退蛇の剣
ここは大学の研究室。
ルビーがソファで眠りこけていると、スマホが鳴った。
「あと5分だけ寝かせてよ~、ムニャムニャ」
「ルビー様、福田幸様からの着信ですが」
「えっ…… 幸さんから!?」
ルビーは飛び起きると、スマホスマホ、と慌てて机の上を探す。
「いでっ」
机の角に足の小指をぶつけて悶絶していると、盲導犬のセバスチャンがスマホをくわえてルビーに渡した。
「あたた、はい、ルビーです」
「あ、ルビーさん。 今大丈夫ですか?」
「な、なんとか。 で、何の要件かしら?」
その内容は、自分の先輩がバジリスクに命を狙われていて、何か退治する方法を知らないか? というものだった。
「バジリスクですか…… 中国に伝わる退蛇の剣、というのが確かあったと思います。 伝説では、純潔の勇者がその剣をとって、バジリスクを倒したらしいです」
退蛇の剣は、中国の国立博物館に展示されているらしいが、現在、たまたま日本の博物館に持ち出されているらしかった。
「4大文明の博覧会をやってるのよ。 展示物のリストの中にあったと思うわ」
「そうなんですね! 早速先輩に伝えます」
ルビーは、これはチャンスかも? と思い、とっさに嘘をついた。
「あ、私、そのチケット持ってるから、3人で一緒に行かない?」
「本当ですか? それだと話が早いですね」
こうして、まんまとルビーは幸とのデートを取り付けた。
「ふっふっふ。 うまく行ったわ」
「ルビー様、もしかして、日付の違うチケットを渡すつもりでしょうか?」
「べ、別にいいじゃない! 向こうはタダで見れるんだから」
後日、ルビーは竜と幸にチケットを渡した。
竜の日付だけが、全く違う日になっていたが……
週末、竜は与作を首に巻いて博覧会に訪れていた。
「随分混でやがるな」
入り口には行列が出来ている。
「……でも、どうやって剣を取ったらいいんだ? ガラスのケースにでも入ってたらお手上げだぜ」
竜が空気に向かってしゃべっていると、ちょっとだけ列が進む。
「ちっ、高速の渋滞より進まねぇ」
そうやって進む内に、ようやくお目当ての物が現れた。
甲冑を着たマネキンが、剣を手に持っている。
説明書きに、退蛇の剣、とあった。
「こいつか……」




