VSバジリスク
マネキンの両脇には警備が2人いる。
これをかわさなければ、剣を手に取ることは出来ない。
「照明を落とすか……」
周りが暗くなれば、一瞬の隙は出来るだろう。
しかし、スイッチを戻されたら一発でバレる。
列に並びながら何かいい手は? と考えていると、迷子になった子供が誰かを探していた。
「キテレツ、どこ行ったなりか~」
「……!」
竜の頭上に電球が点った。
「キテレツ、てめーに感謝する日が来るとはな!」
竜は列から外れて、脇にある発信機を押した。
すると、館内放送が流れる。
「火事です! 速やかに避難して下さい」
客がざわつく。
みな周りを伺っており、誰かが動かなければ避難する気配はない。
更に竜が照明のスイッチを落とし、叫んだ。
「火事だっ! 非常階段に走れっ!」
それを合図に、雪崩のように人が移動し始めた。
警備が、慌てないで下さい! と叫ぶも、悲鳴でかき消される。
その間に、竜はマネキンの元に向かい、剣を手に取った。
それと同時に、ズズズ…… という何かが這いずり回る音を耳にした。
バジリスクである。
「出やがったな」
竜が鞘を抜こうと力を込める。
しかし、抜けない。
「はぁっ? 何で抜けねーんだ!」
バジリスクは、長い胴体でとぐろを巻き、バネのようにして竜に突進した。
剣を縦に構え、ガチリ、と牙を受け止めるも、反動で展示物の方に飛ばされた。
「ってえ……」
起き上がると、何やら高そうな杖がへし折れている。
看板には、太公望の杖、と書かれていた。
「……やっべ」
しかし、それを気にしている暇はなかった。
「なんで鞘から剣が抜けねーんだよ……」
竜はあることを思い出した。
純潔の勇者が剣を手に取った、という幸のセリフである。
「まさか…… 童貞じゃねーと剣を使えねーのか!?」
暗闇の中戦えてる竜すげえ!




