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龍殺しの剣  作者: 喜楽童子
3/3

一章 二話 餓鬼と婆

全然更新しないで申し訳ございませんm(_ _)m

言い訳すると女々しくなってしまうので何も言わずとします.....

最後まで読んでいただけると幸いです。

~Ⅰ~

腰から背筋を走るこの感覚を覚えている。

母の時もそうだった。父の時もそうだった。何も考えられず、唯一つの事にのみ執着、固執してしまう欲求不満にも似た感情。すなわち興奮。

この感情こそが人間の生きる根源なのではないかと錯覚してしまう。

この感覚を理解できぬ者はただの阿呆だと、確信を持って言える。

そして、リーシャにとっての欲は新たなる探求。そこに探るものあれば探さずに入られない探究心があるのだ。普段の生活では早々出くわすことのない瞬間.....

これを至福の時と言わずにしてなんというのか!

あぁ、なんだと言うのだあの男は?

その姿でさえ迫力があるというのに、なんなのだその禍々しいモノは?

黒く、生々しく、粘りつくような、見せる者全てを飲み込まんとするそれは一体なんだというのだ?

知りたい、知りたい、知りたい!!

募っていく物は内では収まらず、外に漏れる。漏れたものは周りへと移り行き、やがて他人に気づかせる。そう、このように──


「おい、あの娘大丈夫か?」


自分が気付かぬうちに広まっていくのだ。

リーシャが気づいたのは既に周りの関心があの男から自分へと移り変わってしまった後だった。

耳には口々に「どうしたんだ?」とリーシャを心配するような声や「なんで餓鬼がこんなとこに.....」と言ったような文句を漏らす者もいる。

我に返ったリーシャの頬がみるみるうちに赤くなり顔を俯かせる。


──くっ!つい癖が.....!!


今更後悔しても仕方が無い。とりあえずこの場から逃げなければ。

スクリと立ち上がり、刺さる視線に背を向ける。そのままスススゥーとそり足でギルドの壁まで歩いていき、壁に頭をつける。

やがて注がれた視線は散っていき、先程のようにバカ騒ぎが再開された。

そこでリーシャはやっとまともな呼吸をすることが出来た。


「ダメだァ.....早速メンタル持っていかれそうだよぅ.....」


ギルド内に入ってまだ五分も経っていない筈なのにもうくたくただ。それもこれも──


「あなたのせいですからね」


受付口で話す男の姿を見つめ、そんなことを呟く。

胸に手を当て、心臓の鼓動を確認する。

──よし、いつも通り。

鼓動は戻った。呼吸も荒くない。やっとこさいつものリーシャに戻った。


「ていうか、こんなことしてる場合じゃないじゃん!」


気づくのに数分。やっと自分のすべきことを思い出す。

──私まだ冒険者になってもいないじゃない。

来てからたくさんの衝撃が頭に入り込みすぎて肝心なことを忘れるところだった!

そうして右手に握る既にクシャクシャになった紙を開く。

──これで私も晴れて冒険者かぁ。

今更になってまたドキドキしてしまう。

薄い胸に手を当てて口元を緩める。そんな時だった。


「あ、あのぉ.....」


「えっ.....あっ、はい!なんでしょう?」


突然話しかけられ、口元を引き締め直す。

話しかけてきたのは腰の曲がった一人のご老人。リーシャが言うのもなんだがはっきり言って裕福では無い貧相な趣がある。

両手を祈るように握り、視線を幾度も外しながらこちらを見ている。


「ぼ、冒険者の方でしょうか?」


絞り出されるように出てきた言葉だった。


「すみません。私ここに来たのは初めてで.....」


「そ、そうですか.....」


話が終わる早々にとぼとぼとその場を離れていく老人。目で追うとどうやら色々な人に同じ質問を投げているようだった。

──あの人大丈夫かしら.....

オーラを読み取れば、あの人の感情も読めるだろう。だが、そう安易に使っていい代物でも無いため断念。

それに、今は自分の事で手一杯なのだ。

リーシャは老人に対し申し訳ないと思いながらも受付口に向かって歩き出した。



~Ⅱ~

「で、できましたぁーーー!」

声を上げ、両手で握った一枚のカードを宙に上げる。

──おっと、声を落とさないと。

いけないけないはしたない。自分の中で今の感情を収めるようにカードを懐に戻す。

──受付嬢の人にすごい可哀想な人を見る目で見られたけど私は今日から冒険者だ!

と、そんなことを考えながら周りを見渡す。


「あ、いた」


そう短く零し、目線を傾ける。そこには先程リーシャに話しかけてきた老人の姿がある。

──良かったまだいる。

今ならお話が聴ける。新米ではあるが自分はもう冒険者になったのだ。恐らくは依頼の申し出だろう。流石に一人で化物の討伐は無理だが、それがリーシャ一人で出来るものなら喜んで引き受けよう。

──まぁ、討伐モノでも他の冒険者さんたちに頼ればなんとかなるんじゃないかな.....無理か。


「って、うん?」


様子がおかしい。先程の老人の顔にはまるで覇気もなくただやつれた骸骨のようなだった。だが今はどうか?


「.....笑ってらっしゃる」


それだけではない。溢れんばかりに歓喜のオーラが流れている。


「一体何ご──」


そして、リーシャの思考が一瞬停止する。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「安心しろ、受けた仕事はしっかりこなす」


老人の隣に誰かいる。そして遠目から見てもすぐわかる立ち姿。──そこには、あの黒い冒険者が立っていた。

──い、一体なぜあの人が!!

