舞踏会スタート
衣装を購入し、ドンキのトイレで着替える。
「んだよこれ…… ダサすぎんだろ……」
しかし、この時間にやっているスーツを扱う店は無い。
着替えが終わると、竜は勢いよくトイレから飛び出した。
「うわっ、あれ絶対滑るやつだ」
走ってる途中、高校生くらいの男子に言われ、好きで着てんじゃねぇ! とやり返す。
開演の3分前に会場に辿り着くと、さっきの男の前に踊り出た。
「……なるほど、お通り下さい」
竜はどうにか会場に入ることができた。
「いたいた、何してたんですか? その格好は?」
会場の入り口付近で幸が待っていたため、簡単に合流することができた。
「ドレスコードだよ。 仕方ねーからドンキで買ってきたんだ」
「ドレスコード? だから入れなかったんですか。 でも、まさか伯爵になってやって来るとは……」
幸が笑いをこらえながら竜を見る。
「何度も言うけどな、好きで着てんじゃねぇ。 ……まぁ、この会場の中じゃ、俺はそこまで浮いてねぇけどな」
会場内は、まるで貴族の晩餐会のごとく、モーツァルトのような格好をした人間で溢れかえっていた。
「みんな参加者か、それとも役者か?」
「さぁ……」
その時、会場の真ん中にスポットライトが当たった。
「皆様、今日は我が屋敷の舞踏会に参加頂き、誠にありがとうございます! 存分に楽しんで下さい!」
どうやら主催者の男性のようで、その言葉を合図に、クラシックが流れ始めた。
「さて、始まったぜ。 ダイヤルの番号を持ってるやつを探さねーとな」
竜が視線を走らせると、早速妙な動きをしている男を見つけた。
「なんだありゃ」
かなりガタイのいい男が、こんなセリフを言いながら参加者のスマホを調べている。
「私は憲兵の者だ。 この中にテロリストが紛れ込んでいるとの情報を得て、一度荷物を改めさせてもらう」
明らかにメールをチェックしてダイヤルの番号を調べている。
「強引な手を使いますね。 先輩、あれ、多分アメフトですよ」
竜は憲兵と名乗る男の前に向かって行った。