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(18) 千思万考





 ――あー、なんか昔流行ってたとか言う映画でこんなシーン見た気がするなー。




 空から降ってくるその影を見つけたところで、別に動じたりはしない。ただ、唐突に表れた新しいモノに対して、ほんの少し注意が逸れる。

 寧ろそれに反応したのは、ひいひい言いながら逃げ回っていた相手の方で。




「――ろっ、ロードさん!!」




 その人物を見て、今までの逃げるしかしていなかった相手の動きが嘘のように変わる。

 こちらに生じた一瞬の隙を突いて、落ちてきた人物の落下地点まで素早く移動すると、落下から救おうと両手を伸ばして上を見て。


 その表情を、凍りつかせた。


 そう、落ちてきているのはその人間だけではない。

 本物のアカネの発動している無属性魔法『永久の遑(ダイ・デス・ダイ)』の槍が、まるでそれを追いかけるかのように地面を目指していた。

 しかもその本数はさきほどまでの数を大きく上回っている――まるで数発分、連続で発動しているかのように。


 リーダーは自身の『マップ作製』を確認し、アカネの傍にいた赤い点がいつの間にか離れていること――そして位置的に、その点であった者が今降ってきた人物であることを確信する。

 こちらが両手で数えられる以上の数を『気絶』させる間粘っていたようだから、それなりの実力者であることは間違いない。




 ――つーか今、ロードとか言ったよな?




 その名前は、同盟一番の職人から聞かされた、愉快な3人組の1人ではなかったか。

 そう思いながら相手を見ると、その男は先ほどまでとは違う怒気でこちらを睨んでくる。




「――っこの、『大犯罪者』が!! 俺達は絶対に、絶対にお前なんかにはやられない!!」




 言葉と同時にリーダーの脳内に流れ込む、ウィンドウに表示されているであろうメッセージ。




【『スケ!BABY』がスキル『身内の肩代わり』を発動しました】




 ――なんつー名前だ。




 最悪の手段のために手に取ろうとしていた大剣を、自分の身を守るために引き抜こうとして――リーダーはその手を止める。

 先ほどまでと同じように『永久の遑(ダイ・デス・ダイ)』を回避してしまうと、自分の放った魔法を何故か避けている間抜けな『大犯罪者』の姿を晒すことになる。

 まだ空中にいる人物は背を向けて落ちてきているからこちらの様子を見られないにしても、憎しみのこもった目でこちらを見ているスケ!BABYとかいう男は視線を放しそうにない。


 他の手段としては、魔法耐久スキルや『気絶』無効スキルを積んで、実質的に『永久の遑(ダイ・デス・ダイ)』を無効化してしまうという形があるが――そちらもリーダーの中で却下される。

 アカネとのスキルの打ち合い、まぁ大概相殺なり何なりできる自信はある。だが、戦闘状態になっている相手にこちらの使ったスキルが割れてしまうし、そうなるとやはり避けようとしているのがばれる。


 戦闘解除して使用スキルがばれないようにして実行することは可能だろうが、――その選択肢を選ぶ前にもっといい提案が思い浮かび、それを迷わず採用した。




 あくまで自分という『大犯罪者』が魔法を使ったように見せつつ、見られても問題ないスキルか何かを使って、この状況を乗り切れば良いという事なのだから。

 そのスキルの効果が相手からは全く分からないもので、その推察の到底届かないであろうものであれば問題ない、ということだ。


 空から降ってくる槍の雨を見る。多少のずれがありながらも一定の速度を保って降ってくるそれら。距離と先刻までの『永久の遑(ダイ・デス・ダイ)』の様子を見るに、あそこから槍が地面に突き刺さってかつその姿を完全に消すまでにかかる時間は、おおよそ30秒といったところ。


 その推察を元に、リーダー扮する『大犯罪者』は次のスキルの発動時間を設定し――その口元に、本物ならば到底し得ないであろう笑みを浮かべた。




 ――よーく見とけよ。そんで伝えろ。

 ――このバグじみた何かのことをな!!




 その思想とともに、彼が発動したスキルは『□?■0〇”1⑨101Ц10001――







 瞬間、視界が、世界が。

 まるでピースの揃ったパズルゲームのように、唐突に、崩れだす。

 砂山を壊すように、脆く。

 剥がれ落ちていく『ラスト・カノン』の裏側にある、黒と緑の世界がむき出しにされていく。


 規則正しく並んだ数字は、蛍光色の緑でもって、そこに存在していて。

 同じ大きさ、同じ距離、整った配置であたりまえのようにあった。

 それが、急激に歪む。かと思うと、大きさを変え、距離を変え、配置をぐちゃぐちゃに移動しだして。

 蛍光色の緑が無限に増えて重なって、蛍光色の緑が、緑が、緑緑緑■緑■■■■――






 ――緑って目に良いらしーけどさ、これ絶対逆効果だよなー? あれ、遠くを見ればいいってだけの話だったっけか? まあいいや、正直これ発動してるとこの間が暇でしょうがねーんだよな。


 ――どうせだし、あのスケ!BABYとかいう奴が『身内の肩代わり』使ったことについてでも考えるか? 『身内の肩代わり』って連鎖的に使っても、結局末端の奴にダメージスライドするんだったよな。スケ!BABYに『身内の肩代わり』使ってる奴が『気絶』してなけりゃ、そっちに『永久の遑(ダイ・デス・ダイ)』のダメージ入って終わりか。


 ――空から降ってきた奴がロードってのだとして。アカネと戦ってて押し切られて吹っ飛ばされたっぽいけど。範囲魔法連打してたからなー、あれを全部回避しきったってのを予想するよりは、『身内の肩代わり』でダメージ消してたって考えるほうが正しそうだよなー。あの魔法の嵐無傷で切り抜けられんのはユウヒか完璧すぎるときの俺ぐらいじゃねーの。


 ――んー、んー? そうなるとここでスケ!BABYが『身内の肩代わり』使ったのは、バックの肩代わり部隊全滅って可能性があるか?






 ■■■緑■■緑緑緑、蛍光色の緑で覆われていた世界に、世界に。

 空から降ってきた、白いパズルのピースのようなもの。

 それらは誰に言われるでもなく、あるべき場所を知っているかのように、導かれるように。

 あるべき場所に、はまり出す。

 元の『ラスト・カノン』の世界を、映し出す。





 ――おっと、そろそろ解除か。


 ――んじゃ目の前の光景確認して、真実の模索といこうか。




 

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