普通に考えれば男があの老人の依頼を受けたのだろうと納得するが何故か今に限ってまともに思考が回らない。

そうしているうちに男は背中を老人に向け歩いていく。


「ちょ、ちょっと待っ──」


リーシャが声を上げる瞬間だった。


「なぁ、そこのおじょーちゃん」


よく透き通る男の声と共に肩に左肩に重みがかかる。


「ちょ触んないでください!」


そう言いながら男の腕を薙ぎ払い、対面する。


「おっと、すまんすまん」


そこには、一人の益荒男が仁王立していた。

悪びれる素振りもなく右手を立て笑う。戦士と言って、益荒男といっても遜色ないその立ち姿に不覚にも釘付けになってしまう。

180ちょうどはあるであろう背に短く切った黒髪、体には青を基調とした淵の派手さが目立つ鎧を纏う。なにより、印象的なのは背中に背負う一本槍。持ち手は青、刃は金色。長くもなく短くもなく丁度いいとも言えない長さなのにも関わらずその不安を打ち消すような何かを醸し出している。

全体的に派手さが目立つその男は自身の凶暴な三白眼でリーシャを睨む。


「突然呼びかけちゃってごめんね?」


「い、いいので早く用件だけ教えてください!」


見るからに上位職の方にこのぶっきらぼうな言い方は悪いかもしれないが今は仕方がない。そう頭に言い聞かせ、言葉を紡ぐ。

数秒間時が止まる。男はまゆひとつ動かさず静止する。顎に手を当て、唸り声に近い声を漏らし.....突然二パァーと笑顔を見せた。


「いやね?じょーちゃん見た感じ冒険者なりたてホヤホヤでしょ?だからさ、まぁあれだよ.....勧誘?うちのチームに入りませんかー?みたいな感じ」


「.....」


なんかノリが軽い気がするのは気のせいなのかな?

恐ろしい三白眼からは予想もつかないような声音が聞こえ、顔を引き攣る。


「あっ!別に変な感じのとこじゃないから!確かに男ばっかだ見た目もうほぼ盗賊みたいなのばっかだけど根はいい奴なんだ!それに、新人さんはウェルカムさ!いろんなことを教えるよ!」


とにかくよく喋る。リーシャが黙っていてもお構い無しに同じことを反復、またわそれに近い言葉を選んで喋っている。

──言葉をまとめて喋るのが苦手な人ね。

それか女性との会話が苦手かなのかも?

正直に勿体無い。立ち姿は完璧なのに中身は少し残念なのは可哀想でもある。それにめんどくさい。

──この人の話に付き合ってたら終わらないわ.....

ジリジリ。そんな擬音を鳴らすように足を後ずさっていく。幸い話しに夢中で今なら逃げれそうだ。

様子を見計らって。三、二.....


「.....一!」


さぁ走れどこまでも──


「ちょっとまだ話してる途中でしょ?」


リーシャの走りは儚くも再度男の左手によって遮られてしまった。

──クゥ!まだ諦めるか!

これだけは使いたくなかった必殺技。使えるかどうかわからないけど.....

ゆっくり息を吸いこみそして──


「──この人ロリコンですーーーーー!!!」


「.....」


「.....」


場が凍りつく。リーシャの叫び声にも似た発言はギルドないすべてに響き渡り、そのまま視線のすべてを買った。男は男でへっ?やら、はっ?と呟き呆然とする。

そんな黙然とした世界の中で、リーシャは視界に一つ筋の光を見た。具体的にいえばリーシャの横をすり抜け、後ろの男の顔面めがけて飛ぶ光だ。

咄嗟の反応で男はその光るものを掴み直撃を避けるが掴んだ途端、手からタラリと赤い線が引かれた。

──ナイフ?

リーシャが男の手から見て取れたものは一つのおよそ30センチ程のナイフ。男は握ったそれを床に投げつけナイフの起動源を見つめる。同様にリーシャも見つめる。


「いけないねぇ、強引ってのはいけない。ましてやいたいけな少女にそれは言語道断、神様が許してもあたしゃ許さないよ」


「てめぇ.....ミザ」


そこには女が一人.....ミザと呼ばれた男と引けを取らぬ身長を持つ女が椅子に足をあげこちらを見つめていた。

流れる金髪。豊満な胸に過激な露出。口元と左鎖骨側にホクロが一つずつ。腰には剣を携えているようだ。

男の目付きが先程と打って変わって豹変する。


「ロキ.....あんたにそんな趣味があるなんて驚きだね。なんだい?ロキのロはロリコンのロかい?笑わせないでくれよ!」


女であるまじき声で笑い、腹を抱える仕草をするミザ。それに反し男──ロキはフンっと鼻を鳴らす。


「まぁてめーみてーなババアよりは断然マシだぜ。つーか早く誰かとくっついた方がいいんじゃねーの?早くしないと孤独死しちゃうよ?あっ、もう手遅れか!こんな凶暴ババア誰も拾っちゃくれねーや」


言葉を言い終わるが先か、ミザの近くにいた数十人が立ち上がりロキを睨む。

そして、ロキの方にもいつからか数十人かの衆が出来ていた。


「.....」


あいだに挟まれるリーシャはジト目でこの状況を黙認し両手を祈るように握った。


──神様どうか無事でありますように。


「餓鬼が調子に乗ってんじゃないよ」


「ババアはとっとと介護でも受けとけや」


その言葉を皮切りに両者の足は動き出した。



最後まで読んで頂き有難うございます!

これからは更新頑張っていきたいと思うので再度よろしくお願いしますm(_ _)m

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