第十一話 偵察と出陣
偵察と出陣
家畜泥棒にでていたガーゴイルナイトたちは、成長した牛やヤギも持ち帰ってくるようになった。
ガーゴイルでは、子供の家畜で精いっぱいだったようだが、進化の成果は、こういう形でも出ているようだ。
戻ってきていたカッパーガーゴイルにシャドーファントム十体を運んでもらい、エスナルの北にあるというダンジョンの偵察を本格的にしてもらう。
シャドーファントムを降ろした後のガーゴイルたちは、また家畜泥棒に励んでもらうつもりだ。
この先の展開を見据えて、カッパーガーゴイルを十体増やし、総計三十体にして、送り出した。
炎の迷路と氷の迷路には、フレイムインプとアイスインプを三十体ずつ呼び出した。
素材には、遺体を使ったのでポイントの消費は、抑えられたが、遺体ののこりすうにも気を使わないといけない。
この際なので、スケルトンも五十体追加で呼び出し、二百体となるスケルトンの舞台を準備する用意ができた。
他のモンスターたちも、追加していき、決戦の時には、こうするつもりだ。
ポイズンアイ三十体
ガスト三十体
シャドーファントム三十体
フレイムインプ三十体
アイスインプ三十体
ゴーレムナイト三十体
ガーゴイルナイト五十体
スケルトン部隊二百体
ジュエルゴーレム部隊十体
リビングミスリルアーマー十体
ハイグレムリン三十体
さらに、秘策の準備を進めている。
リビングアーマーとグレムリンが、進化してくれると、最後の防衛線が強化できるし、グレムリンに、現代兵器を作ってもらえるかもしれない。
高校の皆の持ち物の中には、漫画や雑誌、携帯ゲーム機にスマフォもある。
雑誌はファッション雑誌がほとんどなので、今は使えないが、後々に役に立つだろう。
携帯ゲームと漫画には、いろいろなジャンルがあり、中には戦争物もあった。
さらに、スマフォのネットブラウザのログには、明らかに現代兵器の情報が残っており、当然に重要な部分は隠されているが、推測はできる。
これらの情報から、魔法技術や錬金術と現代科学をあわせて、現代兵器もどきを作れないか模索したい。
「趣味に、読書とゲームを挙げていた私なのだ。やれるだけやってみようじゃないか。あっはっはっはは!」
妄想が広がり、おかしなテンションになってしまったが、手段と目的に、自らの立場は、しっかりとわきまえなければならない。
兵器開発は、目的のための手段だ。
殺人を、結果的にしているが、ダンジョンの立場になれば、これは、侵入者からの防衛と排除なのだ。私の場合は、そこに他のダンジョンの救援が加わっているわけだ。
そうして、少しずつ変化するモンスターたちを見守っていると、シャドーファントムからの報告が思念波で届いた。
エスナルの北にあるダンジョンの名称は、特になく、エスナル北のダンジョンと言われているそうだ。
周辺は、ダンジョン村と呼ばれる冒険者が集う拠点となっており、宿屋や食堂、娯楽施設などがあるという。
地図売りなどもおり、影越しに見たが、地下二十階までのダンジョンで、解放されているのは地下十五階までだという。
地下十五階より下は、ダンジョンマスターの私有地という扱いで、辺境伯の一族が管理をしているという話だった。。
冒険者の話をあつめたところ、中は、鉱脈のダンジョンで、生物系のモンスターが出てくるそうだ。
モンスターは、何かしらの素材になる種類ばかりで、採掘のついでに、モンスターを狩る冒険者もいるという。
確認されている脅威となるモンスターは、エビルワームらしい。
夜は、閉鎖され、出ることはできるが、入るのは日中だけだとのことだ。
ねぎらいの言葉をかけ、もうしばらくの情報収集を頼み、思念波を閉じた。
エビルワームは、全身が素材になる巨大ミミズだ。
全身が、何かしらの加工されたゴムのような素材になる。外皮はゴムシートのようになり、筋肉はゴム紐、その他の肉もゴムブロックのような素材に加工できる。さらに重要なのが、胃袋だ。
この胃袋は、ゲームなどで言うところのマジックバッグの素材になる空間拡張の魔法的な何かがかかっている。
その他の臓器も薬などになり、捨てる部分は、殆どない。あえて言うなら血液に毒があるのでそれを処理するのが大変なくらいだ。
