シャドーファントムに囲んでもらったのは、彼らに囲まれると、暗闇に影として溶けてしまったように見えるようなのだ。自らの闇魔法でも、同じようなことは、できるのだが予期せぬ事態が起きた時のために今回は、この方法を取らせてもらった。
そして、皆で静かに、ダンジョンへ降りて行った。




