誕生
竜は帰り道、コンビニに立ち寄ってツナ缶を購入した。
「ツナ缶好きなんですね、108円です」
「俺じゃねぇっつってんだろ」
毎日ツナ缶を買う理由は、ペットのフェレットの為である。
ちなみに名前は与作だ。
家の玄関に到着すると、内股でヤバい、ヤバいって、と言いながら鍵を探す。
「頑張れ、俺頑張れ」
漏れる寸前だったが、どうにか鍵を開けると、ダッシュでトイレに駆け込み、バックを廊下に投げ捨てた。
その時、パキリ、と何かが割れる音がした。
「ふーっ、助かっ……」
そう言いかけて、思わず息を飲んだ。
そして、竜は自分の目を疑った。
開け放たれた扉の先に、丸太のように太い胴体の、アナコンダのような化け物がいた。
その化け物に睨まれると、竜の体は硬直し、息が出来なくなった。
「か、はっ……」
ゆっくりと大蛇が近づいていき、口を大きく開ける。
もうダメか、と思い、竜は目をつぶった。
「くっ……」
しかし、痛みは感じない。
丸呑みにされるにしても、何かしらの感触はあるハズだ。
竜が目を開けると、そこには出迎えに来たフェレットの与作がいた。
「キュキュッ」
「……何だったんだ、ありゃ」
バックを拾い、中身をまさぐると、卵が割れていた。
翌朝、何事もなかったかのように起きてきたが、確かに大蛇を見た、という自信があった竜は念のため与作を連れて出勤した。
「おはようございます、先輩。 マフラーなんか巻いて、遠藤さんからのプレゼントですか?」
喫煙室で幸が尋ねてきた。
「ちげーよ」
「げっ、それ、生きてるじゃないですかっ!」
「うるせーな、うちのペットだよ」
何でペットを首に巻いてるんですか! と追及されたので、昨日の出来事を説明した。
「……ちょっと待って下さいね」
もしかして、と幸がスマホで検索をかける。
「やっぱりだ。 今、ウィキペ〇ィアで調べたんですが、悪魔の正体は多分バジリスクですよ。 バジリスクに睨まれると、人は死んでしまうらしいです。 そして、天敵はイタチ」
「……マジかよ。 でも、睨まれたのに何で俺は生きてんだ?」
「卵が羽化する前に、中途半端な状態で出てきたからじゃないですかね?」
だからその力も完全じゃなかったということか。
しかし、大蛇を退治した訳ではない。
竜はこれからどうすりゃいいんだよ…… と頭を抱えた。
「先輩、ルビーさんに聞いてみますよ。 ルビーさんって考古学者だから、何か知ってるかも」
急遽フェレットを投入です