第一話 斜陽の王都と人外の軍勢
初めましてノエマと申します。初の連載チャレンジです。
視覚障害一級ですので、どうしても誤字脱字が多くなってしまいますが、見守って頂けれたなら幸いです。
プロローグは、将来の展開を書かせて頂きました。
本編は次話からとなります。
どうぞ、お付き合いよろしくお願いいたします。
斜陽の王都と人外の軍勢
異世界なんてところに来て、どれくらいの時が流れたのだろうか……。
夕暮れ時に王都内の大通りで、私が率いる人外の軍隊と王城を守る騎士団が、睨み合っている。
ダンジョン内で戦えば、遺体などから素材やポイントを得られるので、やる気を多少は持てるのだが、ダンジョン外での戦いは、何も得られず、ただ戦うだけになるので、本当に気持ちが乗らない。
それでも、やらなければならない戦いが、目の前にあるのだから、やるしかないか……。
「ねえ、マリア、なんでダンジョンマスターの私が城攻めのようなことをしているのだろうね」
「あえていうなら、そこにダンジョンがあるからでしょうか」
「山があるから山に登る、海があるから海で泳ぐ、ダンジョンがあるからダンジョンを攻めるのね。でもあれは、王城だよ!」
「あの王城の敷地内にダンジョンがあるのは、ご存知でしょう。あちらから、歓迎の花火が盛大に上がっておりますよ」
「あれは花火じゃなくて、攻撃魔法だよね。それに花火は、こちらの世界になかったはず。私の知識から読み取ったのかな?」
「ええ、マイカ様のダンジョンコアの疑似生命と同化させて頂いているおかげで、異世界の知識に触れられる機会を、お与えてくださって感謝しております」
「まあ、あちらは、騎士団といっても、人としては、強い程度の存在だし、さっさと終わらせてダンジョン内に突入するよ!」
ゴーレムナイトたちが、魔法を気にせずに突撃していく。
彼らの体は、黒鋼という特殊な金属でできている。
彼ら自ら進化をして手に入れた身体だ。並みの物理攻撃や魔法攻撃では、傷を負わせることはできない。
しばらくすると、騎士団が作っていた前線は、崩壊していく。
後方にいた魔導師たちが、威力の強い魔法を打ち始める。
エビルプリエステスのマリアを筆頭に、魔法のエキスパートであるハイウイッチたちが魔力干渉を行い、打ち消していく。
この世界には、わかりやすいマジックバリアのような魔法は、存在していない。
その代わりというべきか、魔法に強い金属や素材がいくつもあったり、魔力に干渉して打ち消すなんていうこともできる。
そもそも地球で生まれ育った私には、魔力という謎エネルギーを使い操る魔法そのものが、おかしく感じてしまう……。
大通りの戦いは、我々の圧勝で決着し、騎士と魔導師の屍を超え、城門にたどり着く。
制空権は、すでにゴーレムナイトと同じ黒鋼の身体を持つガーゴイルナイトたちが奪っているので、安心して城門を破壊できる。
アーマードミノタウロスたちが、戦斧を使い、城門を破壊していく。やはりというべきか、外見は木製の大門だったが、錬金術によって強化された金属が仕込まれているようで、簡単には破れなさそうだ。
防御特化のコンポジットアーマーを身に着けているアーマードミノタウロスたちだが、瞬間的な破壊力は、半端な破城槌とは比べるまでもない重い一撃となっているはずだ。
そうしているうちに、恐怖と暴力という手段を使って王都民の避難誘導をしていたデモンナイトたちが集合し、開門を今か今かと待ち望んでいる。
デモンナイトたちには、今後のこの国に必要のない一部の貴族たちを襲撃させ、その貴族たちの遺体を引きずりながら王都内を練り歩いてもらった。
これにより、多くの者は、王都から逃げ去り、王都に残った者たちも自宅の奥深くに閉じ籠った者たちだけとなった。
そうしている間に大門の破壊は、問題なく終わり、進軍が再開された。
実のところ、ここまでは、この国が新たな時代に突入することを民に知らせるためのパフォーマンスだった。
ここからは、本当の戦いとなる。
この王城には、三つの離宮がある。
東の離宮は、迎賓館として使われ、西の離宮は先王と先王妃たちが暮らしている。
私たちの向かう先は、北の離宮と呼ばれているものだ。
これの正体は、ダンジョンで、王家が代々管理をしてきたという。
騎士団の中から、精鋭として認められた者たちが、このダンジョンの存在を知らされ、モンスターを倒し、さらなる強者への高みを目指すらしい。
そして、そこで獲得した貴重な資源を代々王家に献上して来たそうだ。
そうこうしているうちに、抵抗する者たちはちらほらといたが、北の離宮に到着し、ダンジョンへの突入隊とダンジョン外を守ってもらう守備隊に分かれる。
デモンナイトとガーゴイルナイトを中心にした集団が突入隊となり、ゴーレムナイトとアーマードミノタウロスが中心となった集団が守備隊となってくれる。
いつでも突入可能となったが、国を相手にケンカをしている状態になっているので、別行動している者たちからの連絡を待っている。
他者が支配するダンジョンに入ると、私たちの連絡手段である思念波が届かなくなってしまうからなのだ。
しばしの時が流れて、待ちに待った思念波が届いた。
「マイカ様、王族の処分完了いたしました。この後は、第三王女を後見に私が王に立つというシナリオでよろしいのですよね?」
「ありがとうね、アインス。第三王女の魅了が解けないように気を付けてね。このダンジョンの情報は、ほぼないから、どれだけの時間がかかるかわからないし、速いところ、王様になっちゃって兵士たちを何とかしてくれると助かる」
「かしこまりました。バンパイアが王をしている国なんてなかなか面白いアイディアだと思いましたよ。『君臨すれども統治せず』ですよね。これを実現するには、バンパイア程の力がなければ無理なのでしょう?」
「自然に変われたら良いのに、それができずに、ずっとこの世界は、ダンジョンに甘えてきたんだよ。それを終わりにするには、まずは強烈な力を持った王が必要だと思ったんだ」
「ええ、時間をかけて『立憲君主』という存在になってみせましょう。それはともかくとして、兵士の件、迅速に対応いたします。それでは、お気をつけて」
アインスは、高位のバンパイアで、血液を吸わなくても生きて行けるし、日に当たっても平気な存在だ。彼にとっての血液は、嗜好品程度の存在らしいし、木漏れ日の下で昼寝をするのが好きらしい。だが、その力は強大で、少し強い程度の人でも、一瞬で原型の残らない肉塊にしてしまう強さがある。
この王城にダンジョンがあることを知った時、いくつかの作戦が浮かび、そして、一番面倒な国を乗っ取るという作戦を選んだ。
そして乗っ取った国の王にアインスを添える計画となったわけだ。
『君臨すれども統治せず』や『立憲君主』などは、私がこの世界に足りないものを考えていた時に、アインスへ話した内容だった。
この世界には、この世界のやり方があるはずなのだから、それに任せるべきだとは思うのだが、私には私の事情がある。
それは、『ダンジョンマスター』という立場だけではなく、どういうわけか『ダンジョンの解放者』という立場まで、請け負ってしまったからなのだ。
それじゃあ、王城の方からの連絡も来たことだし、そろそろ行こうかな。
「皆『命大事に安全第一』でダンジョンアタックの開始だよ!」