だが、私の陣営で、毒を苦手とするのは、私くらいだろう。
十分に勝算はある。
問題は、私有地とされる残りの地下五階だが、一つか二つは、本当に私有地として自由に使っていると思うので、脅威があるなら三階分だろう。
地下十五階までの地図は、手に入るようなので、そこまでは一気に駆け抜けるのが理想だな。
「……、ということで、エスナル北のダンジョンを潰しに行くことにします!」
「はい、よろしいと思います。ダンジョンコアは、単純に破壊する方法以外にも、ダンジョンを壊す方法はいくつかありますが、大丈夫でしょうか?」
「えっと、今回は、マスターがいるなら、マスターの殺害後、玉座に私が座って、ダンジョンの掌握、その後にいろいろといじって、最後にダンジョンコアをリアに吸わせる。この段取りにしたいのだけど、どうかな?」
「はい、問題ありません。
「他の方法だと、リアをダンジョンコアの意思にかきかえて、このダンジョンを消すってこともできるみたいだよね」
「その通りです。ダンジョンの移動はできませんが、拠点の移動は、マスターとその契約ダンジョンのコアである私が、他のダンジョンに意思を移せば、拠点を変えることができます」
「その後に、こちらのダンジョンを操作して、消す段取りになるわけだよね」
「はい、支配ダンジョンを増やす方法は、玉座に新たなマスターが座り、情報を書き換えた時点で、掌握されたと見なされます」
「でも、この世界がわかってくると、このダンジョンって、いろいろと都合の良い位置にあるように思う。簡単には廃棄しないほうがよさそう」
「私もそう思います。現時点では、人族以外に脅威がないのは、ありがたいです」
「さて、それじゃあ、じゅんびを始めよう!」
遠征には、何が起きるのかわからないので混合部隊で出陣する。
ガーゴイルナイト二十体
アイアンガーゴイル二十体
デスナイト二十体
リビングミスリルアーマー十体
ポイズンアイ二十体
ガスト二十体
この集団ででかけるつもりだ。
まだ、進化していないものがいるので、急いで準備を行う。
ガーゴイルたちの進化は一番簡単なので、三十体をまとめてしんかさせ、アイアンガーゴイルとなった。
ボーンナイトには、武具防具の用意が必要で、以前から準備はしていたので、二十体分は、何とかなった。これ以上だともっと時間がかかったそうだ。
問題は、ミスリルアーマーだ。
ダンジョンのモンスターが総出で鉱脈を掘り続け、なんとか必要量を用意できた。
本来は、もっと気長に進める予定だったが、人の世界で、かろうじて動けるのが、彼らだけだったので、必要なことだったのだ。
その後、グレムリンとリビングミスリルアーマーの提案で、フーテットマントを用意することとなり、出来上がったマントに、ふぁんとむまんとというもんすたーにはいってもらった。
私には、それとは別に、ソウルソードとリビングアーマーが配置された。
私専用の鎧と剣にモンスターを入れても、あまり使わないので、無駄だと言い張ったが、皆の説得に負けてしまった。
彼らがいうには、主たるものが守られるのは当然で、いざという時の守りの要のために、日常を装飾品として過ごすのは本望だという。
わかるけど、わかるんだけどさ、過保護だと思うよ!
私の中では、過剰戦力で乗り込むつもりなんだから……。
ちなみに、私の防具は、リビングアーマー入りの魔力の込められたミスリルの全身鎧に、ファントムマントが入っている緑のフーテットマントだ。
武具は、ソウルソードが入った魔法の付与ができるというブロードソードに鍔広のダガーとなっている。
インナーは、バスの素材に使われていたカーボン素材をグレムリンが見つけ出し、私にだけは、これを使う資格があると言い張り、ジャージをベースに作り上げられたカーボン素材仕様のクロスアーマーとなっている。
モンスターの準備と私の準備の間、リアが計画を煮詰めておいてくれたので、安心して留守も任せられる。
ちなみに、留守中の指揮官は、古参のグレムリンに任せてきた。彼らは、外には出ないが、その分、ダンジョン内を熟知しているので、合議して、何とかしてくれるだろう。
さて、皆の者、出陣なのじゃ!