決着
「くそっ、一旦明かりを……」
しかし、照明スイッチはバジリスクの背面にある。
「……裏目に出やがったか」
照明を落としたことで剣を手に入れることはできたが、今度は与作が意味をなさない。
竜の体温を感知して、バジリスクは再度身を屈めた。
「また突っ込む気かよ……」
すると、与作が首から離れ、退蛇の剣の鞘に手をかけた。
鞘が動き、隙間から刃がのぞく。
「お、お前、童貞だったのか……!」
すかさず竜は鞘を投げ捨て、剣を構えた。
バジリスクもバネを解放して、竜に向かって突っ込んだ。
しかし、若干狙いがそれて壁に激突した。
「へっ、馬鹿やろーが!」
「キュ…… キュ」
その鳴き声を聞いて、バジリスクの狙いが与作であることが分かった。
「与作っ!」
更に、突然照明が点灯し、竜の体が硬直した。
バジリスクが尻尾の先端でスイッチを入れたのである。
「う、ぐ……」
足掻こうとしても、全く抵抗できない。
バジリスクはゆっくり口を開き、竜を丸飲みにした。
満足そうに立ち去ろうとした時、バジリスクの体から剣が突き出た。
「グエ!?」
「おらああああーっ」
竜は剣を握る手に力を込め、這いつくばりながら前進した。
バジリスクの体は裂け、中から竜が出てきた。
「はあっ、はあっ……」
亡骸となったバジリスクは、そのまま消滅した。
後日、新聞に展示物が壊されたという記事が載っていた。
「太公望の杖、7億円はくだらないそうですよ」
会社のデスクに座っている竜に、幸が記事を見せる。
「……俺じゃねぇ」
「ほんとですか~?」
「んなことより、そっちはどうだったんだよ?」
幸とルビーのデートの件である。
「それが、ルビーさんも展示物割っちゃったんですよ」
「はぁっ?」
「ルビーさん危なっかしくて…… 沙悟浄の皿、弁償しましたよ。 3万6千円」
……やけに安いな。
その時、竜のスマホにメールが入った。
与作は軽症でした




